ご回答いただいたのはこちらの3人

●福永涼子さん(FPオフィス「あしたば」所属)
●安藤宏和さん(FPオフィス「あしたば」所属)
●平原直樹さん(「ブロードマインド」所属)


Q1

老後の生活にはいくら必要でしょうか?

出典:FPオフィス「あしたば」お金の基礎知識〜



「いわゆる “老後2000万円問題” は2017年時点で夫65歳・妻60歳の2人世帯が年金受給額のほかに必要とする平均値の話なので、これから老後を迎える30代〜40代には当てはまらない試算です。そこで、年齢や地域、現役時の収入などから私たちが独自に計算した老後資金の目安が上の数字です。退職金も含めて、リタイア時に2人世帯で3000万円程度というのが一つの目安になります。独身であれば、2人世帯の7〜8割と考えましょう。今後、年金水準は下がることが公表されていますし、たとえ受給額自体が変わらなくても物価が上昇すれば価値としては目減りします。現役時代の年収が高い人ほど、老後の支出も多いというデータもあります。ですが、今のうちから逆算してためていけば、けっして不可能な額ではありません。また、リタイア後もペースを落とした働き方で収入を得られれば、そのぶん年金生活の期間が短くなるので、備えるべき額も抑えることができます」(福永)

出典:LIFULL介護


Q2

定年後再雇用制度を活用する場合、年金支給を開始するベストタイミングは?

「例えば年収約700万円で、退職後に再雇用制度を活用して60〜65歳まで年収350万円で働いた場合。厚生年金に追加で5年加入することで、65歳から受給する老齢福祉年金の増額が期待できます。60歳から受給するケースと比べて、支給額は年間10万円の増額になることも。その額が生涯にわたって支給されます。公的年金の繰り下げも検討するといいでしょう。1カ月繰り下げるごとに年金額が0.7%増える計算で、5年間で合計42%もアップします。また、国民年金は20歳から60歳までの最大40年分を支払いますが、20歳から大学卒業時点までの支払いをしていない人が多い。未払いの2年分を後から補塡するだけでも、年間約4万円の増額が見込めます」(安藤)


Q3

掛け捨てと積み立て、保険は最終的にどちらが得?

「例えば1000万円の保障がついた死亡保険を掛け捨てと積み立てで比較すると、保険料は掛け捨てのほうが安くなります。積み立てとの差額を投資運用に回すなら、掛け捨てもアリだと思いますが、保険料の安さだけで掛け捨てを選んで差額を浪費しているケースもかなり多いので要注意。ためるのが苦手な人は、積み立てにすることで無理なく貯蓄できます。積み立ては満期保険金や解約返戻金、健康還付金といった形で満期や更新時、中途解約時にお金が戻ってくるタイプと、満期という概念のない終身保険があります。一生涯にわたって保障が続く終身保険は、必ず給付を受けられるので家族にお金を残せます。少額でもいいので、一つは加入することをおすすめします。たとえ独身の方でも、死後の葬儀や整理に必要な最低限の費用を残すことを考えると、加入して損はありません」(平原)


Q4

保険が身の丈に合っているか不安。自分に合った保険とは? 現在独身。入っておくべき保険とは?

「民間の医療保険は、公的な保険証や高額療養費制度などで賄えない部分をフォローするもの。日本人は保険に入りすぎている人が多いのが現実です。勤め先によっては公的な保険をカバーするものがあったり、高額療養費とは別に一部払い戻しが受けられたりします。例えば、公務員には医療費の窓口負担が月2万5000円を超えると差額が戻ってくる一部負担金払戻金という制度があります。すでに手厚い制度があるなら、個人の医療保険にそれほどかける必要はありません。そのぶんを投資や貯蓄に回しましょう。詳しい保障内容は、保険証発行元のホームページや勤務先の総務といった管理部署で確認できます。一方でフリーランスや自営業など保障がない人は手厚い保険に加入しておきましょう。そして、独身の方が入るべきは終身保険、がんや三大疾病などが対象となる医療保険、介護保険。最近では、理由を問わず働けなくなった場合(失業を除く)の生活費をサポートする就業不能保険もあります。保険をコスパで考える人も増えていますが、例えばがん保険は30代から入れば支払い額より給付額のほうが多く、男性の場合は2人に1人ががんにかかるという統計もあるので無駄にはなりません。介護保険においては、若くして介護対象となるケースは少ないので、投資で蓄えをつくって備えてもいいですね」(平原)

出典:(公社)全日本病院協会 診療アウトカム評価事業「医療費(2019年度年間集計 重症度別)」※当該費用は医療費の総額で、窓口負担は保険等の適用により原則3割(負担割合は所得、年齢により異なる)。また、高額療養費制度などにより自己負担額が軽減される場合がある。


Q5

保険を見直すタイミング、見直す際のポイントは?

「原理原則は上記のとおりですが…そもそも、自分が加入している保険の中身を知っていますか? 実はほとんどの方が理解していません。そうなると、今の状態に合っているかどうか怪しいので、保障内容を今すぐチェックしたほうがいいと思います。保険は何かあったときの備え。どういうライフプランを考えているかによって大きく変わってくるので、保険選びはライフプランニングとセットで行いましょう。プロと一緒にシミュレーションを行うことをおすすめします」(平原)


Q6

親は健在ですが、相続でもめ事が起きるのは嫌。今からできる相続対策は?
親の相続の際、財産分与でもめるケースはどんなものが多い?

「資産の多寡にかかわらず、どんな家庭でもささいなことが火種になるので、親族間で話をしたり、冗談交じりでも公平感のある分配などについてコミュニケーションをとっておくことが大事です。そして、親に遺言書を作って残してもらうともめ事のリスクをかなり減らせます。公正証書遺言として公証人に文書を作成してもらうのが一般的ですが、自筆の遺言を法務省で保管してくれる制度も始まりました。親が70歳を迎える前後にはきちんとした形で残してもらうようにしましょう」(安藤)

「いちばんもめる事例として多いのは、現金は少ないけれど家だけが残っているケース。また統計上明らかですが、必ずしも大金でなく数百万円の現金をどう分配するかでもめるケースも多い。親は『うちの子どもたちは仲がいいから心配ない』と言いますが、子の配偶者が口を挟むケースが多いんです」(平原)


Q7

親が亡くなった際にかかる費用がまったく想像できません

「規模や形式にもよりますが、葬儀代は一般的に200万円あれば足りるといわれています。親名義の銀行口座からすぐにお金を引き出すことはできませんし、親が生命保険に加入していても受給手続きが必要なので、どうするかを考える必要があります。緊急時のお金として確保しておくのもいいですね。誰もが避けては通れないテーマなので、年齢的にも親御さんと話しておくべきタイミングだと思います」(福永)

出典:(公財)生命保険文化センター「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」


どんなときにファイナンシャルプランナーに相談したらいい?

●自分が入っている保険の中身がわからない
●現在の貯蓄額が適正かわからない
●マイホーム購入の際、自身に見合った物件の適正価格がわからない

「基本はどんな相談もOKですが、特に上の3つは一人でゼロから考えるのではなく、プロに相談してほしいですね」(平原)

「相談される方の職業や収入、資産、家族構成、キャリアプランなど、わかる範囲で構いませんので基本的な情報を準備してもらえると具体的なお話を進めやすくなります」(安藤)



Interview&Text:Miyuki Kokubu
Illustrations:Yutaka Nakane