2026.07.04
最終更新日:2026.07.04

【差がつく大人のクルマ選び】プジョー、シトロエン、DSオートモビル…クセ強なフランス車がいい理由

突然だが、フレンチなクルマと聞いてどんな姿を思い浮かべるだろう。メンズファッションにおけるフレンチといえば、トラッドやワーク、ミリタリーなどに対する「洒脱なひねり」という印象を受けるが、クルマの世界でもそれは同じ。ひとたびクセのあるひねりのセンスを体感すると、なかなかに滋味深いことがわかる。

プジョー「5008 GT HYBRIDアルカンタラパッケージ」
プジョー「5008 GT HYBRIDアルカンタラパッケージ」のメーカー希望小売価格は6,140,000円。
シトロエン「C5 AIRCROSS MAX HYBRID」
シトロエン「C5 AIRCROSS MAX HYBRID」のメーカー希望小売価格は5,850,000円~。

今回は、ステランティスグループによるフレンチブランド合同試乗会に参加し、同じプラットフォームとエンジンを共有しながら、大きく異なるキャラで魅せる「プジョー 5008 GT HYBRIDアルカンタラパッケージ」と「シトロエン C5 AIRCROSS MAX HYBRID」に試乗。乗り心地のよさや、ひとクセあるデザインからフレンチSUVの魅力に迫る。そして、同時に試乗したDSオートモビルのプレミアムハッチバック「N°4」もリポート。

え、いきなり乗り心地の話から!?

外車といえばデザインの話から入りそうだが、はじめに「フランス車は乗り心地だけでも大いに検討に値する」と言いたい。これには明確な理由があって、フランスをはじめとするヨーロッパの旧市街では、大きな石畳などを頻繁に往来する道路環境が、柔軟な足回りとシートを鍛えてきた歴史がある。古くからシトロエンは「魔法の絨毯」と呼ばれ、プジョーは「猫足」と評されてきた。「乗り心地がいい=高価なクルマ」という既成概念を当たり前のように壊してくれるから、フランス車はおもしろい。

乗り心地の革命児といえば、シトロエンの右に出る者はいない。例えば1948年から1990年までつくられた「2CV」。必要最低限の装備をもつユニークな格好をした大衆車だが、「荒れた路面の上で、バスケットに入った卵を一つも割らずに運べること」を条件に足回りやシートを設計し、やわらかすぎるほどに快適な乗り心地を生み出した。

1990年まで製造された「2CV」
1990年まで製造された「2CV」。『ルパン三世 カリオストロの城』にも登場したことで、日本でも広く知られている。ⒸStellantis Japan

その後に登場するのが、発明ともいえる「ハイドロ・ニューマティック・サスペンション」。特殊な液体(LHM)と窒素ガスを用いて伸び縮みする機構は、ゆったりと上下に余韻を残すかのような浮遊感ある唯一無二の乗り味をもたらし、シトロエンの代名詞となった。残念ながら今は採用されていないが、虜になった人は多い。

と、つい前置きが長くなったが、その素晴らしい乗り味は現代のシトロエンにも受け継がれている。それが、今回試乗した「C5 AIRCROSS MAX HYBRID」にも搭載される「プログレッシブ・ハイドロ―リック・クッション」。旧来のハイドロとは原理が異なるが、端的にいうとダンパーのなかにさらに小さなダンパーを組み込むことで、路面の凹凸を段階的に吸収し、各車輪がしっかりと路面を捉えながらも適度に浮遊感のある余韻を残す。足がよく動くというよりも、じっくりと伸びる感じに近い。乗って思わず、「シトロエンはこうでなきゃ」と膝を打った。

C5 AIRCROSS
高速道路をゆく「C5 AIRCROSS」。道路の継ぎ目を乗り越えたあとに、かすかに残る上下動の余韻が往年のハイドロを思い起こさせる。
「プログレッシブ・ハイドロ―リック・クッション」の内部構造
「プログレッシブ・ハイドロ―リック・クッション」の内部構造。ⓒStellantis Japan

そしてさらに、「C5 AIRCROSS」の安楽な乗り心地には、シートの構造が大いに寄与している。中央部の腹筋のようなパターンには、低反発かつ高密度のフォームが入っており、臀部から伝わるロードインフォメーションをいっそうマイルドなものにしてくれる。もちろん、長距離運転も快適そのもの。こんな変態的ともいえる乗り味の追求がシトロエンであり、これだけでも欲しい理由になるのだ。

「C5 AIRCROSS」の前後席に採用される「アドバンスト・コンフォート・シート」
「C5 AIRCROSS」の前後席に採用される「アドバンスト・コンフォート・シート」。適度な沈み込みがあり、身体をしっかりと包んでくれる。

