ないもの尽くしの番組を貫く
人の“変さ”を愛おしいと思う感覚

僕の身体には一カ所だけめちゃくちゃくさい場所があります。オードリーさんを絶対に悶絶させてみせます!

という口コミとともに登場した男が、指にすりつけたへそのにおいをオードリーに嗅がせ、宣言どおりに悶絶させる。コロナ禍における自粛ですっかり疲弊していた時期に、テレビから流れるこの放送に、大笑いしながら、わたしはすっかり感動してしまったのだ。なんて無意味で、くだらないんだろう!と。名言、矜持、感動エピソード、苦労話、すべらない話…、今のテレビ番組は、とかく意味のあることであふれている。そんな中で、この番組は「へそのにおいがくさい」という事実だけをただ映し出し、学びもなければ、心に残るようなものもない。しかし、この“ないもの尽くし”は実はとても貴重なのではないだろうか。「無駄なことを一緒にしようよ」と歌った往年のSMAPのアティチュードを重ねてしまい、「どうにかなるさ 人生は」という気持ちにさせられてしまう。

中京広域のローカル番組として始まった「オードリーさん、ぜひ会ってほしい人がいるんです。」は、視聴者から寄せられた投稿の中から、気になる口コミを選びスタジオに呼んで短時間のトークを展開するという視聴者参加型のバラエティで、「日本一テレビ出演のハードルが低い番組」を自称している。少しだけ変わった人々が登場して、その“変さ”をただまき散らして、あっという間に帰っていく。ないもの尽くしの番組であるが、人々がもつ変な部分を肯定も否定もせず、ただありありと映し出すという姿勢は根本に太く根づいているように思う。これは番組MCであるオードリー若林の意図するところでもあるようだ。先日放送された「星野源のオールナイトニッポン」において、ゲストで登場した若林がこんな言葉を残している。

いわゆる“変わっている”って言われがちな人が、変わってるまま、何も解決せずに帰れるっていうことが目標なんですよね。〈中略〉人との違いとか、人のそのユニークな部分、その人のもっているものがすごい好きで、それを番組内で絶対に出したいんですよ。

ある人がもち合わせる“変な”部分。それは固有性のきらめきであり、もっと大げさに言えば、生命の愛おしさである。人の変な部分を、愛おしいと思う。この感覚が、「オードリーさん、ぜひ会ってほしい人がいるんです。」の人気の秘密なのではないだろうか。


「オードリーさん、ぜひ会ってほしい人がいるんです。」
出演:オードリー(若林正恭、春日俊彰)、磯貝初奈
中京テレビにて月曜24時59分から、日本テレビにて木曜25時59分から放送中。
※放送時間は変更の可能性があります。

「オードリーに会わせたい人」を募集(自薦他薦問わず)し、採用されると実際にスタジオで二人に会える視聴者参加型バラエティ番組。通称「オドぜひ」。

©️CTV



ヒコ
人気ブログ「青春ゾンビ」で、ドラマ、映画、お笑いなどのポップカルチャーのレビューを執筆。「10代の頃の自分が読んでも嫌な気持ちにならない文章を書く」ことが信条。