ゴッホに魅せられた収集家、ゴッホを
目指した板画家。それぞれの愛を比べて

今年の芸術の秋の大本命展覧会『ゴッホ展――響きあう魂 ヘレーネとフィンセント』。展覧会の主役は、ゴッホの評価がそれほど高くなかった頃に彼の作品に魅了され、世界最大のゴッホコレクターとなったヘレーネ・クレラー=ミュラーです。彼女が実業家の夫とともに収集したゴッホ作品の総数は約270点。そんな“推し”のゴッホ作品を含む美術コレクションを広く公開すべく、彼女が全人生をかけて創設したのが、ファン・ゴッホ美術館と並んで、2大ゴッホ美術館と称されるクレラー=ミュラー美術館です。今展ではその美術館から選りすぐりのゴッホ作品の数々が来日。オランダ時代のまだ暗い色調の絵画や、ゴーガンと共同生活したアルル時代の絵画など見逃せない作品は多々ありますが、目玉はやはり《夜のプロヴァンスの田舎道》でしょう。ゴッホが亡くなる約2カ月前に描かれた作品で、ゴッホの代名詞ともいうべき糸杉をモチーフにした傑作です。パッと見、月が二つあるように思えますが、左側に浮かんでいるのは金星だそうですよ(その左下にあるのは水星)。


フィンセント・ファン・ゴッホ 《夜のプロヴァンスの田舎道》
1890年5月12-15日頃 
油彩、カンヴァス 90・6×72㎝ クレラー=ミュラー美術館蔵 
©Kröller-Müller Museum, Otterlo, The Netherlands


さて、クレラー=ミュラー美術館とほぼ同時期に、東京・駒場に開館したのが日本民藝館。「名も無き職人が生み出した日常の生活道具にも、美術品に負けない美しさがある」と、思想家の柳宗悦が当時まだ新たな概念だった“民藝”を推すべく設立した美術館です。展示ケースや照明、階段の手すりといった細部に至るまで柳の美意識が行き届いた館内には、彼の審美眼にかなった国内外の陶磁器や木工、染織などの工芸品が展示されています。そんな日本民藝館でこの秋開催されているのが、東北の民藝にスポットを当てた展覧会。


東北経鬼門譜 真黒童女 棟方志功 紙本墨摺 1937年 119.0×111.0㎝


柳がその手仕事文化の豊かさに魅了され、東北各地で収集したアイテムの数々が紹介されています。さらに、青森県出身で柳を師と仰いだ板画家・棟方志功の作品も紹介。東北への思いが込められた作品がフィーチャーされています。ちなみに棟方志功といえば、「わだば日本のゴッホになる」という言葉で知られています。「シコーはいつもゴッホ、ゴッホと言っているが風邪でも引いたかな」と皆にからかわれたこともあるそう。ヘレーネも棟方志功も、ラッセンより普通にゴッホが好き。


『ゴッホ展――響きあう魂 ヘレーネとフィンセント』
【東京都美術館】
東京都台東区上野公園8の36
開催中~12月12日※日時指定予約制 
TEL:050-5541-8600 
https://gogh-2021.jp

『棟方志功と東北の民藝』
【日本民藝館】
東京都目黒区駒場4の3の33
開催中~11月23日
TEL:03-3467-4527
https://mingeikan.or.jp/



とに〜
世界でただ一人のアートテラー。難解で敷居が高い美術のイメージを払拭すべく、元吉本芸人ならではの視点で面白おかしく美術の魅力を伝える。公式BLOGはこちら