木下古栗 (きのしたふるくり)

小説家。1981年生まれ。著書に『生成不純文学』『人間界の諸相』『サピエンス前戯長編小説集』など多数。木下氏の短編「大量絶滅」が収録された『真藤順丈リクエスト! 絶滅のアンソロジー』が発売中。


珍婚旅行♥


  読者の皆さん、おはよんにちんわ~! 珍フルエンサーの栗美です。私事ですがこのたび、かねてより肉体関係にあった男性と婚約する運びとなりました。出会いは数ヶ月前、ジムにも行けず運動不足の私が街中でつい、島田珠代さんのアイコニックなギャグ、パンティーテックスを連発してると、ラテン系の外国人が声をかけてきたの。「ワオ、とても素敵なダンスだね!」と。見るとサッカー選手のクリスティアーノ・ロナウドに似てて、私好みの筋肉質。しかも彼ったらノリがよくて、その場でごく自然に、二人一緒にパンティーテックスを踊る展開に…。気がつくとお持ち帰りされて、夜のハットトリックを決められた…。それから私は彼を「クリス」って呼ぶようになって(クリロナに似てるから)、週末のたび、性のワールドカップが開催。そしてある夜、バックから激しく突かれながら「オーイエス! オーイエス!」と国際的な喘ぎ声を発してると、それにかぶせていきなり、彼が「結婚してくれるかい?」と。もちろん私は「オーイエス! オーイエス!」と白目を剝きながら吠え続けたーーってわけ。

 でも実際に永遠の愛を誓うとなると、一抹の不安も。なぜならクリスは精力絶倫すぎるから。そこで私はこう言ったの。「日本には成田離婚っていう言葉があって、新婚旅行で相性の不一致が分かって、ダメになるカップルもいる。だから婚前だけど新婚旅行に行って、その間、禁欲もできることを証明してほしいの。同居して毎晩のようにハットトリックを決められたら私の体が持たないし、人生の楽しみって何もファックだけじゃないでしょ?」「オーケー、じゃあアメリカ旅行にでも行こう。実は親友のバラクにたまには会いに来いって言われてるんだ。君のことも紹介したいしね」「えっ、バラク?…」

 そーゆーわけでまず、やって来たのは西海岸のカリフォルニア。往年の名作ドラマ「ビバリーヒルズ青春白書」を思い出す広々とした海沿いの風景1が最高! 開放的な雰囲気の中、クリスが肩を抱き寄せてキスしてこようとしたけど、私は「NO」と突き放す。なぜならこれは完全禁欲の旅だから。クリスはやれやれって感じに肩をすくめたけど、私は操を厳守。  お次は隣のネバダ州の、ラスベガスへ。きらびやかな電飾、そしてカジノ2! 禁欲って言ってもギャンブルは別だから、二人してポーカーやルーレットをエンジョイ。色んなショーも観たけど、パンティーテックスほどのインパクトは無し。珠代姉さんの偉大さを痛感した。


1いかにもカリフォルニアっていう風景。2ザ・ベガス感。


 そこから飛行機で東へ飛んで、南東部のフロリダへ。せっかくだからフロリダ発祥のカジュアルレストラン、フーターズ3に行ってみた。このお店はタンクトップにホットパンツのコスチュームを着たセクシーなウェイトレスが目玉。HOOTERSのHOOTってフクロウの鳴き声で、男性客がフクロウみたいにキョロキョロと目を動かして、ウェイトレスを見ちゃうからっていうのが名前の由来。でもクリスは一切、よそ見をしないで、ソースの絡んだ手羽先をしゃぶる私の口元をじっと欲望に満ちた眼差しで凝視。

 最後は東海岸沿いに北上してニューヨークへ。クリスの案内であのバラク・オバマ4と面会! と思いきや、実はマダム・タッソーっていう、有名な人形館の等身大フィギュア…。


3初フーターズ。4世界各地に分館のあるアトラクション施設、マダム・タッソーにて。


 名所巡りでエンパイア・ステート・ビルに行くと、そびえ立つビルが下半身の何かの象徴であるかのような、謎のポーズを取ってアピールするクリス5。そして日も暮れてきた頃、自由の女神6を眺めながら、ロマンチックな雰囲気に。今度は肩を抱き寄せられても、突き放せない私。そしてクリスが私の耳元で甘く囁く。

「CAN WE FxxK?」
「YES、WE CAN!」

 そしてお台場のホテルに駆け込んで、一夜にしてダブルハットトリックを決められたの。


5俺のエンパイア・ステート・ビル!とばかりにそそり立つ摩天楼。6自由の女神と向き合うクリスの後ろ姿。


 何で突然、お台場かと言うと、実は今回の旅行はずっと国内。1千葉フォルニア(千葉県袖ケ浦市)→2西日暮里のラブホ、ホテルパピオンのラスベガスがモチーフの部屋→3フーターズ銀座→4お台場のマダム・タッソー東京→5新宿のエンパイア・ステート・ビルことNTTドコモ代々木ビル→6お台場の自由の女神。

 要するに本当はただのデートだったんだけど、是非真似してみてね。そして心の中でいいね&フォローよろしく。合言葉は♯Oh珍々