山本 昌

山本 昌
1965年神奈川県出身。中日一筋プロ生活32年、通算219勝、最多勝3回に沢村賞受賞など輝かしいキャリアを誇る球界屈指のレジェンド左腕。2015年にNPB史上初となる50歳での登板を最後に現役を引退。今年1月に野球殿堂入り。©株式会社ジーエー・リンク


「絶対大丈夫!!」とはいかない? 
今年も波乱の予感


―ずばり、山本昌さんから見た今季のセ・パそれぞれの優勝争いの行方は?

 まずパ・リーグはソフトバンクが頭一つ抜けていた時期と比べて戦力は拮抗。昨年の王者オリックス、ここ数年積極的に補強している楽天、井口(資仁)監督のもと1点の取り方が非常にうまいロッテ、相変わらず打線が強力な西武。日本ハムは現状やや戦力的に落ちますが、そういうときほど救世主的な選手が現れますので。

そんな中、私はソフトバンク、オリックス、ロッテによる優勝争いを予想。特にオリックスはスーパーエース山本由伸投手に加えて宮城(大弥)投手ら先発陣が充実していて大きな連敗をしにくい。打撃陣には吉田正尚選手がいて、ラオウ(杉本裕太郎)選手はじめ中嶋(聡)監督が2軍監督時代に見いだした野手たちがさらに成長すれば連覇の可能性も十分。ロッテは佐々木朗希投手(写真1)が先発ローテーションにしっかり入ってくれば優勝してもおかしくないですね。


写真1

佐々木朗希 / 千葉ロッテマリーンズ

千葉ロッテマリーンズ佐々木朗希 Roki Sasaki

2001年岩手県出身。最速163㎞/hの豪速球をひっさげ、大船渡高から4球団競合のドラフトを経て千葉ロッテ入団。2年目の昨季、甲子園の阪神戦でプロ初勝利。


 セ・リーグはさらに混戦模様。まずヤクルトのキーマンは奥川恭伸投手(写真2)。昨年は主に中10日の起用で日本シリーズでも無理をさせなかったところに高津臣吾監督の信念を感じましたが、投手陣に不安があるだけに彼が先発の軸になれるかが連覇のカギを握ります。

巨人もエース菅野(智之)投手に加えてもう二人ほど強力な投手が出てきてほしく、阪神は昨季の守護神スアレス投手の退団によるセットアッパー岩崎(優)投手の負担増をどうサポートできるか。DeNAも課題は投手。故障などで一度もローテーションに揃ったことがない左のエース格3枚、今永(昇太)投手、東(克樹)投手、濵口(遥大)投手が並べば打線が強力なだけにチャンスあり。

広島と中日はやはり打撃が課題。広島は鈴木誠也選手が抜けた穴を坂倉(将吾)選手や小園(海斗)選手ら若い野手陣の成長でどう埋めていくか、中日は慢性的な長打力不足をどう解消するか。個人的には中日の石川昂弥選手(写真3)に期待したい。長打力のポテンシャルは非凡なものがあるので、彼がレギュラーとして成長すれば得点力はぐんと伸びるでしょう。


写真2

東京ヤクルトスワローズ  / 奥川恭伸

東京ヤクルトスワローズ奥川恭伸 Yasunobu Okugawa

2001年石川県出身。星稜高から’20年に東京ヤクルト入団。球威、制球力ともに超一級品で、プロ2年目ながら昨季は9勝4敗、防御率3.26とエース級の活躍。


写真3

石川昂弥 / 中日ドラゴンズ

中日ドラゴンズ石川昂弥 Takaya Ishikawa

2001年愛知県出身。東邦高の4番エースとして春のセンバツ優勝。その天性の長打力を多くの評論家が「モノが違う」と絶賛。プロ3年目、ついに開花なるか。


―3人の新監督についてはどんなところを楽しみにしていますか?

 中日のキャンプを見た限り、立浪(和義)監督は優しい中にも言葉一つ一つにピリッとした空気が漂っていてそれが選手たちにしっかり浸透している感じがします。その点は星野(仙一)監督の影響を受けていると思いますし、また落合(博満)監督の厳しい練習も受け継ぎつつすごくバットを振らせているなと感じましたので、昨年までくすぶっていた選手がポンと出てくる可能性もある。「打つ、走る、守る」という基本にのっとった王道の野球を見せてくれるでしょう。

日本ハムの新庄ビッグボス(写真4)は、何よりあれだけ注目されながら次々と既存の枠を飛び越えた発想で野球界を盛り上げる姿勢が素晴らしいですし、またキャンプでは1、2軍を行き来しながら選手一人一人を分け隔てなくフラットに見ているところも印象的でした。あとはシーズンに入ったときに選手たちがいかに「主役は自分たち」という自覚をもってプレーできるか。ソフトバンクの藤本(博史)監督は若い頃にファームで何度も対戦しましたけど本当に落ち着いた方でね、ビッグボスや立浪監督と比べると目立ちませんけど、12球団で最も戦力をもっているチームですからまったく心配していないですね。


写真4

新庄剛志監督 / 北海道日本ハムファイターズ

北海道日本ハムファイターズ新庄剛志監督 Tsuyoshi Shinjo

1972年福岡県出身。かつて阪神、MLBのメッツとジャイアンツ、北海道日本ハムでプレーし、芸術的な守備と勝負強い打撃でファンを魅了。果たして采配は!?


―今季、山本昌さんが特に注目しているブレイク必至の選手とは?

 最も期待したいのは、無限の可能性を秘めたロッテの佐々木投手とヤクルトの奥川投手。あれだけのボールを投げられる投手は10年に一人生まれるかどうか。それが同時に二人もというのは本当にすごい。今年は彼らが日本を代表する投手になるためのステップアップのシーズンになるはずです。

次に、打者では先にお話しした中日の石川選手と、阪神の佐藤輝明選手(写真5)。佐藤選手は昨年序盤のような活躍を一年通してやれたらとんでもない成績を残すでしょう。それくらいの能力をもっている打者だと思うのでさらなる覚醒に期待したい。またベテランにもぜひ注目を。200勝を目標に掲げるヤクルトの石川(雅規)投手、ソフトバンクの和田(毅)投手、西武の内海(哲也)投手、オリックスの能見(篤史)投手の「40代カルテット」は同じ左投手として個人的にすごく応援しています。


写真5

佐藤輝明 / 阪神タイガース

阪神タイガース佐藤輝明 Teruaki Sato

1999年兵庫県出身。昨季はルーキーながら日本人離れしたパワーで、甲子園の浜風をものともしない規格外の本塁打を連発。若き阪神の新4番定着にも期待。


―最後に、山本昌さんの考える「日本のプロ野球」を楽しむ醍醐味とは?

 かつてメジャーでも活躍した上原浩治さん曰く、「投手は日本のプロ野球が世界一だ」と。例えば工業製品にも通じるような、技術力を追求する日本人ならではの匠の技を堪能いただくのも大人ならではの楽しみ方なんじゃないでしょうか。あとはぜひ球場で生の野球を観ていただきたい。応援風景はもちろん、乾いた打球音やボールがキャッチャーミットに収まる迫力のある音をぜひ聞きにいってほしいですね。

©産経新聞社

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Composition&Text:Kai Tokuhara