2019.12.08

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.67 JWアンダーソンのTシャツ|2019年10月号掲載

夏といえばTシャツだ。今年もアーティストTシャツが面白い。JWアンダーソンやグッチ、ソロイスト. 等々、ブランドの思いが凝縮されているのが楽しい。僕が買ったのは、インパクトのある絵柄中心。サイズは肩が落ちるような大きめが気分。合わせるのはジャージーやウールのスラックス。で、デニムを合わせる場合は断固革靴なのだ。

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先日、テレビで白いTシャツを紹介する番組を見た。長年こだわりの白Tを着てきた中年男が、自ら白Tをレコメンドするコーナー。話題の店の、話題の白Tを紹介していた。白Tといえば、かつてはモテ男のマストアイテムだった気がするが、番組に登場した彼は、エアガンマニア的なオーラを放っていた。毎日毎日白Tを着ている中年男を、女たちは「爽やかで素敵」と思うのだろうか。



僕はといえば、今も昔も「モテたい」と思って白Tを着たことはない。この業界に入った’80年代中頃、ルンルンな20歳前後の女子に男性ファッションの取材をすると、みんなあれこれ好き勝手なことを言った後に「結局、白いTシャツにブルージーンズが似合う男の子が好き」と、判で押したようにおたんこなすな答えを返してきた。



心の中で「まったく時間の無駄やな」と思い、かつ「ばかやろう」と叫び、同時に「それが現実か〜」と感じてもいた。その頃の僕のファッションは、全身コム デ ギャルソン・オム プリュス。そして今や、爽やかなイケメン男子じゃなくても、白Tについてテレビでオタッキーに語る時代がきたのだ。僕は感慨にふけりながら、好物のグアバアイスを頰張った。



この夏、僕は白Tとは無縁だ。4年前にはヴァレンティノの白Tにはまり、これぞ新時代のドレスTだと、いろんな媒体で吠えた。が、今やその形&素材感に似せたものが出すぎて冷めた。ヴァレンティノのドレスTは大切に保管してあるが、今季は着ない。



今年は、去年に引き続きアーティストTを数枚購入。イラストで紹介しているのは、ギルバート&ジョージの作品がプリントされたJWアンダーソンのTシャツ。ギルバート&ジョージといえば、必ず二人してメイフェア的なスーツ姿、というのが定番だが、そんな彼らのコンテンポラリーな作品を、カジュアルにTシャツとして着られるのが面白い。



首に掛けているのはヘッドフォン型携帯扇風機。6月のパリコレを見に行くときに手に入れた。コレクション会場は熱気で暑さが倍増するので、それをしのぐのに重宝した。パンツはキャバンのイージーパンツ。ベルトいらずでTシャツの裾をアウトして着る際に腹部が膨らまないのがいい。



靴は’90年代中盤に気に入っていたシルヴァノ・マッツァ。あれこれ購入してよく履いていたし、仕事でも多用していた。イラストで履いているのは、デザイナーにインタビューをしたときにプレゼントされたUチップ。一度も履いていなかったけど、最近部屋を改装したときに発見。まったく劣化していないことに感動して、ヘビロテ中である。



グッチのマスクTは超ヘビーウエイト。先日、香取慎吾さんと一緒にやっているヤンチェ_オンテンバールのミーティングに着ていったら、慎吾ちゃんが「それ、買ったんだ。やっぱりラグジュアリーブランドのTシャツは、大人が一枚で着られるようになっているね〜」とつぶやいた。慎吾ちゃんもプライべートではグッチやバレンシアガのTシャツを着ている。



そういうTシャツは高価だけど、確かに大人が一枚で着られる。ドレスコードがうるさい席でも通用しそうなくらい、素材、デザイン、作りがいい。ソロイスト.のチャールズ・ピーターソンのフォトTは、グランジフィーリングが詰まったクールな一枚。スーツスラックスと合わせてヘビーローテーションで活用中。靴はジャックパーセルを合わせます。



(左)黒×白のボーダーTシャツを着るのはこれが生まれて初めて。ギルバート&ジョージの作品はギャラリーや写真集では何度も見ているが、着るのは初めてだ。(中)EC限定のグッチTシャツを去年に引き続き購入。ゆったりしたサイジングと色使いに惹かれた。(右)ソロイスト.のフォトプリントT。’90年代前半グランジな人々を探しにシアトルへ行ったことを思い出す。が、そのとき会った面白い人たちはニューウェーブルックだった。
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Text:Tomoki Sukezane
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa

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