エミー賞主演女優賞も納得の
傑作ヒューマン・ミステリー

タイトルにある「メア」とは、『タイタニック』『愛を読むひと』の名女優ケイト・ウィンスレットが今作で演じる田舎町の刑事の名前だ。題名が象徴するように、このサスペンス・ドラマの中心にあるのは実は事件自体ではなく、主人公の人生そのもの。そういう意味では、犯罪捜‍査の刺激だけを目当てに見てしまうと、‍少し面食らう人もいるかもしれない。

住人の多くが互いに顔見知りのような小さな町で若いシングルマザーが射殺される事件が発生。1年前の少女失踪事件も抱える地元警察の刑事メアは調査にあたるが、事態は思わぬ展開を見せていく。

アルコール依存症気味、電子タバコを気ぜわしく吸いまくるメアは、家族に関する過去の出来事への葛藤から不安定な状態にある。老いた母親、思春期の娘、幼い孫との同居生活、さらに町の人々との濃密な人間関係をじっくりと描く序盤はややスローペースだが、物語後半にはすべてが必要不可欠な描写だったことがわかるだろう。もし2時間の犯罪映画だったら背景程度にさらりと語られるはずのメアの心の揺れは、捜査の進展と同じ重さをもって丁寧に掘り下げられていく。

あえて言ってしまえば、今作は緻密な犯罪ミステリーと優れたヒューマン・ドラマが高い次元で融合したような特別な作品だ。ウィンスレットの完璧な演技もあり、誠実かつ身勝手でもある生身の中年女性メアの人間くささには強烈に惹きつけられるし、各話ごとに一体誰が犯人かわからなくなる巧みな筋運びも飽きさせない。だが最終的に二つの要素は「親の子どもに対する思い」という普遍的なテーマのもとで結びつく。最後の最後で待っている意外すぎる結末には「やられた!」と驚かされる一方、思わず涙がこぼれてしまったことも告白しておこう。

人生における取り返しのつかない間違いや、どれだけ時間がたっても消えない後悔。扱われているのは誰もが思い当たる重いテーマだが、同時にそれを克服しようとする人の強さにも光が当てられている。ウィンスレットの素晴らしさを堪能できるのはもちろん、個人的には今年ベスト級のドラマであると断言したい。


「メア・オブ・イーストタウン/ある殺人事件の真実」
監督/クレイグ・ゾベル 脚本/ブラッド・イングルスビー 出演/ケイト・ウィンスレット、エヴァン・ピーターズ、ガイ・ピアース

2021年エミー賞リミテッドシリーズ部門で主演女優賞をはじめ3部門を受賞。田舎町で起きた少女惨殺事件に挑む女性刑事の姿を描くサスペンス。U-NEXT「メア・オブ・イーストタウン/ある殺人事件の真実」全7話配信中。

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宇都宮秀幸
編集者・ライター。ネット配信作品のレビューサイト「ShortCuts」などで海外ドラマの紹介記事を執筆中。TBSラジオ「アフター6 ジャンクション」出演。


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