9月25日より公開される長編アニメーション映画『我々は宇宙人』。29歳の新たな才能・門脇康平が企画・脚本・監督を務めた本作は、第79回カンヌ国際映画祭監督週間に正式出品されるなど、アニメファンのみならず世界中から注目を集めている。主人公二人の声を演じた坂東龍汰と岡山天音にインタビュー。
これは絶対に参加したい
――本編はすべて手描きで制作され、質感のディテールだったり、動きのリアリティだったり、門脇康平監督のものすごい熱量が込められた作品です。最初にオファーがあったとき、どんなことを思いましたか?
坂東 お話をいただいたとき、映像も観させていただいたんです。
岡山 橋の下の川で二人が出会うところの場面ね。
坂東 そう。それを観て、まず絵がめちゃくちゃきれいだなと思いました。
岡山 僕はアニメが好きでいろいろ観ていたりするんですけど、見たことのない絵だなと思いました。数十秒くらいの短い映像なのに、監督のとんでもない気迫みたいなものを感じて、「これは絶対に参加したい」ってなりました。
坂東 うん。リアルなタッチで、空気の熱まで描かれている感じで、脚本で読ませていただいた物語がこうやって表現されていくんだと思ったら、すごくわくわくしたし、何か起きそうだなという予感をすごく感じましたね。
――坂東さんは内気で普通の青年・翼を、岡山さんは人気者で特別な存在・暁太郎を演じています。どのように役を捉えていったのですか?
坂東 気になるわ、天音くんの役づくり。
岡山 役づくりというか、僕ら二人はわりと体格は近いけど、暁太郎と翼は体格差があるから、監督にキャラクターのイメージとか声のニュアンスを伝えていただいて、自分の持っている引き出しの中から何とかそれに近いものを探していきました。やっぱり監督がどういうイメージを持っているかという部分が大きかったので、一人で事前に準備するというよりも、現場で監督とコミュニケーションを取りながらつくり上げていった感じでしたね。
坂東 僕も天音くんと同じで、監督の中で欲しい翼の声がはっきりイメージされているんだろうなと思っていたから、事前にこういう感じかなというのは用意したうえで、現場で監督と擦り合わせていきました。監督のイメージが明確だったので、掴みやすかったのですが、実際に演じるのはけっこう難しかったですね。普通って何だろうとか。
――声だけで演じるのは、普段のお芝居とはやっぱり違うものですか?
岡山 もちろん、つながっている部分はあります。でも、奥の本質的なところではつながっているかもしれないです。普段のお芝居ではやらない技術もあったりして、違う層が形成されているなってことは感じます。まだ全然やってないから、ちゃんとはわからないですけど。
坂東 僕も声の仕事はまだ4本ぐらいかな。でも、違うアウトプットができるというのはシンプルに楽しいです。顔とか全部映るのって何か怖くない?
岡山 面白いね、その感覚。俺はあんまりないかも。
――顔が映ることが怖いというのは初めて聞きました。
坂東 怖いですよ。一生残るし、誰が観るかもわからないじゃないですか。それで評価されるんですよ。いろいろなキャラクターを演じられるし、お芝居している瞬間は楽しいんですけど、そういうことをいろいろ考えちゃうんです。ちゃんと自分は責任を持ってできているのかとか。
岡山 真面目だねえ。
何日も引きずることだってある
――収録現場ではお互いのお芝居を見ていたと思うのですが、すごいなって思う場面はありましたか?
坂東 いや、もうそれの連続です。暁太郎がつくり上げられていく過程を間近に見てましたが、これでいいじゃなくて、もっとこうなるといいという感じで、監督と二人で丁寧に積み上げていくんですよ。すげえって思いました。
岡山 すごい素敵でしたよ。翼だなって思いました。そこにいるのが感じられましたね。たぶん観てくださった方もそう思うんじゃないでしょうか。
――お芝居について意見を交わすようなことはあったんですか?
岡山 いや、ないですよ。「こうしちゃったけど、どう?」みたいなことですよね?
――そうです。「こういうことやりたいけど、いい?」とか。
岡山 そういうのはないですね。各々の芝居観ってすごくセンシティブなものだと思うから、基本的にお互いがお互いを尊重するというか、そこに踏み込むということはないかな。
坂東 二人に対して監督が宿題をくれた場合は、一緒に話し合って共同でその問題をクリアすることはあるかもしれないですけど、基本的にはないですよね。ただ、舞台のときはずっと一緒に稽古をすることもあって、けっこう話すかもしれない。話をすることで見える景色が全然違ったりするんですよ。自分一人では気づけなかったことがあったりして。
――では、自分のお芝居に対して、よかったと思える瞬間ってどんなときですか?
坂東 そんな瞬間あるのかな。終わった直後って反省のほうが多い気がします。もっとやれたかもと思ったり、何日も引きずることだってあります。
岡山 引きずることはあるね。でも、もうちょっとやれたなとかはあんまり思わないかも。そのときの自分にはそれしかできなかったわけだから、もうちょっとできると思うんだったら、そのためにもっと力をつけようって思うかな。
坂東 結局、どれだけ準備が大事かってことなんですけど、固めすぎちゃうとたんに準備したことをなぞるだけになってしまうし、バランスが難しいですよね。
もしもの世界は想像しない
――『我々は宇宙人』の翼と暁太郎は、とある出来事をきっかけに決定的に人生が変わっていきます。お二人は、これまでの人生を振り返って、「あのときこうしていれば…」と思ったりすることはありますか?