いっぽうのプジョーも、乗り味は古くから「猫足」に例えられるほど、粘り強くしなやかなサスペンションのセッティングで高い評価を受けてきた。シトロエンのような特殊な機構やシート構造は持ち合わせていないが、試乗した「5008 GT HYBRID」も、乗り心地は適度な硬さを保ちつつもしなやかであり、4つの足で小さな凹凸も拾いながらマイルドに伝えてくれる。前後のシートもサイドサポート面にいたるまで、見た目以上に柔らかく作られていて、特にドライバーズシートは腰まわりのサポートが自動で動く機能も搭載。乗り心地とあいまって快適に感じられた。

プジョーの動物顔と、シトロエンの仏頂面

続いてエクステリアの話へ。今やどの国のクルマもグローバル向けにつくられているため、昔ほどの際立った個性は見られなくなった。が、それでもフランス車のデザインはひとクセある。代々にわたる秘伝のタレが着実に継ぎ足されてきた感じと似ていて、ぽっと出の個性派には決して真似できないアクの強さといえばいいだろうか。人を選ぶところはあるかもしれない。

プジョーといえば、ライオンが創業時からのシンボルであり、その印象のとおりに強くシャープな目つきや、エッジが立った顔つきのモデルが多くつくられてきた。現行車種において個性的なのが、“顔”の左右に入るライオンの爪痕を模した3本のライト。これは5008以外にも、コンパクトハッチバックの208やSUVの2008、3008にも入っていて、ハッチバックの308には、牙をモチーフにした1本の鋭利なライトが入る。獰猛な動物をシンボルに掲げるブランドは他にもあるが、記号的な要素を自然とデザインに落とし込む例は少ない。

ライオンの爪痕を模したライト
ライオンの爪痕を模したライト。運転支援技術の進歩で顔がカメラやセンサー類でブラックアウトされるクルマが多いなか、シャープな個性が際立つ。
5008
シルバーのモールをAピラーからルーフ、リアにかけて流すことでシャープに見せている
「5008」は3列シートを備えている。3列シートのSUVはどうしてもリアのデザインに無理がかかるが、シルバーのモールをAピラーからルーフ、リアにかけて流すことでシャープに見せている。

いっぽうのシトロエンは、独創的なデザインとは切っても切れない歴史を背負ってきた。先述した国民車の「2CV」は“ブリキのカタツムリ“と呼ばれ強烈な個性を放ったし、その後に発表されたフラッグシップの「DS」も、宇宙船のような未来的なデザインがセンセーションを巻き起こした。それにシャルル・ド・ゴールら要人も乗っていたのだから、シトロエンというのはフランスを象徴する個性派なのだ。ほかにも「Ami」「SM」「BX」「XM」……往年の個性的な顔ぶれを挙げたらキリがないので、気になる人はぜひ調べてみてほしい。

1955年のパリサロンで発表された「DS 19」
1955年のパリサロンで発表された「DS 19」。ハイドロ・ニューマティック・サスペンションを採用したフラッグシップだった。ⒸStellantis Japan
シトロエン
空力に優れたテールライト「シトロエン ライト ウイングス」
空力に優れたテールライト「シトロエン ライト ウイングス」

そうしたヘリテージと比べると、現行はいくらか大人しくなったようにも見えるが、個性的なアクの強さは健在。近年のシトロエンはどこか冷めた目つきをしているのが特徴で、歴史ある個性派として達観しているような落ち着きすら感じられてユニーク。「C5 AIRCROSS」に関していえば、空力(=燃費向上)を意図した凸凹形状のテールライトはクセと合理性のあらわれであり、“らしい”ひねりがあることに思わず頬が緩んだ。

乗ってすぐに感じる、心地よい違和感

そして、フランス車はインテリアも面白い。

現代のプジョーを知るうえで外せないのが、独自設計のインパネ「i-Cockpit」。今や大型スクリーンはあたり前だが、それでもプジョーは何かがほかと違う…。一番の違和感は、メーターとステアリングの上下位置関係だろう。ステアリングは下だけでなく上もカットすることで、メーターの視認性向上を狙っている。駐車時などステアリングをぐるぐると回すときにはやりづらいこともあるが、ひとたび慣れると、包み込んでくれるようなセンターコンソールと相まって、クルマとの不思議な一体感が生まれる。運転というより、宇宙船のコクピットで操縦桿を握っているような没入感だ。

「5008」のコックピット
小径のステアリングとスクリーンが目に飛び込む「5008」のコックピット。「i-Cockpit」は進化を遂げ、大型スクリーンを搭載した「Panoramic i-Cockpit」に。

