秘かな人気者ボバ・フェットは
いかにしてよみがえったのか!?

熱心なファンには今さら説明の必要もないだろうが、宇宙の賞金稼ぎボバ・フェットとは、『スター・ウォーズ』(以下SW)に登場する有名キャラクターである。面白いのは、映画版旧3部作での登場場面はわずか数分、セリフもほぼないチョイ役だったこと。にもかかわらず、T字型のバイザーや背中のミサイルなどひと目で記憶に残るデザインと背景が説明されていないがゆえの神秘性から、不動の人気を獲得した不思議なキャラなのだ。 



旧作『〜ジェダイの帰還』で最期を遂げたと思われたボバが実は生きていて、ドラマ「マンダロリアン」で再登場したことに歓喜した人も多いだろう。今作はまさに待望となるボバを主人公とした単独作品。死の淵から生還した彼が、砂の惑星タトウィーンで辿る過酷な運命が現在と過去を往復しつつ描かれていく。



物語の焦点となるのは、自身の利益のためだけに命を張る一匹狼だったボバが砂漠の民との交流などを経て、徐々に他者のために行動することを知っていく心の軌跡だ。強い思い入れをもつファンが多いキャラだけに、「ボバは悪役なのにいい人すぎる!」と批判の声もあるようだが、偶像にすぎなかったボバに実体感ある内面を見いだした点は、今作ならではの特徴と言っていい。本家の映画シリーズがジェダイやスカイウォーカー一族の設定に縛られるあまり迷走していったのとは対照的に、ドラマ版は既存のキャラや舞台を利用し、自由な発想で新たな作品世界を築いていることをうれしく思う。その一方、イーストウッドの一連の西部劇や『アラビアのロレンス』『ゴッドファーザー』『キングコング』など過去の名作群からイメージを引用しまくる手法は『SW』の伝統を確かに継いでいるのだ。



ドラマ後半では前作「マンダロリアン」の主人公マンドーも再登場。ゆえに主役であるボバの影がやや薄くなった(?)のは残念だが、ボバ&マンドーによる大戦闘シーンは「ボバの勇姿をもっと観たい!」というファンの長年の夢がかなった瞬間ではないか。初夏にはドラマ「オビ=ワン・ケノービ」も待機。SW世界のさらなる広がりに期待したい!


「ボバ・フェット/The Book of Boba Fett」
監督/ロバート・ロドリゲスほか 製作総指揮/ジョン・ファブローほか 出演/テムエラ・モリソン、ミンナ・ウェン、ペドロ・パスカル

賞金稼ぎボバ・フェットの活躍を描くアクション・アドベンチャー。ボバ役は『〜クローンの攻撃』でボバの父親ジャンゴ・フェットも演じたテムエラ・モリソン。「ボバ・フェット/The Book of Boba Fett」ディズニープラスにて全7話独占配信中。
© 2022 Lucasfilm Ltd.



宇都宮秀幸
編集者・ライター。ネット配信作品のレビューサイト「ShortCuts」などで海外ドラマの紹介記事を執筆中。TBSラジオ「アフター6 ジャンクション」出演。


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