木下古栗 (きのしたふるくり)

小説家。1981年生まれ。著書に『生成不純文学』『人間界の諸相』『サピエンス前戯 長編小説集』など多数。木下氏の短編「大量絶滅」が収録された『真藤順丈リクエスト! 絶滅のアンソロジー』が発売中。


もっこりパン


 読者の皆さん、おはよんにちんわ~! 珍フルエンサーの栗美です。ようやくガチンコでクソ蒸し暑い季節も完全に過ぎ去って、過ごしやすくなったわね~。そんな今日この頃と言えば、スポーツ、読書、芸術、そして何とゆっても、食欲の秋! 私もご多分に漏れず食欲モリモリ毛利元就なんだけど、最近は小腹が空くとブーランジェリーすなわちパン屋さんに行って、おやつパンなんかをよく買うのよね。で、秋ってなるとサツマイモとかカボチャとか、私の名前にも入ってる栗とか、そういうホッコリ系の季節の食材を使ったおやつパンが目白押し。お店に行くたびに新商品が出てたりして、つい二つも三つも買っちゃったり。しかも朝食のために買ったはずなのに、我慢できずに夕食の後にかぶりついちゃったりもして。欲望をそそるのよね~。

 そんなある日、寝る前にふと戯れに考えたの。もし私がブーランジェリーKURIMIを開店するとしたら、目玉商品は何のパンにする? パン屋さんやケーキ屋さんが子供の頃の夢だった女子も多いと思うんだけど、こういうのって妄想するのが楽しいのよね~。でもその時はアイデアが浮かぶ前に睡魔に負けて、グッスリ寝落ち…。 

 ところがその翌朝、目覚めた瞬間、パッと頭の中に美味しそうなパンの姿が浮かんだの! それは名付けてもっこりパン。男性の下半身のアイコニックな部位をモチーフにしたもの。実は寝てる間、少しだけ淫夢を見たので、それと寝る前に考えてたパンのことが、脳内でドッキングしたのかも。睡眠って無意識の思考がはたらいて、アイデアを閃かせる効果があるってよく聞くけど、まさにそれ。そして珍フルエンサーとしては、そのパンを実際に作ってみるっきゃないって思い立ったの。

 突拍子もないアイデアってスピード命で具現化しないとすぐ色褪せちゃうから、もう強力粉だのイーストだのを買ったり、量ったりこねたりしてる暇なんてない! とゆーわけで出来合いの冷凍生地を何種類か購入。ラップをかけて数十分解凍1すれば、もう成形していいという便利な世の中。まずソフトめのフランスパン生地でウオモ(イタリア語で男性って意味よ)の棒を作り、バター入りのクロワッサン生地で袋を作る。袋の中には栗の甘露煮をふたかけ入れて、それが玉々になるっていう仕掛け2。だけどこの冷凍生地、解凍が進むうちにどんどん柔らかくなっていって、意外と成形が難しいの。特にタートルネックのくびれのところとか。うまく形を作ろうと触れば触るほど、ふにゃふにゃにゆがんでイッちゃうっていうか。やっぱりパン生地ってビンビンに硬いわけじゃないから、そのぶん扱いが本当に大変…。


1冷凍生地を解凍中。2柔らかくなったら成形。


 それでも何とか成形して、棒と玉袋を合体。そしてそれをデニッシュ生地とかパイシートで作ったブリーフ型の土台にのせる3。さらにその上からもう一枚のブリーフ型の生地をかぶせて、要するにパンツをはかせる。そうしたら数十分、今度は熟成させるの。そして時が来たら、照りを出すために卵黄を塗り塗り4。どうかしら? この艶姿はまさにもっこりじゃない? よだれが出そうじゃない? 練習として珍々のパンを何体も作っちゃったので、それもまとめて焼くことにして、オーブンにイン!


3リアルすぎて生掲載NGとなり、モザイク処理を余儀なくされる珍々。4焼く前。ロケットや宇宙船みたい。


 その結果、焼き上がりがこれ5。そしてお皿に盛り付けるとこのように6。こんがりした色艶は美味しそうだけど、もっこりパンのもっこり部分は珍々のフォルムじゃなくて、単なるドーム型に。そこがちょっと不満な出来。一方、丸出しの珍々パンの方は何となく、クリオネっぽくて可愛いんじゃないかしら。


5焼き上がり。6さあ召し上がれ!


 で、まず珍々パンの方から食べてみると、ちょっとベーグルっぽいもっちり感がある歯応えで、さすがに焼きたては美味。冷凍生地でもしっかり小麦の香りと甘みもある。そして袋の中の甘い栗もコロッとして嬉しい具。ちなみに実は玉々として某和菓子店の栗餡を入れたバージョンも作ったんだけど、それはマジUMAの栗餡パンになったので、本当にオススメ。でもね、肝心のもっこりパンの方なんだけど…パンをパンで包んだせいか、焼き時間が足りなかったのか、中身はもろに生っぽくて、とても食べられたものじゃなかったの…。やっぱりパンツの中って湿っちゃうのよね…。そーゆーわけで形としても食べ物としても失敗作…。 

 何だか湿っぽい話になっちゃったけど、是非誰か私の代わりにリベンジしてみてね。そして心の中でいいね&フォローよろしく。合言葉は#Oh珍々!


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