対するシトロエンのインテリアは視覚的にも触覚的にも優しく、そしてやはりクセが強い。水平基調に助手席側へと一直線に伸びるダッシュボードはラウンジのような広々とした雰囲気を演出している。インパネまわりにあしらわれているのは、サステナブルなファブリック素材。カツカツとしたチープなプラ素材の質感をそのままにするクルマが多い時代に、こうした有機性を感じさせるひと手間が、印象の違いを生みだしている。

「C5 AIRCROSS」に備わる13インチの「ウォーターフォールスクリーン」
「C5 AIRCROSS」に備わる13インチの「ウォーターフォールスクリーン」は、コンソールに向けて流れるようにデザインされている。ダッシュボードには凹凸がなく、フラットな視界を得られる。
【差がつく大人のクルマ選び】プジョー、シの画像_15

今回試乗した「プジョー 5008 GT HYBRIDアルカンタラパッケージ」と「シトロエン C5 AIRCROSS MAX HYBRID」の2台は、共通のプラットフォームに共通の1.2L 3気筒ターボエンジン+48Vマイルドハイブリッドを組み合わせている。はじめは車体の大きさにしては非力さを疑ったが、1人で市街地や高速道路を試乗した限りでは、低速域からモーターによるスムーズな出足のよさが感じられ(トルクがあるという力強さよりも軽やかな印象)、クルマのキャラからすれば、高速での加速も不足は感じられなかった。燃費は「5008 GT HYBRID」が18.4km/L、「C5 AIRCROSS」が19.4km/Lと上々だ(いずれもWLTCモード)。

フレンチの美意識を宿したDSの世界

と、ここまでプラットフォームを共にする2台のSUVを比較しながらフランス車の魅力に迫ったが、もう一台、フランス的なクルマを知ってもらいたい。それが、DSオートモビル(以下、DS)の「N°4」だ。馴染みがないかもしれないが、DSは2015年までシトロエンのサブブランドとしてプレミアムの領域を担い、その後、独立した。現在もフランス政府が公用車に使うなど、もっとも格が高いフレンチブランドといえる。

N°4 ETOILE HYBRID
N°4 ETOILE HYBRID 後ろ
「N°4 ETOILE HYBRID」のメーカー希望小売価格は6,250,000円~。ロースタンスに見えるが、乗り味はスポーティよりもはるかにエレガント。

フランス車の個性とプライドを高い次元で表現するブランドだけに、「尖り続けることを守る」ことに長けている。「N°4」は、エンジンは先に紹介した2台と共通だが、乗り味やインテリアの作り込み、エクステリアの個性がより際立っているのだ。

ハッチバックはカジュアルな印象だが、「N°4」は道具でもスポーティカーでもなく、優雅にしっとりと走る方向を狙っているため、乗り心地は実に上品であたりが優しい。静粛性はすでに高いが、これがEVになるとさらに快適さを増して、プレミアムな世界観に没入できるのではないかと思う。本国にはEVの設定があるため、上陸を期待したい。

そして、ハイブリッドのモーター制御による滑らかな回生ブレーキも気持ちがいい。ゆっくりと制動をかける状況において、アクセルオフからブレーキペダルに足を乗せるまでの減速がとても自然で前のめりになるような急な挙動が起きない。多方面で乗員へのホスピタリティが感じられ、「小さな高級車」の矜持を感じた。

アルカンターラとレザーが丁寧に張られたインテリア
アルカンターラとレザーが丁寧に張られたインテリア。フランス流の手仕事(=サヴォワフェール)を感じさせる高級な世界観こそが、DSの真骨頂だ。
アールデコに着想を得た「クル・ド・パリ」デザインのスイッチ類
アールデコに着想を得た「クル・ド・パリ」デザインのスイッチ類。

人と被りたくない目利きのある大人にこそ、フランス車はいい。「ちょっと見た目が個性的」なんて小さな差でも、「エスプリが効いた」といったニュアンス的なことでもない。よく見てよく乗ってみると…じわりじわりと味わい深さが伝わってくる。

また、ひと昔前のフランス車を知る人は壊れやすい印象を抱いているかもしれないが、プジョーとシトロエンでは、正規ディーラーでの修理時に代車の用意はもちろん、修理から一カ月以内に完了しなかった場合は20万円のキャッシュバックを行うプログラム「Fun to Drive Care」を始めている(対象車種は公式サイトをチェック)。今の時代は、いつにも増して、安心してフランス車に乗ることができるのだ。

より快適で、楽しい記憶が残るファミリーカーライフを送りたい人は、ぜひ一度フランス車を体感してみてほしい。

プジョー コール:0120-840-240
シトロエン コール:0120-55-4106
DSコール:0120-92-6813
※いずれも、受付時間は 9:00~19:00(年中無休)

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