ごはんくらい作ったる。
いらんこと言わんではよ食え

 おにぎりや家庭料理の画像がオールカラーでどーん!とフィーチャーされている。でも本書はグルメ本ではない。お店のではなくほんとに「家庭」料理、ある一家庭で作られたおにぎりや料理なのだ。


 バラエティあふれるおにぎりの画像には、キャプションとして具材が書かれている。だけど本書はレシピ本ではない。本文では作り方よりも、作った女性の孫(男性フリーライター)がそれを目にしたときのリアクションが記されている。


 孫はかつて、沖縄にある電力会社の技術職だった。文章を書く仕事がしたくて会社をやめようかどうしようか逡巡し、周囲にはそんなことはやめとけ、と言われていた。そのとき大阪府に住む祖母はひとこと、〈ごはんくらい作ったる!〉と言って、孫の背中を押した。孫は会社をやめて、大学のクリエイティヴライティングの学科に入った。2011年の春だった。


 在学中にライターデビュー、卒業後はさまざまな媒体で活動する孫は、体当たり取材も辞さない。体力勝負の仕事を支えるのが、NHK「サラメシ」にも取材された、近所に住むおばあのおにぎりや手料理だ。


 おばあはそっけない。応対はぶっきらぼう。〈僕には神様仏様より、おばあ様や〉と感謝を伝えれば〈早よ、あの世行ったらええ、いうことか!〉と怒られた。


 おにぎりは巨大だ。なかに入り切らない具材が表面に貼りつけてあったりする。晩の手料理もものすごい量だ。〈主役級のおかずが二品、ときには三品以上、さらにそれを副菜が取り囲んでいる〉。


 カレイの唐揚げが貼りつけられたおにぎり。韓国のりのふりかけにびっしり覆われた黒光りするおにぎり。牛肉ではなく椎茸がメインのヴィーガンすき焼き。赤飯カレー。クリスマスっぽいおにぎりを所望したら惣菜のかぼちゃサラダを混ぜこんだおにぎりで2か月前のハロウィンに時をかけて戻されてしまう。ソウルフルだ。


 緩急自在な孫の文章をもっと読みたくなる。ほぼ全頁に添えられた消しゴムはんこ作家・とみこはんのカットも、書籍全体の編集も、センスの塊。笑えてじんときてお腹がすいてくる本でした。買いです。


BOOK

『おばあめし おばあと孫の、オモロイ関係。』
大迫知信&おばあ著
清流出版 ¥1,760

大迫知信は1984年大阪府生まれ。大阪工業大学大学院に学び、技術職として沖縄電力に3年間勤務。その後京都造形芸術大学(現京都芸術大学)文芸表現学科在学中よりおばあの手料理を食べ始める。現在、同大学非常勤講師。フリーライターとして書籍・雑誌・WEBで活躍。おばあ(松原文子・88歳)は愛媛生まれ。22歳で結婚し大阪に移住して66年。


千野帽子
文筆家、俳人。パリ第4大学博士課程修了。専攻は小説理論。著書に『物語は人生を救うのか』(ちくまプリマー新書)、共著に『東京マッハ』(晶文社)などがある。


Photo:Mai Shinya

SERIES

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