多岐にわたる創作と生活のリアルに迫ったドキュメンタリー映画『TRUE KYOHEI SAKAGUCHI SHOW 坂口恭平生活』が全国で順次公開中。作中で深い鬱を経て自身の「さびしさ」に向き合って得た、不安を手放すための哲学に迫る。
自分で自分に気配りし、なるべく不安から離れる
文章を書き、絵を描き、音楽を奏で、自身の携帯番号を公開して希死念慮をもつ人々の声を聞き続ける。そんな圧倒されるほどの生の姿に対峙した本作品からは、レンズを通した小宮雄貴監督の戸惑いや揺れも浮かぶ。鑑賞者はそれに共感しつつも、自分なりの生のありようについて思いを馳せずにいられない。「TRUE」であり「SHOW」でもあるこのドキュメンタリー映画はそんな作品だ。その中で語られるのが、自己へ配慮するということ。
「みんな何かやらなきゃいけないって無意識に思っているけど、インプットって『不完全な自分に新しい知識を入れること』じゃない。本当のインプットは『あなたは完璧だから安心して温かいお茶でも飲みなさい。何もしたくないならしなくていいよ』って、自分自身に声をかけることだと思うんです。そしてそれに気づいたきっかけは、鬱を通して自分自身のさびしさに向き合えたことでした」
他者のために動く前に、徹底的に自分自身を救う。躁鬱の当事者でもある彼は「鬱」という状態を通しながらも、それを実践する。
「鬱って自分と向き合って、徹底的に掘り下げていく強い力。だから仕事がうまくいっている人ほど、鬱を研究してみたらいいと思う。さびしがる自分に自ら声をかけて、自分で自分に気を配る。それをすることで、周辺の人もまた助かっていく。今はみんなが、自分自身の救い方を覚える必要があるんです」
不安を煽り消費を促す社会の中で、自らの手で「不安じゃない状態」を構築する。その実践は、作中で描かれる彼自身のファッションや暮らしのディテールにも直結している。
「服は友達のデザイナーが作った服を着ることが多いし、アトリエの家具や家族の食事、使っているノートも自分で作っています。微妙に揺れ動いていて、どこで買えるかわからないようなものが好き。おしゃれなものも大好きだけど、それって行きすぎるとみんな同じになるよね。UOMOも半分くらい『服の作り方』のページにしちゃえばいいのに(笑)。 自分で作れるほうが、絶対に面白いですよ」
1978年熊本県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業後、作家、画家、音楽家、建築家など幅広く活動を行う。『0円ハウス』『独立国家のつくりかた』『生きのびるための事務』など著書多数。