久しぶりに気分のミリタリーウェアをどう着るべきかを考えに日本一のミリタリーの殿堂、福岡にある「ワイパー」の巨大倉庫に特別潜入。自身の着こなしが大人気のディレクター李さんと、ミリタリー好きスタイリスト西又さんがファッション目線でディグ＆スタイリング＆トーク。濃密な出張会議が始まった。
文化系スタイリスト西又潤一 / Junichi Nishimata
多くの雑誌、カタログ、広告などで活躍するスタイリスト。師匠である二村毅氏のアシスタント時代から磨かれたミリタリーへの探究心はいまだに衰えを知らず。本誌でも過去にたびたびファッションとして楽しむミリタリーウェアのスタイリングを提案してきた。「お店と違って、普段は当然入ることのできない倉庫は僕にとっては初めて見るアイテムの宝庫で、興奮しっぱなしでした。もういつまでもいられます」。
文化系ディレクター李 成鉉 / SungHyun Lee
WAIPERディレクター。買い付け、商品管理、通販、モデルまで兼務する大黒柱。幅広いミリタリーウェアの知識に加え、自身のインスタグラム（@l.l.wood）で発信するミリタリーミックスのスタイリングは絶大な人気を誇り、フォロワー10万人超えのインフルエンサーでもある。「倉庫に雑誌の取材が入るのは実は初めて。西又さんは売れ筋とは別のマニアックなアイテムに興味を示すことが多くて面白かったです」。
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李（以下、L） ハーフジップのネイビーといえば、こんな変わり種もピックアップしてみました。
西又（以下、N） こんなの初めて見ました。フリースですか？
L フランス空軍の航空消防隊に所属する消防士が着用するプルオーバーシャツです。鹿の子風のサラリとした質感で伸縮性もあります。「空軍の消防士」を意味するフランス語が刺繡された赤いラインがすごくモードに見えませんか？
N 普通にデザイナーズのシャツに見えますよ。着心地がよく、袖口はいわゆるロンTディテールではなくてカフス仕様というのも、きちんとしていてUOMO世代の大人にふさわしい。
L レトロなのに着方次第でフューチャリスティックにもなると思います。ハイネックニット感覚で着てもいいし、いまならラガーシャツの代わりにカジュアルに着ても素敵ですね。
ーそして偶然、二人のセレクトがかぶったアイテムが2点あったのですが、その一つがアメリカ海軍のタートルネックカットソーでした。
N そもそもブラウンって珍しくないですか？ グリーンはよく見かけますけど。
L さすが詳しいですね。グリーンがあることや、海軍でこんなタートルネックシャツがあることすら、一般にはあまり認知されていないかもしれません。タートルネックのカットソーって、いまや大人のワードローブの必需品じゃないですか。その中にさらっとミリタリーのカットソーが入っているのは、なかなかツウだと思います。
N 着てみるとネックが低めで、折り返さなくても、あごに少し触れるくらい。ジャケットを重ねても首まわりがもっさりしなくて絶妙です。ブランドもので探しても意外と見つからないんですよ。
L やっぱりアメカジ好きとしてはドライな肌触りのコットン100％にもぐっときます。私はネックを折り返して控えめなモックネックにして、デニムとコーディネートするのが鉄板です。
N 李さんが選んだドレスシャツは逆に極限まで首を隠すハイネックカラーで驚きました。張りのあるブロード生地の存在感からして、ヨーロッパの老舗シャツメーカーかと勘違いするほど。
L イタリア海軍のオフィサーシャツなんです。ミリタリーシャツというとカーキやダンガリーというイメージが強いと思うのですが、上官が着用するオフィス用とかセレモニー用のドレスシャツが狙い目です。そしてドレスといえばイタリア。ミリタリーのユニフォームには国家の威信をかけていますから、このシャツも背中に入ったダーツ、美しい縫製、ピンと立つ襟つけなど、細かいところまでイタリアの矜恃を感じます。
N ミリタリーでここまでドレッシーなものはないですよ。それを李さんはブラウンズビーチのゴマ塩ベストとデニムでカジュアルダウンしていて、すごく新鮮ですね。普通、このスタイルのインナーにはアメリカンなBDシャツですよね。
L スラックスを合わせるのがセオリーでしょうが、デニムなら照れずに着られます（笑）。
N ジャケットのインに着てもサンローランっぽくモードに着こなせそうですね。
L パンツもイタリアつながりで選んでます。
N デニムまで。イタリア軍の守備範囲すごい。
L イタリア軍のデニムワークパンツで、ほぼテーパードのかからないストレートシルエット。この春はいろんなブランドでデニムパンツを見かけますが、それをミリタリーから、しかもアメリカではなくイタリアから選ぶのが面白いかと。もちろんアメリカのジーンズも大好きですけど、たまには変化球も欲しいんです。さっき西又さんがチェコ軍のワークシャツのステッチについてお話しされていましたけど、このパンツのステッチワークも同色＆控えめでワーク色が強すぎないんです。
N 輝くYKKの長方形アルミジップがかっこいい。昔、ヘルムート ラングが同じものを使っていました。細かい話ですけど、そういうこだわりが全体のモダンさにつながっているのだと思います。あと、ここまでは全部デッドストックの新品でしたが、デニムに限ってはウォッシュのかかった柔らかい生地のほうが洗濯後の縮みを計算しなくていいのでユーズドをむしろ歓迎したいです。
ーーーPART3へ続く
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