木下古栗 (きのしたふるくり)

小説家。1981年生まれ。著書に『生成不純文学』『人間界の諸相』『サピエンス前戯 長編小説集』など多数。木下氏の短編「大量絶滅」が収録された『真藤順丈リクエスト! 絶滅のアンソロジー』が発売中。


GoToスペーストラベル


 読者の皆さん、おはよんにちんわ~! 珍フルエンサーの栗美です。ちょっと前の話になるけど、ZOZO創業者の前澤友作氏が国際宇宙ステーション(ISS)にGoToトラベルした出来事、すごかったわよね~。そして無事で何より。個人的に印象深かったのは前澤氏が帰還後、「地球を大事にしようと思った」って語ったこと。とゆーのも昔、アポロ計画で月に行った宇宙飛行士たちのその後を描いた『宇宙からの帰還』『月の記憶―アポロ宇宙飛行士たちの「その後」』っていうノンフィクションを二作読んだんだけど、宇宙飛行士の中にも、同じような意識の変化を語った人がいたの。



 そんな話をある夜、婚約者のクリス(サッカー選手のクリスティアーノ・ロナウドにそっくり)と行きつけのバーでしてると、大して飲んでもいないのに、急激な眠気が…。ガクッと意識を失って、気がついた時には見知らぬ部屋の中…。ここはどこ? って焦って室内を見回すと、そこには何と宇宙人が! 目が合った瞬間、「≫△$#○*♪」って、何語か分からない言葉で話しかけられたの。すると隣で目覚めてたクリスが「宇宙に行きたいかって言ってるみたいだ」となぜか翻訳。「何で分かるの?」「分からない…もしかしたら俺も宇宙人なのかもしれないな」と自分でも驚いたように苦笑を浮かべるクリス。それからクリスは片言の宇宙語で会話まで始めて、それを私に翻訳。「週末、宇宙にUFOでドライブに行くから、それに連れていってあげようかって言ってる」「えっ、でも何で?」「妙な理屈なんだが、宇宙人っていうのは人間の想像の産物らしくて、こうやって時々、人間を誘拐して自分の存在を信じさせないと、やがて消え去ってしまうそうだ。そしてその存在を強く信じさせるには、UFOに乗せるくらいの体験をさせなきゃいけない」「そーなの?」


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 そーゆーわけで次の週末、宇宙人とGoToスペーストラベルを決行。約束した時間に宇宙人の都内の自宅1にまた誘拐されてから、まず無重力に慣れるための秘密施設2へ。インストラクターさんの手本に従いながら空中浮遊して、移動や体勢確保の練習。
 その後、車検が終わったばかりだというUFOの待機する乗り場へ。このUFO3が本当に格好良くて、ワクワク感が高まる。
 機内4に入ってみると意外と広くて、やっぱり未来的なデザインの空間。レインボーの照明がナイトクラブのような雰囲気でうっとり…。



 そしていよいよ、宇宙へ向けて出発。椅子に座ってシートベルトを締めて、宇宙人がリモコンを操作。すると虫の羽音のような唸りが聞こえて、機体がスーッと浮遊してく。次第に唸りがうるさくなる中、私とクリスはAirPods Proを両耳に装着して、ノイズキャンセリング。それを見た宇宙人がリモコンをもう一度操作した途端、UFOは一気に加速開始。そのまま加速度的に加速していって、終わらないジェットコースターみたいなスリル満点の乗り心地。どんどん大きくなる重力加速度Gに耐えながら、気絶しないよう、必死にラマーズ法で呼吸する。


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 そのうちに気がつけば、フワッと身体が浮く感覚が。思わず「宇宙?」って呟いて、隣のクリスと目を見交わした。シートベルトを外して、機内後方の床窓5を見に行くと、何とそこにはISSと船外活動中の宇宙飛行士の姿が! でも宇宙人が言うには、ステルス迷彩機能を使用中なので、向こうからはUFOの機体は見えないとのこと。さすが進んだテクノロジー。



 そしてその後、もっとヤバいテクノロジーを体験することに。「Ⅴ@#%≫≫」って宇宙人が言って、それは翻訳すれば「五次元に行くぞ」って意味。次の瞬間、いきなり幽体離脱するような超越的な感覚と共に、視界に強烈な光が飛び交った…! アーッ! イクーッ! イッちゃウーッ! って、ここが五次元6…!?



 ――ってゆーのは全部真っ赤な噓で、実はこの宇宙旅行はずっと地球上。①中銀カプセルタワービルの一室→②屋内スカイダイビング施設、フライステーション→③④東京都観光汽船の水上バス、エメラルダス(松本零士デザイン)→⑤宇宙ミュージアムTeNQの「シアター宙」→⑥エプソン チームラボボーダレス。
 大富豪じゃなくてもイケる宇宙旅行なので、是非真似してみてね。そして心の中でいいね&フォローよろしく。合言葉は#Oh珍々!