ウール愛が強すぎる

石川俊介さん
(MARKAWARE/Text デザイナー)の場合

スーパー140の16.5マイクロンだと柔らかすぎる。
120の17.5マイクロン。これがウールの最適解。

自分がおじさんになったのもありますが、今後、ブランドとしてどこに主軸を置くか考えたときに、形はベーシックでいいのでやはり素材かな、と。特にウールが大好きでいろんな種類を試してきました。ウールの品質が何で決まるかというと「マイクロン」と呼ばれる一本の繊維の細さ。基本的に細いほど高価で上質。0.5マイクロン細くするのに、品種改良したりなんかで約5年かかると言われています。僕らがメインで使っているのはスーパ−120と呼ばれる17.5マイクロンの細さのもの。これより細くなるとニットにはいいけど織物には柔らかすぎる。逆に18.5マイクロン以上の太さになると素肌に着てチクチクする。コシと肌触りがちょうどいいのが17.5マイクロンなんです。

このウールトロピカルのセットアップはどちらも17.5マイクロンのウールを使っています。ちなみに、ウールの開発が進んでいるのはオーストラリア。羊の頭数も多い。でも僕らはオーストラリアのウールはほとんど使いません。“ミュールジング(子羊の臀部にハエなどが寄生するのを防ぐため、皮膚をはぐ行為)”が多く行われているから。隣国ですがニュージーランドではミュールジングが法律で禁止されていて、また南米までいけばそもそも原因となるハエが生息していない。このセットアップの原料はニュージーランド産ウール(1)と、アルゼンチン・パタゴニア地方でとれたオーガニックウール(2)。ウール好きが高じてついに自分でも牧場を探すように…(笑)。

1

brandMARKAWARE
modelSUPER120’s WOOL TROPICAL CONFORT FIT SHIRT/FLAT FRONT TROUSERS
price¥37,400(SHIRT)
¥36,300(PANTS)

こちらのウール(2)も、オーガニックウールを育てている牧場をネットで探して、パタゴニアの牧場に直接アポをとって、現地まで飛んで実際に羊や工場を見学して仕入れを決めました。だから思い入れはひとしお。そもそもオーガニックウールは作れる環境が世界的に見ても少ないんですよね。パタゴニア地方は見渡す限り草原で、寒冷地だから農業はおろか牛も育たないくらい。羊1、2頭につき東京ドーム1個分の土地を割り当てられる広さがあるので、羊が草を食べてもその間にほかで草が生えてくる。それくらいじゃないとオーガニックウールって育てられないんですよ。またニュージーランドや南米のウールはクリンプ(波打ち)の形状がはっきりしていて、糸に膨らみがあり保温効果も高い。このセットアップ(1・2)でも使っている“シチ・ニーのトロ(72番双糸のウールトロピカル)”は真夏のスーツに使われる生地で、涼しくて風通しがいいのが特性。汗をかいても干しておけば匂いは消えます。

2

brandMARKAWARE
modelORGANIC WOOL TROPICAL SACK COAT/PEGTOP TROUSERS
price¥60,500(JACKET)
¥33,000(PANTS)

秋冬の新作ウールの耐久性を着てテスト中
…とここまでが素材で、ここからがアイテムの話です(笑)。世の中でもいま、コロナ禍もありセットアップが流行ってますが、僕らは4、5年前から力を入れてきました。洋服の着方を考えたときに、なるべく要素を省いて上下同素材で着られる洋服を作ろう、と。ジャケパンだと当たり前だから、シャツとパンツ。当時、後ろだけをゴムに替えてクロップド丈にしたスラックスが、ウエスト72~90㎝の人まで対応できて、かつ裾上げしないでおしゃれにはけるっていうので広く認知されてすでに人気でして…。このパンツと揃いで着られるシャツを作りたかったんです。

ただ、これが普通のコットンだと、シャツは作れるけど、パンツがパジャマみたいに見えて外出着としては厳しい。逆にパンツに適した分厚いコットンでシャツを作ろうとするとカバーオールや厚手のCPOみたいにタフになってしまう。シャツとしてもパンツとしてもきれいに着られる生地とは?を考えたときに、やはり行き着いたのがウールでした。ツナギにトライしたこともあったんですけど、まあ売れなかった(笑)。これだとバラバラでも着られるし、揃いで着て、シャツの裾をインしたらツナギっぽくも見える。それからはこのセットアップを定番的に作っていますし、派生して、同素材で上からはおれるカバーオールやジャケットを作ったり、パンツのシルエットもいろいろ変えてみたり。自由に組み合わせて着られるように提案しています。

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Photos:Yoshio Kato(Still) Kanta Matsubayashi