取り回しやすいサイズの中に込められた、ファミリーユースに十分なユーティリティと安全性、そして走行性能――。
今でこそCセグメントのSUVは群雄割拠だが、アウディが「Q3」を導入したのは2011年のこと。出せば売れるパッケージだから急いでラインナップに加えたのではなく、彼らはトレンドセッターだった。それから15年が経ち、三世代目となったQ3が日本に上陸。試乗してみて感じたことは、まさに古参の進化は伊達ではないということだった。
選べるボディタイプ
スタイリング以上に語るべき変化は多いけれど、まずアウディの一部車種は、異なるボディタイプを選べることが魅力のひとつ。Q3は二世代目の2018年から、SUV然としたボディタイプに加え、クーペライクな「Q3 スポーツバック」を選べるようになった。Q3とベースをともにする小型セダンの「A3」にも「A3 スポーツバック」があるが、ハッチバックであるため、ボディタイプが大きく異なる。Q3の場合は、ユーティリティに差異をつけることなく、ジャケットのラペル形状にこだわるような微差で、自らの美意識を投影できることが嬉しい。
いずれもサイドに深めのキャラクターラインこそ入るが、いっときのアウディに採用されていたエッジが立ったプレスラインは減り、全体的にスリークな佇まいに。細マッチョ志向だった男子が、適度に大人の恰幅を得たという印象だ。全長は4,530mm(先代より40mm増)、全幅は1,860mm、全高は1,610mm(スポーツバックは1,570mm)となる。
Q3 スポーツバックはテールゲート開口部の高さがやや低いが、よほど大きな板や額縁などでも積まない限りは影響を受けないレベルであって、積載容量自体は共に488L。どちらもファミリーユースで想定されるベビーカーやゴルフバッグ、自転車2台などを、シチュエーションに応じて難なく飲み込むのが頼もしい。
Cセグを疑いたくなる安定感
試乗にあたって、新型Q3は大幅に静粛性が向上したと聞いていたが、それはドアを開けた瞬間からわかった。まず、今どきのクルマにしてはドアが比較的重たい。ドアは内装やスイッチよりも先に触れるだけに、立てつけのよさにはこだわりたい部分で、Q3の場合は、ある程度はドアそのものの重みで閉まるようになっていて、チープな軽さや音をほとんど感じさせない。そしてドアを閉めると、内圧がしっかりと高まって外部との隔たりを感じさせる密閉感とともに静寂が訪れる。ドイツ車らしいな、と感覚的によさを享受できる瞬間だ。
そして、走行中のノイズも抑えられている。街中での走行はもちろん、高速道路でノーマルにあたる「コンフォートモード」でスロットルを開けても、車格に合わないようなエンジン音のうめき声が聞こえてくることはない。スポーティな「ダイナミックモード」に切り替えた場合でも、決して過剰な演出が加わるわけでもなく、きわめてスマート。速すぎることはない点も、多くの人にとって扱いやすい仕上がりなのだろう。それにしなやかな足回り合わさって、安定した走りに磨きがかかった印象を受ける。
新型Q3のサスペンションは独自開発の2バルブ式で、伸び側と縮み側を個別に制御する。高速道路のジャンクションで路面が大きくうねっているようなところでは、柔らかく路面をいなしつつも、伸び縮みを制御して速やかに上下動が収束する。一方、一般道路では、産業道路など大型車両が頻繁に往来することで路面が荒れているところも走行したが、そうしたところでもひとつひとつの細かい入力を「はいはい」と軽くあしらってやり過ごすのではなく、きちんと噛みしめるように拾いながら、丁寧にドライバーに伝える。全部的確に伝わらないほうがいい、という人には硬く感じられるかもしれないが、重厚さや安定を感じられるインフォメーションから、新型Q3にはCセグメントSUVとして及第点以上のクオリティが備わっているといえる。
「直感的な操作」とはこのこと
重厚さを尊ぶ一方で、軽快さを重視すべき部分もある。ひとつは操作系。今回から新採用された、ステアリングコラムに備わる「インテグレーテッドスイッチモジュール」は、人間工学に基づいた設計でシフト、ウィンカー、ワイパー、灯火類の操作系統をひとつのモジュールにまとめたもの。形状はまるで横長のゲームコントローラーのようで、慣れれば迷うことなく直感的に操作し、状況に素早く対応できる。よく、進化したドライバーの操作系統やインフォテインメントの紹介において「より直感的に操作できるように…」というプレゼンテーションがあるが、このモジュールはまさにそういうものだった。
ただし、手に触れる部分にしてはウィンカーの手ごたえ(通常どおり上下で作動)やワイパースピードを調節するダイヤルのクリック感に、カチカチとしたプラスティック感がダイレクトに伝わるチープな印象があり、ウィンカーレバー操作時のバネ感やより滑らかなダイヤルの手ごたえなど、ここからさらなる改良が望まれる。
今回の試乗ではテストが叶わなかったが、一般道における運転支援技術も発達している。自宅や商業施設のパーキングで効果を発揮する、メモリー機能(最大五件まで)つき「パークアシストプラス」に加え、住宅地などで行き止まりに遭遇した場合に、50m前まで記憶した道を自動でバックしてくれる「リバーシングアシスト」は、焦った場面で事故を起こさないためにもありがたい機能だ。
そして夜間走行では、「レーンライト/オリエンテーションライト」によって高速道路での車線変更アシストや、車線逸脱警告、交通情報表示などの情報を、ヘッドライトをプロジェクターのように夜間の道路に投影し、乗員に情報を伝達する。長年にわたり、灯火類を機能と美しさの両面からデザインしてきたアウディだからこそなし得ることだろう。
デザインをはじめ、クルマとしての立てつけや安定した乗り心地からも、Cセグメント以上のクオリティと密度が感じられた新型Q3。5,500,000円~というプライスは、きわめて高コスパではないだろうか。時代の進化を受け入れながら、電動シリーズのe-tronとも別軸で成熟を続ける、三世代目としての矜持が伝わる一台だった。
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