世界に通用する高精度で高品質な腕時計を作り出す。その信念から1960年にデビューした「グランドセイコー」。そこから時を重ね、現在では誰もが認める世界的高級時計ブランドになっている。
そこで今回は、時計の本場スイス・ジュネーブで開催された時計イベント「ウォッチズ アンド ワンダーズ」と、デザインの聖地イタリア・ミラノの「ミラノデザインウィーク」の現地取材を通じて、グランドセイコーの存在感と世界からの評価をレポートしていこう。
世界が認めたグランドセイコーのオリジナリティ
スイスの西部に位置するジュネーブは、国際機関や金融機関が多く集まる国際都市。美しい水をたたえるレマン湖や遠方に見えるアルプス山脈など風光明媚な観光地としても人気が高い。大噴水(ジェッドー)は、この街のシンボルだ。「ウォッチズ アンド ワンダーズ」は、街を挙げて盛り上がる一大イベント。
時計産業の首都が認めたグランドセイコー
金細工産業で栄えていたジュネーブに、フランスの宗教問題でユグノー(カルヴァン派プロテスタント教徒)が移住してきたのが17世紀ごろ。ユグノーの多くは手工業に従事しており、そこには時計師も多く含まれていた。それがきっかけとなってジュネーブで時計産業が勃興し、旧来からの金細工産業と融合することで、華やかで美しい時計がつくられるようになる。
ジュネーブに設立された多くの時計工房の中から、ヴァシュロン・コンスタンタンやパテック フィリップといった老舗時計ブランドが生まれ、いまでもジュネーブは“時計産業の首都”とされる。
この地で開催される「ウォッチズ アンド ワンダーズ」は、多くの老舗時計ブランドが参加する世界最大の時計イベント。ここにグランドセイコーは名を連ねている。
1960年のブランド発足から世界基準の腕時計を目指したグランドセイコーは、2017年の独立ブランド化をきっかけに、世界で評価されるグローバルブランドを目指すことになる。まずはブランド誕生60周年となる2020年に、パリのヴァンドーム広場に欧州初の直営旗艦店「グランドセイコーブティック」を開設し、ラグジュアリー文化の中心で存在感を示した。
そして2022年からは、ウォッチズ アンド ワンダーズにも参加。多くの歴史ある名門時計ブランドが参加する豪華絢爛な時計の祭典だが、基本的に参加ブランドはスイス勢がメインで、わずかにフランスとドイツのブランドが加わる程度。しかしそこに非欧州ブランドとして唯一参加を認められたのが「グランドセイコー」だった。(なお、今年から同じくセイコーウオッチに属する「クレドール」も参加している)
オリジナリティこそが最大の武器
ではなぜグランドセイコーは、多くの老舗や名門が居並ぶ「ウォッチズ アンド ワンダーズ」で存在感を示すことができるのか? それは他にはないオリジナリティが評価されているからだ。
時計を駆動させるためのメカニズムを大別すると、400年以上の歴史を持つ「機械式」と1969年に腕時計に採用された「クオーツ式」の2種がある。高級時計ブランドのほぼすべてが伝統的な機械式ムーブメントに注力する中、グランドセイコーでは、機械式、クオーツ式、そしてゼンマイ駆動×クオーツ制御の「スプリングドライブ式」からなる3種のメカニズムを駆使して腕時計を製作している。なかでも世界の時計愛好家から注目度が高いのが、スプリングドライブ式ムーブメントであり、ウォッチズ アンド ワンダーズでも話題となっているのだ。
今回発表されたグランドセイコーの新作の目玉となるのは、ダイバーズウォッチ「Ushio 300 Diver」。その特徴は年差±20秒という高精度スプリングドライブ式ムーブメントを搭載していることである。
スプリングドライブ式ムーブメントは、内部の構造上、機械式よりも衝撃に強く、しかもこのモデルの搭載するキャリバー9RB1は、スプリングドライブU.F.A.(Ultra Fine Accuracy)と命名された年差±20秒という超高精度。これは、最高の腕時計を目指すというグランドセイコーの信念の表れといえるだろう。
「今回のウォッチズ アンド ワンダーズでは、スプリングドライブの組み立て実演のコーナーも設けました。来場する皆さんに興味をもってもらえましたが、やはり他にはないオリジナリティという点が最も評価されていると思います。もちろん海外のジャーナリストやリテーラーにこの技術を理解してもらうには、まだまだ難しいところもあるので丁寧に仕組みを説明するようにしています。しかし来場者は時計に対する知識が深い方々ですから、徐々に理解度が高まってる手ごたえはあります」と語るのは、グランドセイコーのデザイナー、久保 進一郎。
理想と技術から生まれたダイバーズウォッチ
ダイバーズウォッチは、今年も多くの新作が発表された。その中でも「Ushio 300 Diver」は、着用感に優れたコンパクトなケースサイズを実現したのも大きな話題となった。
「腕時計の理想とは何か?という議論からこのモデルは生まれました。そのひとつが、ケース径が40.8㎜、厚みが12.9㎜というケースサイズです。やはり着用して使うものとして考えると、小さくて薄いケースは大きな強みとなる。ダイバーズウォッチは防水性能が重要なので、大きく厚くなりがちですが、日常生活の中での取り回しも考えると、サイズのコンパクトさは重要な進化であると考えました。
グランドセイコーが追求するのは、バランスの良さ。耐久性や精度に優れ、使い心地がいいのが理想です。そう考えた時にダイバーズウォッチだからといって、サイズを妥協していいわけではない。やはり着用感や使い勝手を意識したサイズを目指すべきですし、小径化しても300m防水へとスペックアップしています。もちろんそのためにブラッシュアップした部分はたくさんあります。例えば小径化するとダイヤルの面積が小さくなるので、カレンダーをあえてつけていません」
もちろんサイズが小さくなったとしても、“道具”としての迫力や所有する喜びを満たすケースの造形や磨きにもこだわっており、その点でも高く評価されていた。
美しい表現もグランドセイコーの強みとなる
さらにグランドセイコーらしい型打ちダイヤルに対する評価も高まっているそう。スイスやドイツの時計ブランドの場合は、ギヨシェ彫りに代表される精密な幾何学模様の表現が一般的だ。しかしグランドセイコーの繊細かつ抒情的な表現は、確実に評価を得ており、「Ushio 300 Diver」では日本列島の周囲を流れる激しく力強い潮流を表現している。
「過去にも桜の花びらが水面を覆いつくす風景を表現した花筏(はないかだ)が、アメリカ市場でCherry blossomsの愛称で人気を得ました。日本の情景や自然に対する考え方への、理解度が上がってると感じます。今回の潮ダイヤルについても、会場内に展示を設けています。こういったグランドセイコー独自の繊細なダイヤル表現については、ゆっくり浸透させていきたいですね。結局どの文化圏であっても、美の感性はそれほど変わらないはず。先入観無しでこの表現が認めてもらえる時代になりつつあるという実感しています」
グランドセイコーは日本の腕時計ブランドであり、スイスを中心とした高級時計の世界では異色の存在である。しかしいいものを作ろうという精神に、国は関係ない。海外の市場に合わせてローカライズするのではなく、信念をそのまま世界に届けることができるのがウォッチズ アンド ワンダーズというイベントであり、確実にその挑戦は実を結んでいる。時計や展示を興味深く見つめる人々の表情を見ていれば、その結実ぶりがわかるというものだ。
セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー)
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