『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』
ワイアット・ラッセル(1986年生まれ)
二十一光りが放つ“陰”の魅力
セレブな親の知名度を借りてハリウッドにデビューする“ネポベイビー”と呼ばれる業界二世は星の数ほどいる。だが、ワイアット・ラッセルを超えるネポベイビーはそういないはず。なぜなら彼の父はカート・ラッセル、母はゴールディ・ホーン、そして姉はケイト・ハドソンなのだから。つまり七光りならぬ二十一光り!
そんな彼だが、当初は七光りを嫌い、実力勝負のアイスホッケー選手として身を立てようとした。ポジションは顔をマスクで隠したゴールテンダーだったのだから徹底している。一時は欧州のプロチームで活躍したものの、24歳のときけがで引退を余儀なくされてしまった。それまでスポーツしかやってこなかった彼が就ける仕事――それは、家族が営む俳優業しかなかったのである。しかも彼には父譲りのワイルドさと母譲りの輝く瞳という強力な武器があった。
実力の世界で一度挫折した経験をもつだけに、ワイアットは冷静だ。「ネポベイビーは1000倍楽かって? 冗談だろ? 100万倍楽だよ」と明言し、逆にファンを獲得したのだ。そんな彼が俳優として一皮むけたのが、MCUのドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』である。この作品で彼は二代目キャプテン・アメリカに任命されるも失脚するジョン・ウォーカーを熱演。「二代目」の重責に苦しむ姿は、家族にはない“陰”を感じさせた。人気キャラとなったウォーカーは映画『サンダーボルツ*』にも登場。妻子に去られながらも、世界を救うために奮闘する姿に、ファンは再び喝采を送った。
そんなワイアットの“陰”の魅力は、米国版ゴジラシリーズの世界をテレビで展開したドラマ『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』でも味わえる。同作で彼が演じるのは、1950年代を舞台に怪獣を追う米国軍人リー・ショウ。山本真理演じる科学者ケイコを愛しながらも、ぐっとこらえる姿が泣かせてくれる。そしてスゴいのは、同時進行で描かれる2010年代の物語における老いたショウを、父カートが演じていること。二人の顔がモーフィングする演出や時空を超えた電話シーンに、怪獣そっちのけで惹きつけられること間違いなしなのだ。
『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』
監督/マット・シャンクマンほか
出演/アンナ・サワイ、キアシー・クレモンズ、渡部蓮、ワイアット・ラッセル
半世紀にわたってゴジラやキングコングを追跡してきた特務機関「モナーク」と、その創設メンバーの子孫たちを描いた怪獣てんこもりのドラマシリーズ。ワイアット・ラッセル扮するショウが主人公の前日譚スピンオフ・ドラマも製作進行中だ。Apple TVで好評配信中。
文筆家。映画、音楽雑誌など複数の媒体で執筆。大和田俊之氏との共著『文化系のためのヒップホップ入門1~3』(アルテスパブリッシング)が絶賛発売中。