2024.05.05

「露伴VSアワビ」⁉ 高橋一生、露伴愛を語る2024【ドラマ「岸辺露伴は動かない」最新作「密漁海岸」】

『岸辺露伴は動かない』高橋一生主演最新作(第9話「密漁海岸」

荒木飛呂彦原作コミック『岸辺露伴は動かない』。高橋一生を主演に実写化、2020年~2022年のスペシャルドラマに続いて、昨年には初の映画化を果たし反響を呼んだ人気シリーズ最新作(第9話「密漁海岸」)が、5月10日にNHK総合にて放送される(※5月5日(日)にNHK BSP4Kで先行放送)。TVドラマの第1期以降、主演・高橋一生に毎年インタビューを実施しているUOMOが、今年も撮影舞台裏のエピソードおよび深すぎる露伴愛をインタビューして堀り下げる。原作でも屈指の人気を誇る「密漁海岸」、高橋一生は何を思う?
※編集部注ネタバレ防止のため一部を伏字にしています。

「人間って本当に“沈まない”んです」

高橋一生 1

――2020年末から始まった「岸辺露伴は動かない」シリーズも5年目を迎えました。昨年5月に公開された映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』を経て、第9話目となる今回のエピソードは「密漁海岸」! ドラマシリーズがスタートした当初から実現を望む声が多く、ファンの期待値も非常に高いエピソードです。先ほど試写を拝見したばかりですが、「こうつくったのか!」という驚きと喜びがありました。最高に面白かったです!

高橋 ありがとうございます。作品としては、前・後半に分かれていると僕は思っています。前半の部分は(イタリア料理人の)トニオ・トラサルディが登場する『ジョジョ』第4部のエピソード(「イタリア料理を食べに行こう」)から持ってきているのですが、原作には露伴は登場しないので、ドラマ向けにつくり変えて、後半部分を『岸辺露伴は動かない』の「密漁海岸」のストーリーにつなげています。コミカルな要素もある前半に対して、後半は打って変わってアクティブな話になっていくものの、全体としては暗く、ゴシックな感じが基調となっていて、いつもの露伴らしい怪奇テイストが健在です。僕自身とても面白い作品になったのではないかなと思っています。

高橋一生 2

――今回、露伴は伝説のアワビと対峙します。水中シーンがありましたけど、撮影は大変でしたか?

高橋 これまでダイビングの経験はあるとはいえ、水中でのお芝居はまったく違って、「こんなにも自由がきかないんだ」と思い知らされました。それこそ息を吐ききった状態にしないと、人間の身体は沈まないんです。「肺って本当に浮き袋なんだな」と実感しました。なので、息を全部吐ききったところから撮影がスタートするんですけれども、カットがかかった後、今度は身体がなかなか水上に上がっていかない。実はわりととんでもない状態になっていたのに、その大変さが映像で見る限りではあまり伝わっていない気がします(笑)。体力的には特に問題はなく、「ザ・ラン」(第4話)のときのほうがよっぽどきつかったです。今回は水中撮影のための特別チームを組んだのですが、「なかなか沈まないから、アワビに重りを仕込もう」とか、さんざん僕を沈めさせようと画策してくださったおかげで(笑)、とても臨場感のある映像になりましたし、ある種、芸術的なカットに仕上がっているのではないかなと思います。

高橋一生 3

――トニオの料理を食べるシーンも見どころでした。原作だと(『ジョジョ』第4部に登場する)虹村億泰が食べて、いろいろと体の不調が治っていくのですが、今回は露伴と担当編集の泉京香がその役割を担っています。あのシーンはどのように演じましたか?

高橋 僕が“肩こりのほう”なんだという戸惑いはありました(笑)。とても面白くお芝居できましたし、「億泰の役割を露伴に置き換えても成立するんだ」という意味でも、あらためて原作の持つ強度を思い知りました。また露伴のキャラクターというものは、僕の中でとても自由度が高いんです。「これは露伴にはできないかもしれない」と躊躇しないで演じることができる。肩こりが治ったシーンは、完全に億泰のポーズを再現しています(笑)。

「改めて露伴ってサイコーだ」

高橋一生 4

――本当に楽しい場面でした。露伴はコメディタッチも全然いけるんだなって。

高橋 露伴は必死にやっている姿が“滑稽”に見えることもあります。けれど、最後の最後に全部ひっくり返していく。そこが面白い。また、ただかっこつけているだけではない露伴は、非常に人間らしさがあるし、ユーモアがあるなと思います。なので、そんな露伴の一面を、億泰パートを借りて引き出すことができたのはとても面白かったです。今回のドラマの露伴を、極端に要約すると、アワビに■■をぶつけているだけ(笑)。「それって何が気高いの?」という話なんですが、露伴の志があるから面白く見える。

高橋一生 5

――トニオとのやりとりで登場する、原作の露伴の名台詞「だから気に入った」も、こうくるか! と興奮しました。

高橋 今回の台本で個人的に意識したところは、だんだんと“事情”が分かってきたときに、どれだけトニオを焚きつけられるか、ということでした。本当は最初からめちゃくちゃついていきたいんだけれど、いかに受け身なふりをして、先にトニオに「密漁します」と言わせるか。「お前、乗ってこいよ」というふうに煽っていく感じは、露伴というキャラクターにおいて核となる部分なので、とてもやりたかったですし、現場でも面白くお芝居できました。理詰めで「(密漁を)やります」とまで相手に言わせようとする、あの人間っぽさはとてもかっこいいですね。実際に自分が露伴になって体感したことで、あらためて「露伴ってサイコーだな」と思いました。

「いつでも動ける」ように準備はしておく

高橋一生 6

――もはや恒例の質問となりましたが、次回作が楽しみです。期待していいですよね?

