凪良ゆうの小説『汝、星のごとく』が映画化され、10月9日に公開。監督した藤井氏に運命に翻弄される男女の15年を美しく描いた本作の製作秘話や、映画づくりへの思いを聞いた。
何にどう感情が揺れるのかを意識した“人の愛”を描きたかった
社会派ドラマ、サスペンス、恋愛などさまざまなジャンルを横断し、数々の名作を発表し続ける映画監督・藤井道人。最新作は凪良ゆうの傑作恋愛小説を原作とする『汝、星のごとく』だ。自身も凪良作品のファンだと語る氏が、今作で強く意識したことがある。
「凪良さんの本には、その恋がどんな形をしていようと、そこに一般的な正しさを見いだせなくても、読者に“肯定も否定もせず受け入れてほしい”という願いが込められていると思っています。僕が恋愛を描く作品を撮るときも、登場人物が付き合ってキスをしないといけないラブストーリーととらえるより、人はどういうものに対して怒りや悲しみや孤独を覚え、どのように感情が揺れるのかを意識していて。そんな“人の愛”を凪良さんの作品にも感じるんです。なので、まず凪良さんに『この映画を観たい!』と思ってもらえる作品を目指そうと思いました。それにより、彼女の世界を好きな人はもちろん、初めて触れる人にも楽しんでいただけると考えたんです」
物語は、ままならない境遇や夢の狭間で揺れ動きながらも、相手が放つ光を頼りに生きる男女、櫂(横浜流星)と暁海(広瀬すず)の15年を追う。あらゆる製作工程に携わり、物語の魅力を最大化する映画監督として、氏が最も得意とする作業を聞くと「たぶんいちばんうまいのは編集、かな」とはにかむ。
「編集は物語全体を俯瞰し、それぞれのシーンに意図や余白を与えて、効果的に登場人物の感情を描きます。今作では、ある点描(短いシーンの連なり)を、編集の段階で脚本から変えて後半にもってくる判断をしました。それにより、観客の皆さんの予想や驚きを補完しつつ、櫂と暁海の感情と記憶の鮮度をそのまま届けることができたと思っています」
1986年東京都生まれ。大学在学中より映画製作を始め、2010年に映像集団「BABEL LABEL」を設立。’14年公開の映画『オー!ファーザー』で商業映画監督としてデビューする。代表作に映画『新聞記者』『余命10年』『正体』『港のひかり』、Netflixシリーズ『イクサガミ』などがある。’27年2月11日公開の映画『リバイアサン』が控えている。