なぜ石を飾るのか? 二村毅さんが愛する石たちの話
宝石のような価値もなければ、神秘的なパワーもない、ごく普通の石…。それでも眺め、触れると愛おしい。なぜ石に魅せられてしまうのか。スタイリストの二村毅さんに、その魅力を聞いた。

なぜ石を飾るのか? 二村毅さんが愛する石たちの話
宝石のような価値もなければ、神秘的なパワーもない、ごく普通の石…。それでも眺め、触れると愛おしい。なぜ石に魅せられてしまうのか。スタイリストの二村毅さんに、その魅力を聞いた。
僕が好きな芸術家は
みんな石が好きだった
スタイリストの二村毅さんが石に興味をもつようになったきっかけは、映画監督だったデレク・ジャーマンの庭との出会いだった。
「家を建てたときに庭にちょっとしたスペースができたので、そこに植物を植えようとガーデニングにハマった時期があったんです。そのときにデレク・ジャーマンの庭の写真集を見て、石と植物のコンビネーションでつくられた広大な光景に衝撃を受けました」
そこから石について調べる中で、ジョージア・オキーフやドナルド・ジャッドなどの芸術家たちも、石を拾って家に飾っていたことを知り、さらなる深みに。
「最初はガーデニングを通しての石への興味だったけど、オキーフにジャッド、マルセル・ブロイヤーからはインテリアとしての石のあり方といった部分で影響を受けました。彼らの自邸の写真を見ると、そのへんに落ちている石を拾ってきて、部屋に持ち込んで飾っている。自分のフィルターを通して、石ってこんなに面白くなるんだってことにすごくリアリティを感じて、自分でも自宅に置くようになったんです」
二村さんが石を飾る際に気をつけているのは、置きすぎないこと。
「オキーフの家みたいに広い空間なら、たくさん石を並べてもおしゃれだけど、日本の住空間だとさりげなく置かれているくらいがいいと思う。僕もそこは意識して置いています」

二村さんが影響を受けたジョージア・オキーフの自邸。窓際には石をはじめ、貝殻や動物の骨など、オキーフが拾い集めてきたものが並べられている。

デレク・ジャーマンが晩年につくり上げた庭。英国東南部のダンジェネスという海辺の町にある、漁師小屋だったものを買い上げた。庭にはポピーやラベンダーなどの草花が植えられ、貝殻や流木、鉄くずなどのオブジェが置かれている。

二村さんの自宅では、拾ってきた石を窓際に飾ってある。横にある木の器は、高知県四万十市の木工作家、荒井智哉さんの作品。

シズ・デザインの石(左端の奥)や、ヨーガンレールの石(左から三つ目の白い小さな石)など、購入したものも。金に光る卵形のオブジェは、カール・オーボックのペーパーウェイト。

根室で拾った石は、箱根の寄せ木細工で作られたリンゴ形の小物入れと並べてトーンを揃えた。木製のクルマの模型は二村さんのお子さんが自作したもの。

庭には、小田原で拾ってきた色とりどりの石が。「雨上がりの光り方がまたいいんだよね」。

二村さんがかつてディレクションを手がけていた08bookの立ち上げ時の写真。庭を望む窓辺には、ラスベガスから取り寄せた稀少なインドの石、シバリンガムが置かれていた。「庭の黒い小石と室内をゆるやかにつなぐことを意識して置きました」。

米国の写真家、アーロン・シスキンドによる石の写真。壁や地面のほか、さまざまなオブジェを被写体とする作品で知られる。「このオリジナルプリントが欲しい。そのために頑張って働いているくらい(笑)」。

ニューヨークのフォート・ティルデンというビーチで拾った石。オーラリーの直営店がオープンする際にディスプレイされ、現在も店内に飾られている。
Tsuyoshi Nimura
スタイリスト。ファッション雑誌や広告、俳優、ミュージシャンなどのスタイリングからショップのディレクションまで、その活動は多岐にわたる。
石にハマる男たちの話。