汎用性抜群の黒スニーカーは、何足持っていても損はない。東京スニーカー氏ことエディターの小澤匡行氏が激推しする4型なら、洗練されたデザインで着こなし全体を大きく格上げできる。
01:VALENTINO GARAVANI | Royco sneakers
ベーシックなコートシューズをモダンに昇華
「ヴァレンティノ ガラヴァーニのこのスニーカーを初めて見たとき、アノニマスなコートシューズがまた“よく見える”ムードになっているなと感じました。一見クラシックなレザースニーカーですが、手に取ると革が驚くほどやわらかく、履き口も薄く仕上げていて、普通のコートシューズではない。質感は最高だし、絶妙なヒールの高さが美しく、ゴールドのデュブレもさりげない品があり、僕的にはオールドスクールな雰囲気も感じました。とても現代的につくられています。
僕はスニーカーを選ぶときにカーブや革の当たり具合など、履き口まわりを大事にしています。ここをさわったときの感覚が、そのスニーカーをいいなと思えるかどうかのひとつの基準になっている。その点この『ロイコ スニーカー』はパッと見の印象からは想像できないなほど繊細で、見事としかいいようがない。すごく僕好みでした。
メゾンブランドはデザイナーによってクリエーションや提案が大きく変わります。それでもヴァレンティノ ガラヴァーニが『ロイコ スニーカー』のような普遍的なスニーカーをラインナップしているというのは、変化し続けるメゾンブランドの中においてとてもいい存在だと思います」(小澤)
02:adidas Originals for UNITED ARROWS & SONS|BW ARMY DECON
デコンでジャーマントレーナーをモダナイズ
「ユナイテッドアローズの展示会でこのオールブラックの『BWアーミー デコン』を見たとき、珍しいなと思いました。アッパーはブラックでガムソールというパターンはよく見ますが、オールブラックのジャーマントレーナーはあまり見かけません。しかもデコンなので、『BWアーミー』のきれいめな雰囲気は残しつつ、スポーツ色を抑えたいというときにちょうどいい“ファッションシューズ”になっています。
デコン=デコンストラクテッド(deconstructed)は脱構築という意味の通り、芯材を使わず素材を薄くするなど、引き算の発想でつくっていく手法。薄くて細身の削ぎ落とされたシューズがトレンドということもあり、ラグジュアリーブランドを筆頭にデコンモデルが増えていて、今のファッションとの親和性を高めています。だからジャーマントレーナーという定番もデコン仕様であれば、今また履きたくなる人も多いのではないでしょうか。
ユナイテッドアローズ&サンズの別注は、オールブラックだと表革を選びそうなところを、スエードで仕上げているところも、このスタイルと相性がいい。ここまでやわらかなスエードシューズは僕の記憶ではあまりありません。もちろんオールブラックだから合わせやすく、デコン仕様で履きやすい。いろいろな意味で引き算の発想が活きています」(小澤)
03:JIL SANDER|ELBE SLIP ON
スキューバシューズをモードの視点で再解釈
「2026年秋冬のランウェイショーで披露されたジル サンダーの新作シューズです。初めて見たとき、1980年代に登場したナイキのアクアソックを思い出しました。後でヴィンテージのスキューバシューズにインスパイアされたと知り、そういった着想源があるからこそ、レザー調のアッパーにヴィブラムソールを採用しているのだと納得。今のトレンドの薄底シューズへと巧みに昇華させています。
スポーツブランドは往年のマリンシューズを復刻することはできても、それを今のトレンドに即してつくり替えるのは至難の業です。復刻モデルが時代にマッチすればヒットはするでしょうが、自分はそのオリジンを履きたいとは思わない。やはりジル サンダーのようなラグジュアリーブランドが、モード的なアプローチでファッションとの距離を縮めてくれるからこそ履きたくなるわけです。
いつもラグジュアリーブランドの着眼点には感心します。シモーネ・ベロッティになってからのジル サンダーは特にその精度というか、感度が高いなと思います。今回のエルベ スリッポンはしっかりオリジナリティがあり、アッパーの素材もしなやか。細身のシルエットもモダンで、ちょっと太いボトムスを被せると、スリッパみたいできれいです」(小澤)
04:ASICS|GEL-KINETIC 2.0
過去の名品の掛け算でモダンなニューモデルが誕生
「今年4月にデビューしたゲルキネティック 2.0の新色です。ゲルキネティック 2.0は2000年代のランニングシューズからインスピレーションを得て、ゲルキネティック4(GEL-KINETIC 4)やゲルフランティック(GEL-FRANTIC)などのデザインを融合している点がユニーク。着想の起点を明確にしながら、しっかり2026年らしいモデルに仕上げています。
“アーカイブを組み合わせて現代的にする”という発想で、ものづくりをしているメーカーは意外に少ない気がします。アシックスはベースになるモデルのディテールを抽出するのが巧みなのか、掛け算が上手なのかわかりませんが、過去の要素を融合してモダンな新作へと昇華することに長けている。このゲルキネティック 2.0もそんな一足だと思います。
アシックスのスニーカーはデザインを構成するパーツの個性が強く、ちょっとした差し色が効果的に使われているのも面白い部分だったりします。ただこれに関しては、ブラックのワントーンが一番魅力的でした。
最近はいろいろな人から『アシックスのどのモデルを買えばいいか?』とよく聞かれます。以前はニューバランスで同じような質問を受けましたが、アシックスは『何を買ったらいいかわからない』という人が多い。でも、その答はありません。縦から、横から、360度見て、自分がしっくりくるフォルムを選べばよいと思います。
僕は、クセがないアシックスが欲しいという人にはゲル1130、ゲルカヤノ14、ゲルNYCあたりをすすめていましたが、今ならこういうモデルもいいかもしれません。特にファッションとして取り入れたい人には、うってつけの選択肢になるはずです」(小澤)
「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。近著に『1995年のエア マックス』(中央公論新書)。スニーカーサイズは28.5㎝。
ヴァレンティノ インフォメーションデスク TEL: 03-6384-3512
ユナイテッドアローズ&サンズ 渋谷 TEL:050-8894-7043
ジルサンダージャパン TEL:0120-998-519
アシックスジャパン カスタマーサポート部