岡山 いや、僕、マジでないですね。もちろん、そのときどきで選択はしています。右か左かを選ぶときに右を選んで、今ここにいるとしたらそのときの自分は右を選ぶというセンスだったってことなんですよね。「左もあったな」と思うのかもしれないですけど、そのときの自分は右としか思えなかったわけだから、左を選んだ人生はなかったって思うんです。
――もしもの世界は想像したりしないんですか?
岡山 あんまりしないですね。
坂東 僕もしない。してもしょうがないというか。今が完璧だと思っているわけじゃないですけど、これまでいろいろなトライ&エラーがあって、それがなかったら今はないかもしれないわけで。あり得なかった世界について考えるより、今変えられることに向き合ったほうが建設的な感じがします。
――この先の未来についてはどう考えていますか?
坂東 「ここまでにこうしたい」とか、具体的に何かを思い描いていたりはしないですね。プランを立てているわけではないけど、言霊みたいなのは信じています。
――だとしたら、やってみたいことは何かありますか?
坂東 そうですねえ。天音くんと一緒にお芝居をやりたいかな。面白い作品でまためぐり合いたいなというのはありますね。まだがっつりとはやったことがないから。
岡山 そうね。
坂東 一方的なファンだから、天音くんの。
岡山 いやいや(笑)。観てますよ、俺も。
――がっつり共演するとして、お互いどんな役がいいですかね?
岡山 弁護士とかは?
坂東 天音くんの弁護士は観たい。めっちゃ似合いそうなのに、今までやったことないんだ?
岡山 ない。それを言ったらやってないものはいっぱいあるよ。車掌さんでしょ。郵便局員でしょ。パイロットもすし職人もやったことない。
坂東 全部やってもらいたいわ(笑)。
――岡山さんが弁護士だったら坂東さんは何役になるんですか?
坂東 被告人。
岡山 1話ゲストやん。
坂東 じゃあ、ライバル弁護士かな。何でもいいから共演したい!
――話はがらっと変わりますが、お二人にとっての息抜きって何ですか?
岡山 何だろう。趣味はたくさんあるんですけど、過集中していたりするときもあって、本当の意味での息抜きになっていなかったりするんですよね。友達と会っていても、何かしら考え事をしていたりするし。何も考えないという意味でいえば、瞑想するしかないのかも。
坂東 瞑想は俺もたまにやる。
岡山 へえ。
坂東 音楽をかけて、座禅して、目をつぶって。集中力がないから、そんな長くはできないけど。
岡山 何分ぐらいやってるの?
坂東 10分くらい。どうしても寝られないなってときにやるかな。
岡山 そうなんだ。すっきりする?
坂東 するよ。でも、普段からめっちゃ寝るほうだから、瞑想してなくても寝たらすっきりするけどね(笑)。
1997年生まれ。北海道出身。2017年に俳優活動をスタートし、18年にドラマ「花へんろ特別編 春子の人形」(NHK)で初主演。26年、映画『爆弾』で第49回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。主な出演作品に、ドラマ「RoOT / ルート」(テレビ東京/24年)、「ライオンの隠れ家」(TBS/24年)、映画『君の忘れ方』(25年)、『未来』(26年)、『黒牢城』(26年)など。公開待機作に『わたしの知らない子どもたち』(26年10月16日公開予定)、『かすかな彼を抱きしめて』(27年1月15日公開予定)がある。
1994年生まれ。東京都出身。2009年、俳優デビュー。26年、第50回エランドール賞、第63回ギャラクシー賞テレビ部門個人賞、第52回放送文化基金賞を受賞。主な出演作品に、ドラマ「ひらやすみ」(NHK/25年)、「冬のなんかさ、春のなんかね」(日本テレビ/26年)、「さよならノワール」(フジテレビ/26年)、映画『笑いのカイブツ』(24年)、『Cloud クラウド』(24年)、『キングダム』シリーズ(22~24、26年)など。
『我々は宇宙人』
9月25日より全国劇場公開
企画・監督・脚本: 門脇康平
出演:坂東龍汰 岡山天音 山﨑天(櫻坂46) 松井ケムリ 槙木悠人 中込佑玖 鈴木咲 末永陽
平成のある田舎町。内気で普通であることに悩む少年・翼は、小学三年生の春、クラスの人気者で特別な存在の暁太郎と出会い、親友になる。二人だけの遊び、意味のない会話、夕暮れの帰り道――世界はたしかに、彼らのものだった。しかし、ある日を境に、暁太郎はクラスの中で浮いた存在となり、噂や視線が彼を囲んでいく。やがて起こる、取り返しのつかない事件。これは二人の青春物語なのか、それとも消したい記憶なのか。30年にわたる友情を描いた、かぎりなく青い旅立ちの物語。
©NOTHING NEW, MIYU PRODUCTIONS
配給:TOHO NEXT・NOTHING NEW