ファッションの現場で働くおしゃれな大人たちが、私的愛用品をレビュー。今回は「BODHI(ボーディ)」デザイナーの水谷倫さんが愛用するARC'TERYX(アークテリクス)の「ベータ SV ジャケット」。約3年前、内モンゴルへの出張をきっかけに購入した一着は、緻密な立体裁断による動きやすさも気に入っている。
「BODHI(ボーディ)」デザイナー。カシミヤを中心とした上質な天然素材にこだわり、素材本来の魅力を生かしたものづくりを手がける。服だけでなく、靴やアクセサリーにも独自の審美眼を持ち、ワークやアメカジをベースに、モードなアイテムを取り入れたスタイルを好む。
内モンゴル出張に備えて選んだ、黒いシェル
「カシミヤの仕事で内モンゴルに行くことになったとき、現地の天候に対応できるアウターが必要だったんです。気温の変化が激しく、天候も読みにくい場所なので、雨風を防げて、持ち運びもしやすいものを探していました。最初からアークテリクスに決めていたわけではなく、パタゴニアやザ・ノース・フェイスなども見比べました」
「重視したのは、普段の服装にも合わせられること。アウトドアウェアは鮮やかな色やロゴが目立つものも多いですけど、僕はなるべく主張が控えめなものがよかったんです。
当時のアークテリクスは黒の選択肢が多くて、このモデルも落ち着いたブラック。日常着の延長で着られると思ったんですよね」
立体裁断のすごさは、着て動くとわかる
「アークテリクスはパターンの作り方が本当によく考えられているんです。脇から肩にかけて逆三角形にパネルを取ることで、腕を動かしやすくしている。肩甲骨のところでパーツを分けたり、脇下に縫い目がこないようにしたり。リュックを背負ったときの負荷まで考えられているんですよ」
「僕は昔、スキーをずっとやっていたんです。スピードではなく、いかに正確で美しいフォームで滑れるかを競うもので、体幹を安定させながら足だけを素早く切り返したりします。だから、ウェアの可動域やレイヤリングの大切さは身に染みているんですよね。
ストレッチ性がなくても、立体裁断によって動きやすくできる。しかもシルエットもきれいに見える。ものづくりに携わる立場としても、よくできているなと思います」
ハイテクなシェルには、天然素材のパンツを合わせる
「僕が街でアウトドアウェアを着るときに決めているのは、上下ともアウトドアテイストにしないこと。上にハイテクなシェルを着るなら、下はデニムやチノパン、ウールスラックスなどの天然素材を合わせます。中に着るものも、カシミヤのニットだったり。ハイテクとローテクのバランスを取るのが好きなんです。
雪山で見るカラフルなウェアの格好よさもわかるんですけど、それをそのまま街に持ってくると、急に山から下りてきた人みたいになっちゃう(笑)。だから街で着るなら、こういう黒いシェルがちょうどいいんです」
「出張はもちろん、普段も雨の日や公園に行くときに着ています。風を通さないし、リュックの隅に入れておけば何かあっても安心できるんです。
汚れたら濡れたタオルで拭いて陰干しして、撥水性が気になったらスプレーでメンテナンスしています。3年ほど着ていますけど、今のところシームテープの剥がれもありません。あのとき、妥協せずに選んでおいてよかったと思います」