#02 田中伊佐資さん(オーディオライター)


オーディオライターとして数々のマニアや猛者に取材してきた田中伊佐資さん。もちろん、自身も無類のオーディオ好きである。

「こんなに重装備にしておいてよく言うよと言われそうですけど、いい音というのは究極的にはその人の好み。一個300万円のアンプを入れたからといって万人が認めるいい音が出るかといったら、そんなことはないんです。確かに値段が高いもののほうが基本性能はいいので、そこからスタートできる人は強いんだけど、それがすべてじゃない。10万円で揃えたシステムがびっくりするほどいい音で聴こえることもあるから、オーディオって面白いんですよね」

例えばレコードプレーヤー。いいものは何十万円もするが、それをムリして買う必要はない。プレーヤーは安価なものでいいから、それよりもカートリッジと呼ばれる針の部分を取り換えるだけで音は劇的に変わるという。

「レコード再生はカートリッジが肝です。この部分のグレードを上げたり、他社製に取り換えるだけでより好みの音に近づけることができます。種類もあって、価格も数千円で手に入るので、こっちのほうがはるかにコストパフォーマンスはいい。ただ、いいものは数十万円するし、あれもこれも欲しくなって、結果的に沼にどっぷりとハマってしまうパターンはあります(笑)」

ほかにも、ちょっとしたアップデートで音がよくなるのがオーディオの面白いところだと田中さんは話す。

「それこそオーディオケーブルとか電源コンセントを替えると明らかに音が変わります。オーディオ機器は電気で動いているので、電気の状態をよくするとやっぱり音もよくなるんですよ。でも、ケーブルもいいものは一本数十万円するので、これもハマればすごい世界が待っています(笑)。お金をかけられる人はかけただけの面白さがあるし、そうじゃなくてもセンス次第でいい音と出会うことはできる。フェラーリが好きな人もいれば、SUVが好きな人もいるのと一緒で、いい音に上下はないんです。ただ自分の好きな音で音楽を楽しみたい。だから、どんどんハマっていってしまうんでしょうね」





(左)レコードのカートリッジ。すべてがシュアのM44で、個々をカスタムして音を変えている。(右)モノラル専用のシステム。上がアンペックス350を改造したフォノ・プリアンプ、中がRCA製のパワーアンプ、下が電気をクリーンにするPSオーディオ P500という組み合わせ。


[DATA]
スピーカー:WoodWill, Jensen
フォノイコライザー:Aurorasound VIDA
デジタルプロセッサー:DEQX HDP-4
パワーアンプ:ALLION S-100, ALLION M-300
レコードプレーヤー:RCA MODEL70A,Technics SP-10MK3



Photos:Tohru Yuasa
Composition&Text:Masayuki Sawada