住宅地や狭い市街地を走ることが多いファミリー層にとって、クルマにはきびきびとした機動性の高さを求めたくなる。日産の新型「キックス」は、その名のとおりスニーカーのような機動性が魅力。だが正直いって、BセグメントのSUVならだいたいのクルマがそう。では、新型キックスのポテンシャルとは何か?
奇をてらわずに、着実に進化
6月18日から国内販売が始まった新型キックスは、北米市場の需要も高く、すでに2024年3月から投入されている。実車を見た第一印象は、小さいのに堂々としていること。水平基調のグリルが描く力強いフェイスと、リアクォーターの位置でキックアップするベルトラインは、全長4365mm、全幅1800mmとコンパクトでありながら引き締まった佇まいを生み出し、北米のフリーウェイや市街地でも引けを取らない、ほどよい存在感を示すことが想像できる。先代は全体的に丸みを帯びていただけに、なおのこと新型には頼りがいを感じるのかもしれない。小さくても、SUVを買わないと得られないタフネスや安心感がちゃんと宿っていた。
グレードは、上位から「G」「X+」「X」という展開。それぞれに2WDと4WDが用意され、現時点(2026年8月時点)では「G」と「X+」が売り上げ全体の85%以上を占めている。ゆえに上位グレードのよさを真っ向から説きたい気もあるが、ベースグレードである「X」の素っ気ない感じがよかったことも伝えたい。ちなみに「X」のなかでも最も素に近い「シンプルパッケージ」は、2,999,700円とU-300万円を実現している。
「X」はファブリックシートだが、乗り込むとまずエンボス加工が施されたシートが目に入る。シートそのものは柔らかく作られているが、模様のわずかな凹凸が加わることで、ウレタンのクッションに到達する前にふっくらとしたタッチがあり、いっそうソフトに感じられる。「素材の質よりも柔らかく快適であることが豊か」という感じはフランス車のよう。シート自体も、背面の形状や体圧分散にこだわって設計された「ゼログラビティシート」で、乗員の疲労を軽減する。インパネの装飾も抑えられているが、ブラックとグレーファブリックで統一された世界観は着る服を選ばず、これはこれで好印象だった。
え、EVじゃないの? という静けさ
そして、どのグレードに乗っても「技術の日産」を味わえるのが、今や代名詞ともいえる「e-POWER」の進化。「ノート」「オーラ」といったコンパクトカーから、「セレナ」「エルグランド」といったミニバンまで定着している電動ユニットであり、ハイブリッドではあるものの、エンジンを発電専用として機能させ、滑らかで静かな走りをもたらす。
新型キックスから、5つの主要構成部品(モーター、発電機、インバーター、減速機、増速機)をひとつのモジュールにおさめた「5-in-1」とよばれるe-POWERユニットを日本市場でも採用することで、ユニットの小型・軽量化、高剛性化を実現。あくまでエンジンは発電要員として機能し、高速道路を走行した際にも、よほど強く踏み込まない限りは苦しそうに回るエンジン音も聞こえてこない。踏み込むとスーッとなんの突っかかりもなく滑らかに加速する様は、フィールだけでいえば電気自動車と遜色のないものだ。
そしてもう一つ、4WDには新たに「e-4ORCE」と呼ばれる電動駆動四輪制御技術が備わる。コーナリング時に各車輪のモーターとブレーキを制御することで、滑らかな旋回や、雪道での安定した走行を実現するものだ。運転席の「アドバンスドドライブアシストディスプレイ」にはe-4ORCEの作動状況が投影されるため、慣れない人も実感を得やすい。
運転支援技術も、日産独自の「プロパイロット」をはじめ、「インテリジェント エマージェンシーブレーキ」や「踏み間違い衝突防止アシスト」などが全車に標準装備される。
アウトドア好きの期待にも応えます
そして12月23日からは、専用の内外装に防水シートなどのアウトドアパッケージを装備したカスタムカー「ROCK CREEK」が全国で一斉販売される。「ROCK CREEK」は、すでにエクストレイルで人気を呼んでいるパッケージなだけに、今後の売れ行きにも期待だ。
高い機動性を誇るBセグメントSUVのなかでも、かなり期待がもてる新型キックス。いい“スニーカー”は、主張が強すぎず、軽やかで、疲れなくてコスパがいいことがわかった。
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