2026.08.15
最終更新日:2026.08.15

【濱口竜介インタビュー】いつ、どうやってアイデアは生まれるのか

カンヌ、ベルリン、ヴェネチアの三大映画祭で受賞し、米アカデミー賞®にも輝くなど、いま世界が最も注目する映画監督の一人。待望の新作について話を聞いた。

いつ、どうやってアイデアは生まれるのか

濱口竜介

取材はカンヌ入りする前に行われた。

「カンヌ国際映画祭は、激しいというか、みんながみんな目が血走った状況でいるような場所なので(笑)、楽しむというよりあまり落ち着かないというのが正直なところです」

ご存じの通り、主演のヴィルジニー・エフィラと岡本多緒が最優秀女優賞を共同受賞という輝かしい結果を残した。世界が絶賛した最新作『急に具合が悪くなる』(公開中)は、がんの転移を経験しつつ生き抜く哲学者と臨床現場の調査を積み重ねた人類学者による同名の往復書簡からなる書籍が原作となっている。

「初めて原作を渡されて読んだとき、非常に心が震える経験をして、これはぜひ映画にしたいと思いました。ただ、原作は学者二人の往復書簡なので、ある程度は抽象的な話をしなくてはならず、そういったものを日本でどうやって成立させるかという部分がまったく見えていませんでした」

何も決まらないまま2年ほどが過ぎたあるとき、フランスの制作会社から共同製作の誘いがあり、企画が動きだす。初の海外ロケ、緻密な会話劇、言葉と身体、映画内演劇、美しい構図…。原作の魂を損なうことなく大胆に翻案し、比類なき傑作をつくり上げた。

「アイデアはいつ生まれているのかと聞かれることは多いのですが、特にこれといった法則はありません。どうやったら思いつくのか、むしろ僕が聞きたいくらいです。もちろん、本を読んだり、映画を観たり、そういうことは普段から準備としてやっていますし、起きているときでもぼーっとしていることはあまりなく、常に何かしら考えているような状態ではあります。でも、それがどうやってアイデアに変わっていくのかはまったくわからない。これは永遠の課題かもしれませんね」

映画監督
濱口竜介

1978年神奈川県生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科修了。近年の監督作に『偶然と想像』(2021年/第71回ベルリン国際映画祭審査員グランプリ)、『ドライブ・マイ・カー』(’21年/第74回カンヌ国際映画祭脚本賞、第94回米アカデミー賞®国際長編映画賞)、『悪は存在しない』(’23年/第80回ヴェネチア国際映画祭審査員グランプリ)がある。

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