2019.08.18

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.02 VALENTINOのタキシードスーツ|2014年5月号掲載

VALENTINOは最近僕が気に入っているブランドの一つ。パリコレで長らくクラシックなメンズ・クロージングと豪華なドレスを発表してきたこの老舗ブランドは、今、新時代の領域に足を踏み入れた。

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VALENTINOというブランド名は、物心ついた頃から知ってはいた。でも、スタイリストになって、ミラノやパリのコレクションを見にいくようになった25年前には、なんだかヴァレンティノ・ガラヴァーニは遠い昔の人のように思えた。ショーのステージや雑誌、テレビに出てくる彼を見ても、「本当に今、生きている人なのだろうか」と思った。それほどまでに“That’s Italian ’60s”な、崇高なオーラを放つ人だった。



生ける伝説といえば、カール・ラガーフェルド、ジョルジオ・アルマーニ、ラルフ・ローレンなど枚挙にいとまがないが、僕にとってはヴァレンティノ・ガラヴァーニが「マイ・ベスト・オブ・生ける伝説」である。だって本人が常にラグジュアリーなムード全開で、誰に迎合するでもない凜とした佇まい。でもその裏には若干の狂気を感じさせるミステリアスな何かがあったから。



たとえて言うならマフィアのゴッド・オーラのような…。引退して自分の椅子を後任に譲る際のサッパリとした引き際も格好がよかった。彼が現役だった頃、一度くらいはバックステージで取材させていただきたかったと悔やまれる。



そんな彼のDNAを継承したデザイナーたちのクリエイションに、ここ3シーズンほど注目している。ヴァレンティノ・ガラヴァーニの引退後は何名かのデザイナーの入れ替わりがあったが、今、VALENTINOを背負っているのはマリア・グラツィア・キウリとピエールパオロ・ピッチョーリの二人。この男女二人組がつくり出すコレクションが素晴らしい。中でも僕は、イブニングクローズに魅せられている。



今回イラストになっているジャケットとパンツは、素材がシルクウール。見た瞬間に衝動が走り、この1月にオープンしたばかりのパリのブティックで購入した。素材の張り感と、控えめな光沢が美しい。そしてその見事なディープブルーの色にも強く惹きつけられた。



ディープブルーのタキシードは、ここ数年来、マイ・スタンダードになっている。3年前、ロンドンのティモシー・エヴェレストでビスポークして以来、僕のタキシードはディープブルーに決定したのだ。「一見ブラックに見えるブルーがしゃれている」というティモシーの言葉は僕の心にグサリと刺さった。



もしかしたら、このVALENTINOの上下は「一見ブラック」には見えず、最初からブルーに見えるかもしれないが、ディープブルーであることに変わりはない。そういえば、ヴァレンティノ・ガラヴァーニも常にタキシードやシャイニーなジャケットを着ていたような気がする。



下の写真の白いTシャツもまたVALENTINOである。イブニングには襟がなければダメだと、長い間シャツを合わせていたが、VALENTINOのショップの試着室でこのTシャツをストールとジャケットに合わせてみたら、意外な組み合わせにしびれた。



イラストの僕は、トム フォードのシャツをノータイで合わせているが、暖かくなったらこのTシャツをインナーにしてストールを合わせ、パーティや夜の会食へ繰り出す予定。写真のTシャツはセットイン・スリーブだが、ほかにキモノショルダー(ラグラン)もあり、そちらも購入ずみ。素材はどちらもシルクで控えめな光沢が味わい深い。



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(左)イラストで着ているVALENTINOのジャケットとストール。僕はサイズ46だが、袖を少し短くサイズ直しして着ている。 (中)白いTシャツはシルク。毎回ドライクリーニングに出さないといけないのはやっかいだけど、まあ、おしゃれってそういうもんですよね。 (右)先月に続いてTHOM BROWNEのサングラス。これもディープブルーのカラーに惚れました。


Text:Tomoki Sukezane 
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa

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