2026.10.28
最終更新日:2026.10.28

【ハミルトン新作時計「クッション メカ」】CEOが語る、「なぜ、人々はヴィンテージ風ウォッチに惹かれるのか?」

「AMERICAN SPIRIT SWISS PRECISION(アメリカの精神とスイスの高精度)」をブランド哲学に掲げるハミルトンは、アメリカ的なエッセンスこそが魅力の源泉でもある。

新作の「クッション メカ」は、第一次世界大戦が終結し、様々な文化が花開いた“狂騒の20年代”に生まれた時計を復刻したもの。この時計に込めたアメリカの時計文化や歴史、そしてハミルトンの時計づくりの熱い思いを、ハミルトン インターナショナルのCEOフランチェスカ・ジノッキオに聞いた。

ハミルトン インターナショナルのCEOフランチェスカ・ジノッキオ

愛好家の声から生まれた時計

アメリカのペンシルバニア州にて、1892年に創業したハミルトン。まずは正確な鉄道時計で有名になり、その後はシンプルながら堅牢なミリタリーウォッチや前衛的な機能やデザインを取り入れた「ベンチュラ」などが有名となった。

その後スイスに生産拠点を移し、正真正銘の“SWISS MADE”の時計となったが、今でもアメリカ的エッセンスはしっかりと受け継いでいる。その特徴のひとつが、ハリウッドの映画産業との深い関係で、映画の劇中に使用するための時計を提供することが多い。

実はこの「クッション メカ」の復刻も、映画がきっかけとなったもの。クリストファー・ノーラン監督の映画『オッペンハイマー』にて主演キリアン・マーフィが着用したハミルトンの1930年代の時計「クッションB」を見た愛好家からの「この時計を復刻してほしい」という声を受けて生まれたものだ。

時代の変革期に生まれたクッションモデル

「『クッション メカ』は1926年のモデルを再解釈したものです。当時は時計の役割が単なる“時間を測る道具”から、人生に必要不可欠なものへと変化した時代でした」と語るのは、ハミルトン インターナショナルのCEOフランチェスカ・ジノッキオ。

1920年代の自由な発想から生まれた優美なクッション型ケースモデルを復刻
1920年代の自由な発想から生まれた優美なクッション型ケースモデルを復刻。当時のスタイルに合わせて、秒針は小さくデザインされ、カレンダーも加えてない。ケースサイズやインデックス、カラーなど、多彩なバリエーションを用意する。 [左]手巻き、SS(ゴールドPVD)ケース、ケース縦34×横34㎜。5気圧防水。¥183,700・[中]手巻き、SSケース、ケース縦34×横34㎜。5気圧防水。¥166,100・[右]手巻き、SSケース、ケース縦30×横30㎜。5気圧防水。¥166,100/すべてハミルトン(スウォッチ グループ ジャパン)

「このケースデザインは当時のハミルトンにとっても特別な形状であり、デザイン開発に積極的に取り組んでいたことを証明するもの。我々はこの『クッション』というユニークで特別なデザインをきっかけに、ヴィンテージの領域にも力を入れていきます」

小ぶりでクラシカルな時計が欲しい場合、ヴィンテージウォッチが選択肢に入ってくるが、防水性や耐磁性が脆弱なので毎日使う時計としては頼りない。しかしデザインやプロポーションは過去のスタイルを継承しつつ、現代的なスペックを持つ時計があるなら、それが最良の選択肢となるだろう。

この「クッション メカ」は、まさにその希望を叶えてくれる時計となるが、しかしその開発にはさまざまな苦労があった。

名門の矜持が新型ムーブメントに現れる

過去のアーカイブを正確に再現するために、最もネックになるのはムーブメントである。現代のムーブメントは耐磁性や持続時間を向上させるために、直径も厚みも大型化する傾向にある。そのため時計のケースも大きくなるのだが、こうなるとオリジナルモデルのムードは損なわれる。現在のハミルトンも小型ムーブメントを所有していなかったため、ヴィンテージデザインの時計の開発には苦慮していた。

