『友達だった人 絹田みや作品集』
静かに心に寄り添う4つの物語を
収録した珠玉のデビュー作
絹田みや。初めて知るマンガ家の、初めて読んだ作品集です。ペンネームは《下から読んだら「やみたぬき(闇狸)」になるところも気に入ってます》と、あとがきに書かれていました。
表題作「友達だった人」を含め、4つの短編が収録されています。奥付の「初出」のところには、《自主制作》《自主制作》《自主制作》《描き下ろし》という言葉が並んでおり、異色です。通常は最初に掲載された雑誌名がここに書かれているので。つまり、評判を呼んだ自主制作のマンガに、描き下ろしを加えての商業出版……満を持してのデビュー作……ということなのでしょう。
とりわけ表題作の、現代にしか描かれなかったであろう物語に心ひかれました。
《言葉の中に別の言葉を見つける遊び》ってわかりますか。Twitter改めXで今も日々だれかがやっている遊びで、例えば評者は先日《無味乾燥の「みかん」の部分》というのを発見したのですが、それをXでサーチしてみたところ、すでに同じことをつぶやいている人が5名いました。
このマンガのヒロインは、《カオマンガイのマンガの部分》など、こういう「部分」をつぶやく遊びを通じて、顔も知らない女性と交流を重ねていました。が、そのかたが病気で亡くなってしまい、お葬式に行くことになります。当初は故人との関係性をどう捉えたらいいのか戸惑いますが、葬儀での一連の出来事を経て、自分はたしかに彼女の「友達」だったのだ……という認識に至るのです。
この一編のあらすじはこれで全部なので、ネタバレになってしまってごめんなさい。けれども、この作品の魅力はあらすじだけではないので、ぜひ部分部分を実際に読んで味わってみてください。
インターネットがなかった時代の人に読んでもらったら、そもそもの前提からして意味がわからないかもしれないし、もっと未来の人が読んだら、また別の意味で不思議さを感じる作品かもしれません。
どの短編もささやかな話といえば、そうなのですが、表現の「ほど」が絶妙によくて感服します。例えば2本目の「3人いる」は、自分が複数いてくれたら楽なのに……という、だれもが一度は考えるだろう妄想が実現する話。似た設定の『ママが10にん!?』(天野慶・文、はまのゆか・絵、ほるぷ出版)という絵本も面白かったですが、設定が近くてもここまで読後感がちがうものかと驚きました。
小声だからこそ耳をかたむけたくなる、信頼できる友達のような一冊です。
『友達だった人 絹田みや作品集』
絹田みや/光文社
同人作家として発表した3作に描き下ろしを加えた著者のデビュー作となる単行本。決して派手ではないが静かに心を動かすストーリーに注目。
歌人。『毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである 枡野浩一全短歌集』(現在11刷)、漫画紹介本『漫画嫌い』(絶版)など、著書多数。タイタン所属。