ランドローバー・ディスカバリーは1989年にデビュー。レンジローバーがコンセプトに「リファインメント(洗練さ、上品さ)」を掲げるのに対し、ディスカバリーは「多用途性」を前面に押し出し、ブランド内でのすみ分けを図っている。仁田さんが乗る第2世代のモデルは1998年に登場、2004年まで生産された。


関東で売られている個体にはすべて試乗した

ライターや編集者として、雑誌や広告で活躍する仁田恭介さんがランドローバー・ディスカバリーⅡに乗るようになったのは、3年前に鎌倉に引っ越したことがきっかけだった。

「都心に住んでいる時にはクルマの必要性を感じなかったんですが、鎌倉では必要だし、ボーダーコリーを飼いはじめたこともあって探すようになりました。最初はローバーミニがいいかなと思ったんですけど、ミニだと中型犬を乗せるには窮屈だし、仕事で洋服のリースをすることもあるので、ちょっと大きめのイギリス車に絞り込んだんです」。

こうしてたどり着いたのが、ランドローバー「ディスカバリー」の2世代目。クルマ好きの間では「ディスコⅡ」と呼ばれるモデルで、2003年に実施されたマイナーチェンジを受ける前の前期型だ。

「当時のイギリス本国のカタログや、日本で出版されていた専門誌『ランドローバー・マガジン』などを、片っ端からオークションサイトで買って入念に下調べをしました。自分としては、顔はディスコⅠが好きだけど、機能はオンロード性能が向上したディスコⅡがいい。ディスコⅠはゴリゴリのオフローダーなので、乗り心地がちょっとキツいんですね。そこで、Ⅰの顔とⅡの機能を備えたディスコⅡの前期型、という結論に達したんです」。

ここから仁田さんのディスカバリー探しが始まった。

「当時、関東で売られていたディスコⅡには全部試乗したと思いますね。関西も攻めたし、そうこうするうちに岐阜でこのクルマを見つけました。あぁこれだ、と思って速攻で決めましたね。V8エンジンの調子がいい個体だったし、色も探していたチョウトンホワイト(英国車伝統のオフホワイト)でした。エンジンが大丈夫なら他のところはなんとかなるだろう、と判断したんです」

資料探しといい、試乗の回数といい、やると決めたら徹底的にやる。ちなみに仁田さんのディスコⅡは「V8i S」というグレード。他のグレードはすべてエアサスペンションを備えるが、こちらはシンプルな金属バネのサスペンション。マニアの間では「ディスコⅡのエアサスは、乗り心地はいいけど壊れると厄介」というのが定説になっているから、長く乗ることを考えると、グレードの選択も正解であるように思える。


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(1枚目から右へ)
・横開きのラゲッジスペースには、愛犬・ケリーちゃんのためのケージと、キャンプグッズがぎっしりと積まれている。
・「思いきって張り替えてもらった」という天井には、簡単な収納スペースが。仁田さんはシュラフを載せておくなどして活用している。
・ディスカバリーの特徴である、盛り上がったルーフと、サイドの小窓。後部座席の頭上クリアランスと直射日光の確保はバッチリ。「ホイールはディフェンダー用の鉄チンをオークションサイトで5本買って履き替えました」。この飾り気のない感じがたまらない。
・仁田さんのディスカバリーⅡは、Ⅰのフェイスが継続して採用された過渡期の仕様。白と黒だけのエクステリアにオレンジ色の大きなウィンカーが効いている。


主治医さえ見つかれば、メンテに不安なし

こうして、仁田さんの鎌倉の自宅にディスコⅡがやって来た。実生活で使ってみた印象はどうだったか。

「鎌倉は狭い道が多いんですが、ボディの見切りがいいので問題ないですね。いわゆるコマンドポジションのおかげでしょうか。ディスコⅡを買ってから、最新のランドローバーにもディーラーで試乗しましたが、見切りがいいことは共通していますね」

コマンドポジションとは、ガラスエリアの面積を広くするのと同時に、目線の高い位置に座ることで広々とした視界を確保する、ランドローバー伝統のシートポジション。70年以上にわたってSUVだけを造り続けてきた同社ならではといえるこだわりだ。

20年選手だけに、お金がかかるのではないかという点が気になるけれど、仁田さんによれば走れなくなるようなトラブルは皆無だという。

「天井の内張りはかなり痛んでいたので、購入時に全部剥がしてきれいにしてもらいました。そこは少し費用がかかりましたけど、あとはきちんとメンテをしてくれるところを探せば、問題ないことがわかったんです。電気系統のトラブルで、とあるガレージで30数万円と言われたんですが、ディスカバリーⅢに乗っている知人に習志野の『ミッドランド』というショップを紹介してもらったら、10万円ちょっとで直りました。パーツも新潟県にあるランドローバーの部品専門店『British 4×4 Parts Service』になんでも揃っているし、今のところ維持するのが大変という感じはしません」


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(1枚目から右へ)
・鎌倉に住む仁田さんは、横浜・元町に出かけることもしばしば。冬場はオイルドのバブアーを着て乗り込むことも少なくない。
・簡素で実用的なインテリア。メーターフード脇に連なるスウィッチは、慣れると非常に使いやすい。トランスミッションは4速AT。
・座面にはファブリック、周囲にはレザーをあしらったシート。「全面レザーに張り替えようと思ったこともあったけど、今はこのダサさを楽しめるようになりました」。ヘッドレスト脇には、後席の乗員が捕まるためのグリップがつく。
・仁田さんが実車を購入する前にリサーチすべく購入したカタログの一部。
・全長、全幅ともに現行のディスカバリーと比べるとはるかに小ぶりである分、離れて見ると背の高い独特なプロポーションがきわ立つ。


こうして、荷室のゲージにボーダーコリーのケリーちゃんを乗せる鎌倉生活が始まり、もともと好きだったというアウトドアもさらに充実するようになった。冬は、スタッドレスタイヤに履き替えて、雪山登山やスノーボードを楽しむ。仁田さんは、ディスカバリーというクルマのポテンシャルをすべて使い切っている。もともと、洋服や洋品も英国のものが好きだという仁田さんは、「このクルマはちょっとバブアーに似ているんですよね」と話す。

「このクルマは雪道でも水たまりでもがんがん攻められる一方で、きれいに洗車すればまぁまぁのホテルやレストランでも行ける。バブアーも、ハンティングやアウトドアに使ってもいいし、ジャケパンやスーツの上からはおってもいい。使い込むほどに風合いが出る点も共通しているかな、と」

なるほど。ジェームズ・ボンドにも通ずるような、洗練された品格と蛮カラな雰囲気の共存がイギリスっぽさだろうか。

「そうかもしれませんね。そういえばボーダーコリーも同じですよ。牧羊犬としてめちゃくちゃ頭がいいのと同時に、アジリティ大会で結果を残すフィジカルもありますから」

なるほど、“英国らしさ”とは何かが見えてくるような、ちょっと深い取材になったのだった。


仁田恭介/エディター
1983年生まれ。出版社での編集経験などを経て、2009年にフリーランスとして独立。カルチャー誌、ファッション誌のほか広告でも活躍。自身でスタイリングを手がけることもある。


Photos: Kosuke Tamura
Text: Takeshi Sato