2022.02.28

【おしゃれな大人が乗るクルマ】ちょっとバブアーに似ている「ランドローバー・ディスカバリー V8i S」

ファッションにこだわる人は、どんなクルマに乗っているのだろう? そんな興味から始まった、お洒落な人と愛車を探訪する連載企画。値段で選ぶのか、デザインに惚れたのか、それとも走りにシビれたのか。今回はエディターの仁田恭介さんに、ランドローバー・ディスカバリーⅡと暮らす3年を振り返ってもらった。

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ランドローバー・ディスカバリーは1989年にデビュー。レンジローバーがコンセプトに「リファインメント(洗練さ、上品さ)」を掲げるのに対し、ディスカバリーは「多用途性」を前面に押し出し、ブランド内でのすみ分けを図っている。仁田さんが乗る第2世代のモデルは1998年に登場、2004年まで生産された。

関東で売られている個体にはすべて試乗した

ライターや編集者として、雑誌や広告で活躍する仁田恭介さんがランドローバー・ディスカバリーⅡに乗るようになったのは、3年前に鎌倉に引っ越したことがきっかけだった。

「都心に住んでいる時にはクルマの必要性を感じなかったんですが、鎌倉では必要だし、ボーダーコリーを飼いはじめたこともあって探すようになりました。最初はローバーミニがいいかなと思ったんですけど、ミニだと中型犬を乗せるには窮屈だし、仕事で洋服のリースをすることもあるので、ちょっと大きめのイギリス車に絞り込んだんです」。

こうしてたどり着いたのが、ランドローバー「ディスカバリー」の2世代目。クルマ好きの間では「ディスコⅡ」と呼ばれるモデルで、2003年に実施されたマイナーチェンジを受ける前の前期型だ。

「当時のイギリス本国のカタログや、日本で出版されていた専門誌『ランドローバー・マガジン』などを、片っ端からオークションサイトで買って入念に下調べをしました。自分としては、顔はディスコⅠが好きだけど、機能はオンロード性能が向上したディスコⅡがいい。ディスコⅠはゴリゴリのオフローダーなので、乗り心地がちょっとキツいんですね。そこで、Ⅰの顔とⅡの機能を備えたディスコⅡの前期型、という結論に達したんです」。

ここから仁田さんのディスカバリー探しが始まった。

「当時、関東で売られていたディスコⅡには全部試乗したと思いますね。関西も攻めたし、そうこうするうちに岐阜でこのクルマを見つけました。あぁこれだ、と思って速攻で決めましたね。V8エンジンの調子がいい個体だったし、色も探していたチョウトンホワイト(英国車伝統のオフホワイト)でした。エンジンが大丈夫なら他のところはなんとかなるだろう、と判断したんです」

資料探しといい、試乗の回数といい、やると決めたら徹底的にやる。ちなみに仁田さんのディスコⅡは「V8i S」というグレード。他のグレードはすべてエアサスペンションを備えるが、こちらはシンプルな金属バネのサスペンション。マニアの間では「ディスコⅡのエアサスは、乗り心地はいいけど壊れると厄介」というのが定説になっているから、長く乗ることを考えると、グレードの選択も正解であるように思える。



主治医さえ見つかれば、メンテに不安なし

こうして、仁田さんの鎌倉の自宅にディスコⅡがやって来た。実生活で使ってみた印象はどうだったか。

「鎌倉は狭い道が多いんですが、ボディの見切りがいいので問題ないですね。いわゆるコマンドポジションのおかげでしょうか。ディスコⅡを買ってから、最新のランドローバーにもディーラーで試乗しましたが、見切りがいいことは共通していますね」

コマンドポジションとは、ガラスエリアの面積を広くするのと同時に、目線の高い位置に座ることで広々とした視界を確保する、ランドローバー伝統のシートポジション。70年以上にわたってSUVだけを造り続けてきた同社ならではといえるこだわりだ。

20年選手だけに、お金がかかるのではないかという点が気になるけれど、仁田さんによれば走れなくなるようなトラブルは皆無だという。

「天井の内張りはかなり痛んでいたので、購入時に全部剥がしてきれいにしてもらいました。そこは少し費用がかかりましたけど、あとはきちんとメンテをしてくれるところを探せば、問題ないことがわかったんです。電気系統のトラブルで、とあるガレージで30数万円と言われたんですが、ディスカバリーⅢに乗っている知人に習志野の『ミッドランド』というショップを紹介してもらったら、10万円ちょっとで直りました。パーツも新潟県にあるランドローバーの部品専門店『British 4×4 Parts Service』になんでも揃っているし、今のところ維持するのが大変という感じはしません」



こうして、荷室のゲージにボーダーコリーのケリーちゃんを乗せる鎌倉生活が始まり、もともと好きだったというアウトドアもさらに充実するようになった。冬は、スタッドレスタイヤに履き替えて、雪山登山やスノーボードを楽しむ。仁田さんは、ディスカバリーというクルマのポテンシャルをすべて使い切っている。もともと、洋服や洋品も英国のものが好きだという仁田さんは、「このクルマはちょっとバブアーに似ているんですよね」と話す。

「このクルマは雪道でも水たまりでもがんがん攻められる一方で、きれいに洗車すればまぁまぁのホテルやレストランでも行ける。バブアーも、ハンティングやアウトドアに使ってもいいし、ジャケパンやスーツの上からはおってもいい。使い込むほどに風合いが出る点も共通しているかな、と」

なるほど。ジェームズ・ボンドにも通ずるような、洗練された品格と蛮カラな雰囲気の共存がイギリスっぽさだろうか。

「そうかもしれませんね。そういえばボーダーコリーも同じですよ。牧羊犬としてめちゃくちゃ頭がいいのと同時に、アジリティ大会で結果を残すフィジカルもありますから」

なるほど、“英国らしさ”とは何かが見えてくるような、ちょっと深い取材になったのだった。


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仁田恭介/エディター 1983年生まれ。出版社での編集経験などを経て、2009年にフリーランスとして独立。カルチャー誌、ファッション誌のほか広告でも活躍。自身でスタイリングを手がけることもある。

Photos: Kosuke Tamura
Text: Takeshi Sato

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