高橋 常に考えています。スタートした当初はこれだけライフワークに近い形でやらせていただけるなんて思っていなかったですし、まさか自分がフィギュアになるなんて想定していませんでした(笑)。UOMOさんには最初から取材していただいていますが、そのときは第1期で終わりだろうと思っていました。でも、今では「次もあるだろうな」と思っているので、仮に別の作品で太ったりガリガリになる必要のある役を引き受けたとしても、「露伴の撮影があるから戻さなきゃいけない」と自然と考えるようになっています。この5年間は露伴を軸に物事を考えていたかなと思いますし、たぶんこの先もそうなんだろうな、と。意味なく船舶免許を取っていますからね、僕。「密漁海岸」の撮影に入る前に、船舶1級を取ったんです。露伴が自分の一部になっていて、確実に私生活に影響してきていると思います(笑)。もう航海士ですよ。海図も読めますし、その気になれば世界中も回れます。

高橋一生 7

――これからも「新しい露伴」が期待できそうです。

高橋 一緒に「露伴」をつくっているチームに対しても、ずっと同じテイストでやれている絶対的な信頼感があります。皆、これまでやってきたことをさらにアップデートしていくけれども、「どんどん拡大していこう」とはまったく思っていないんです。そこがすごく信頼できる。上を上を、と目指すのではなく、ひとつところに穴を穿ち続けるようなイメージ。同じことをやり続けていくことはものすごくエネルギーが必要です。新天地に行けたほうが気分転換にもなるし、新しくできることだってある。ただ、同じチームで同じ場所を深く掘り続けていくことは人生であまり体験できることではありません。

高橋一生 8
シャツ¥201,300・パンツ¥165,000・ネクタイ¥73,700・ベルト¥99,000・ブレスレット(右手)¥272,800・ブレスレット(左手)¥330,000・ブーツ¥214,500(参考色)/ボッテガ・ヴェネタ(ボッテガ・ヴェネタ ジャパン)

――本当にライフワークなんですね。

高橋 僕は高校生のときに露伴と出会い、そのときから計り知れないほど大きなものをもらっています。そうやって得たものを、今こうして自分の肉体を使って表現しているのですが、毎回やるたびに露伴という人はすごいなと思いますし、その作品づくりに参加できていることがとてつもなく幸運なことだという認識は常に持っています。なので、いつでも動けるように準備はしていたいです。1つの役をリフレインしていくことは本当に面白いなと思います。「人間そのもの」をつくっていく作業なので、時間をかけていくほど理解度が上がっていく。お芝居では「一度演じたらそれきりで終わり」ということがほとんどですが、この「岸辺露伴は動かない」では本当に貴重な体験をさせてもらっています。

問い合わせ先/ボッテガ・ヴェネタ ジャパン 0120-60-1966

高橋一生

1980年東京都生まれ。ドラマ、映画、舞台などで幅広く活躍。近年の出演作は、ドラマ「恋せぬふたり」(NHK総合)、「6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の憂鬱」(テレビ朝日)、映画『スパイの妻』『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』など。現在、主演ドラマ「6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の2番目の憂鬱」(毎週土曜日23時30分~/テレビ朝日系)が放送中。ドラマプレミアム「ブラック・ジャック」(テレビ朝日)が6月30日放送予定。

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ドラマ「岸辺露伴は動かない」第9話「密漁海岸」
NHK総合 2024年5月10日(金)22:00-23:00
BSP4K 5月5日(日)13:00-14:00(先行放送)

【あらすじ】
露伴邸の近くにひっそりとオープンしたイタリアンレストラン。その店を訪れた露伴と京香が出会ったのは、料理で客の体の悪いところを改善させる不思議な力を持ったシェフのトニオ・トラサルディだった。トニオは露伴に、どんな病気でも治してしまうという伝説のヒョウガラクロアワビを手に入れようと密漁を持ちかける。実はトニオには、重い病気を抱えたフィアンセ・森嶋初音がいたのだ。

【キャスト】
岸辺露伴:高橋一生
泉京香:飯豊まりえ
森嶋初音:蓮佛美沙子
トニオ・トラサルディ:Alfredo Chiarenza

【スタッフ】
原作:荒木飛呂彦
脚本:渡辺一貴
脚本協力:小林靖子
音楽:菊地成孔/新音楽制作工房
人物デザイン監修:柘植伊佐夫
演出:渡辺一貴
制作・著作:NHK NHKエンタープライズ ピクス

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