時計を愛する大人たちが集い、学び、語り合う連載。今回は分解組み立てを体験し、時計の構造を学んだ。
ムーブメントに触れると、設計者の意図が見えてくる

三村小松法律事務所代表。弁護士としての専門分野はアートとファッション。インテリアにも精通し、時計も勉強中。

気鋭ブランド「カル」を手がけるディレクター。東麻布に構える自身のギャラリーでは、キュレーターも務める。

前回の連載で、機械式時計のメカニズムについて、もっと深く知りたいという声が上がったことを受け、ジャガー・ルクルトに取材を依頼した。実は銀座並木ブティックでは、顧客を対象とした時計師体験イベント「マスタークラス」を不定期開催しているのだ。
今回は、弁護士の小松隼也さんとカルのディレクター、佐藤佑樹さんが参加。時計技術者の指導の下、Cal.770の分解と組み立てに挑戦する。もちろん二人は、これまでムーブメントに触れたことはない。
まずはジャガー・ルクルトの歴史についての解説を聞いて期待感を高め、さっそくピンセットとドライバーを手に、ムーブメントの分解に挑む。肉眼では確認しにくい小さなネジを外し、パーツを丁寧に外していく小松さんと佐藤さん。初心者であればパーツがつかめず四苦八苦するのだが、二人はセンスがいいのか、意外なほどに作業はスムーズに進む。パーツを外していくと、これまで見ることのなかった隠れた部分も露出し、例えばペルラージュと呼ばれる丸形の磨き処理が施されていることがわかる。これはムーブメントの装飾だけでなく、小さな傷を取り去り表面を平滑にする仕上げで、時計の完成度を高める手法だが、分解を行うことでそういった見えない部分への気遣いを知ることができる。そんなジャガー・ルクルトの真摯な時計作りに触れることで、二人はますます機械式時計の深みにはまっていく。

香箱と呼ばれる動力ゼンマイを外したら、分解工程は終了。香箱はかなり小さいが、それだけで長時間正確に時計を動かすことができる。その驚異的な技術力に驚かされる。

実際のオーバーホールでは、パーツを洗浄して汚れや古い潤滑油を落とす作業が加わるが、今回は外したパーツを再び組み立てていく。組み立ては分解よりも難しいのだが、これまた二人は、サクサクと作業を進める。実はこういった作業のしやすさも、ムーブメント設計が優秀である証拠。パーツの大きさやネジの少なさ、見やすいレイアウトなどによって、作業効率を高めている。

最後に調速脱進機を取りつける。髪の毛よりも細い軸の部分を折らないように慎重に作業を進め、ストンと所定の位置に収まった瞬間、時計はチクタクと動きだした。
佐藤:細かくて難しい作業だろうと予想はしていましたが、想像以上でしたね。一方で、機械式時計の構造がすごくシンプルであることに驚きました。作業はすごく細かいのですが、発想自体は、ある意味原始的。何世紀も前に開発された技術を、いまだに踏襲し続けているところが面白いですね。
小松:機械式ムーブメントの基本構造は約400年前から変わっていないっていうのは衝撃でした。実際に触れてみて、パワーリザーブの意味や、時刻の正確性をどう保っているかがわかりました。
佐藤:今回は触りませんでしたが、精度調整のネジなんて本当に小さいですよね。
小松:この小さな機械に、時計職人の技術が集積していることがよくわかりました。
名門マニュファクチュールのムーブメントに触れ、メカニズムの真髄を感じた二人。時計文化の奥深さに、また魅了されたようだ。


ブランドの技術力が詰まった「レベルソ・トリビュート・デュオ・スモールセコンド」に、久々のブラックダイヤルモデルが登場。表側は初代を彷彿とさせる端正なデザインを採用。裏面はシルバーダイヤルで、ナイト&デイ表示を備えた第2時間帯表示が収まる。裏面の時針はケース上のスライダーを使って操作する仕組みで、ケースを反転させるだけで簡単に異なる時刻に切り替えができる。ファッションに合わせて表面と裏面を使い分けることが可能だ。

ジャガー・ルクルト 銀座並木ブティック
東京都中央区銀座6-7-15
TEL:03-5537-5911
営業時間:11時~19時 無休