藤原ヒロシによる架空の大学プログラム「FRAGMENT UNIVERSITY」の第2期が開講。AIの進化をはじめ、社会の価値観が大きく変容するこの時代に、藤原ヒロシ自身が「いま学びたいこと」を起点にした「一般教養リベラルアーツ」を全9回にわたって実施。9月1日(火)より公式サイトにて生徒募集がスタートした。
2023年に開講された第1期のテーマは「非言語マーケティング」。これまで明かされなかった藤原ヒロシのアイデアの育て方やコミュニケーションスタイル、仕事術などを学術的に体系化した全8回のシラバスから、学生たちは何を学んだのか、3名の卒業生にインタビューした。第3回は、映画プロデューサーの山田兼司さん。
大卒でテレビ朝日に入社した後に東宝へ移籍、ドラマや映画のプロデューサーを務め、現在は独立しTyken Inc.のCEOとして活動する山田兼司さん。講義が行われた2023年には『怪物』や『ゴジラ-1.0』など、世界が注目する作品を手掛けていた山田さんにとって、藤原ヒロシは青春の象徴であり、実像の見えない都市伝説のような存在だったという。プロデューサーとしての知的好奇心からFRAGMENT UNIVERSITYを受講し、卒業後にはともに仕事をすることに。
「僕は1979年生まれなので、学生の頃はまさにヒロシさんの影響を強く受けた世代です。当時は雑誌の影響力も大きく、憧れていたストリートファッションの中心には、いつもヒロシさんがいました。いろいろなブランドと、それまで誰もやっていなかった方法で新しいものを作っていく。その影響力やセンスがどこで生まれているのか、まったく裏側が見えない人でした。ちょっと都市伝説のようだと思っていたくらいです。
僕はもともとテレビ局の報道ディレクターからキャリアをスタートし、その後にフィクションの世界に移ってから20年以上、映画やドラマのプロデュースをしています。だから10代の頃から影響を受けてきた藤原ヒロシという存在に、どんなナラティブがあるのか、その人物像はどうやって成り立っているのか。その人物像をもっと探究してみたくてFRAGMENT UNIVERSITYを受講しました。
講義を受けて面白かったのは、『非言語マーケティング』というタイトルそのものでした。ヒロシさんがひとつひとつのプロジェクトについて、何を考え、どう作ってきたのか、言葉を尽くして説明してくれました。どのエピソードにも細かな気づきがありましたが、『これが藤原ヒロシの方法論だ』とすべてを言葉で解決してしまうと、何かスルッと抜け落ちていく感じもするんです。
だから、一面的には表現できないこともわかりました。それ自体が僕にとっては面白い発見だった。あえて自分なりに解釈するなら、ヒロシさんは世界や物事の見方、そこにある価値を、自分にしかないセンスでハックしてきた人だと思います。
印象に残っているのは、世界の情報をどう編集するか、という話です。ひとつの事象でも、とらえ方によって見え方は大きく変わる。僕たちが当たり前だと思っているものを、違う目線で見ることが自然にできる人ですよね。それは僕がやっている仕事にも、すごく近いところがあります。優れたドラマや映画とは、単純な起承転結だけで構成されているわけではありません。衣装や美術、描写ひとつにも意味やメタファーがあって、さまざまな要素がミルフィーユのように重層的に織り込まれている。そういう作品を作るためには、作り手自身が世界を豊かに見ていなければいけません。
ヒロシさんも、ファッションブランドやメディアとのコラボレーションの中にいろいろなコンセプトを張り巡らせている。ブランドがもともと持っている価値観を読み取って、それをひっくり返したり、関係のない別の何かと掛け合わせたりする。その仕掛けをヒロシさん固有のセンスで自然にやっているからこそ、世界に影響を与えてきたのだと納得しました。
FRAGMENT UNIVERSITYを受講して、自分の仕事のやり方が大きく変わったかとかそういう話ではなく、長いこと自分でも気づいていなかった知的好奇心を満たしてもらったというような感覚が大きいです。細かいティップスをたくさんもらえたし、自分が仕事でやってきたことの答え合わせというか、『そういうことだったんだ』と腑に落ちることがたくさんありました。
僕がこの講義を通じて、教授と生徒という関係でご挨拶する機会がありました。映画のプロデュースをしていると話したら『今度お茶でもしましょう』と誘っていただき、その時に相談されたのがNIKEのムービーのプロジェクトです。
実際に仕事をしてみて驚いたのは、ヒロシさんのスピード感です。最初にアイデアの種をもらって、僕が具体的なストーリーを2、3パターン提案したのですが、ジャッジがとにかく速い。そして自分が面白いと思う感覚に対する意思決定が、プロジェクトを通じてほとんどぶれない。映画や広告の業界は、関わる人数がとても多いので、いろいろな意図や事情が入って話が複雑になりがちです。でもヒロシさんの仕事はコンセプトの根っこが最後まで変わらない。だからクリエイティブが空気のようにナチュラルに進んでいく。もちろんNIKEの仕事も広告的ではありますが『藤原ヒロシとのプロジェクトってこういうことなんだ』と体感できました。講義で謎解きをしていた方と実際に仕事をして、その方法論を現場で見ることができたのは、とてもいい経験でした。
FRAGMENT UNIVERSITYは、ヒロシさんが世界をどう見て発想し、それを実際に生み出してきたのか、他の人が成し遂げていないことの舞台裏を臨場感をもって知ることができる、とても貴重な場所でした。世界の見方やとらえ方という方法論に触れることで、凝り固まっていた脳が少し柔らかくなる感覚というか、脳の可塑性を感じました。見ていた世界がパラダイムシフトするような刺激がありました。性別や年齢に関係なく、いろいろな人に体感してほしい講義です」