2022.09.20

『サマータイムレンダ』|脚本の力でねじ伏せる! タイムリープの金字塔【語りたがる俺のための必修アニメ #10|吉田尚記】

クオリティの高さに驚かされるアニメ作品は数知れず。その中から、いま最も観て欲しい一本を紹介しよう。今回取り上げるのは、今シーズン話題をさらっているタイムリープ作品「サマータイムレンダ」。

『サマータイムレンダ』|脚本の力でねじ伏の画像_1

脚本の力でねじ伏せる! タイムリープの金字塔

サマータイムレンダ_瀬古浩司_渡辺歩
 「タイムリープ」こそアニメの華! 有名タイトルだけでも「STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)」「Re:ゼロから始める異世界生活」「東京リベンジャーズ」などの多くの作品に見られ、実写よりも厳密に同じシチュエーションを再現しやすいアニメが最も得意とする手法です。


 今シーズン話題をさらっている「サマータイムレンダ」も、その一つ。少しでも脚本のゆらぎが見えると、ドキドキがすべてご都合主義に見えてしまうタイムリープ作品ですが、瀬古浩司さんの脚本は密度が尋常ではありません。通常ならワンクールに一度の衝撃が、毎話、時によっては複数回訪れます。また、上述のタイムリープ作品が「秋葉原」「異世界」「ヤンキー」などのキャッチーな要素と掛け合わせたのに対し、「サマータイムレンダ」では派手なフックはなく、脚本の力だけで勝負しています。長編ドラえもん映画を何本も手がけ、映画『海獣の子供』で第23回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞し、映画『漁港の肉子ちゃん』では明石家さんまと組んだ渡辺歩監督の無駄のない演出も光ります。



 本作の舞台は、和歌山市沖に浮かぶ架空の島・日都ヶ島(ひとがじま)。幼馴染である小舟潮の事故死の知らせを聞き、主人公の網代慎平が連絡船で島の港に到着するところから物語が始まります。本作のキーは、島の風土病として「“影”を見た者は“影”に殺され、“影”は殺した者のフリをして家族も皆殺しにする」と島内で言い伝えられている「影の病」の存在です。タイムリープを繰り返しながら、「影の病」の正体、そして潮の死の真相に迫っていく様は、リアルタイムで考察しながら見てほしい作品です。



 そして残念ながら、今回が連載の最終回になります。仕事をしている中で、「コロナ下でアニメが好きになりました」という声をたびたび聞きました。世の中にアニメファンが増えていることは間違いありません。アニメ好きに面白いアニメを聞かれて「サマータイムレンダ」と答えられたら、「わかってるな…!」と感じてもらえるはず。
 では、またどこかで会いましょう!


『サマータイムレンダ』
原作/田中靖規 
監督/渡辺歩 
シリーズ構成/瀬古浩司 
キャラクターデザイン/松元美季
©2021 20th Century Studios. All rights reserved.

「サマータイムレンダ」は、2022年4月15日よりTOKYO MXほかで連続2クール・全25話で放送中のアニメ作品。キャストは、花江夏樹、永瀬アンナ、白砂沙帆、小野賢章、玄田哲章、小西克幸、大塚明夫ほか。


吉田尚記
ニッポン放送アナウンサー。アニメやマンガ、アイドルに造詣が深く、「マンガ大賞」の発起人でもある。VTuberとしての顔ももち、アナウンサーの枠を超えて活躍中。



Text:Yoshito Tanaka

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