「レトロなクッション型モデルは、熱心なコレクターが多く、若い時計愛好家にも人気があります。我々もヴィンテージな世界観を打ち出したいと考えていましたが、適切なムーブメントがなかった。そこで、手巻き式の名作ムーブメント『プゾー7001』をベースにした『H-42』を開発しました。この小型の手巻きムーブメントの完成によって、『クッション メカ』は、オリジナルモデルを忠実に再現できたのです」

もちろん現代のライフスタイルに合わせて防水性能を5気圧へと向上させ、耐磁性も装備。操作性を高めるためリューズの形状も再デザインするなど、小さな進化は欠かせない。

新しいムーブメント「Cal.H-42」
新しいムーブメント「Cal.H-42」は、薄型設計の手巻き式。1970年代に設計された名作ムーブメントを範とするシンプルで美しい機械だが、約57時間というパワーリザーブは実用性に優れ、ニヴァクロン™製のヒゲゼンマイによって耐磁性能も高めた。

レトロなデザインに秘めた時計戦略

「クッション メカ」のオリジナルモデルが生まれた1920年代は、ハミルトンが懐中時計にかわって腕時計の製造に力を入れ始めた時期にも重なる。いうなればハミルトンの歴史の分岐点に生まれた時計であり、だからこそ忠実に再現したいと考えたという。

しかしその一方で、幅広いユーザーにアピールするために、現代的な要素も取り入れた。ケースのサイズは、オリジナルより少し大きい30×30㎜に加えて新たに34×34㎜のサイズも追加。ダイヤルカラーも多彩で、数字のタイポグラフィも3種類。1920年代に非常に人気があった彫刻入りケースもラインナップに加えている。

クッション型ケースモデル

「ヴィンテージ風のデザインやコンパクトなケースといったトレンドは世界的なものです。特に若い世代は“本物らしさ”に惹かれ、機械式時計への関心をますます高めています。それはヨーロッパやアメリカ、そして日本でも同様です。しかし『クッション メカ』は、単なるトレンドではなく物語。そしてその物語が、人々を引き寄せるのです」

ストーリーを纏うという楽しみ

人間というのはわがままなもので、デジタル化が進むと、その反動でアナログな味わいを求めるようになる。「クッション メカ」は、物語のあるデザインに機能性を融合することで、自分らしさを表現するアクセントとして、手元を華やがせる。

ハミルトン インターナショナルのCEOフランチェスカ・ジノッキオ 2

「テクノロジーに親しんでいるからこそ、ブランドのストーリーを知り、その世界に没入したいと考える。それはUOMO読者の多くにも当てはまるでしょう。単なるアクセサリーではなく、『クッション メカ』の物語そのものを身にまとうことが喜びなのです」

「クッション メカ」は、レトロで美しい時計だが、歴史やデザイン、ムーブメントなど様々な物語を知れば、その価値をより深く理解できる。時計と対話しながら、カリカリと手巻きムーブメントを巻き上げる……。そんなひと手間が、ちょっとした時間を特別にしてくれるのだ。

クッション型ケースモデル 黒
手巻き、SSケース、ケース縦30×横30㎜。5気圧防水。¥166,100/すべてハミルトン(スウォッチ グループ ジャパン)
ハミルトン インターナショナルのCEOフランチェスカ・ジノッキオ 3
ハミルトン インターナショナルCEO
フランチェスカ・ジノッキオ(Francesca Ginocchio)

ラグジュアリービジネスにおいて豊富な見識とキャリアを持ち、スウォッチ グループでは、マネージングディレクターやブランドマネージャーなどの要職を歴任。2025年10月より、ハミルトン インターナショナルのCEOに就任した。

ハミルトン/スウォッチ グループ ジャパン

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