500万回再生で男は死ぬ…!?
ネットの闇に迫る本格推理劇

「クリックベイト」とは、ウェブ上の記事や動画に刺激的なタイトルをつけて閲覧者数を稼ぐ行為を指す。いわゆる「釣りタイトル」というやつだが、今作に登場する動画では、男が「500万回再生されたら私は死ぬ」と書いたボードを持たされて座っている。果たして彼に何があったのか? 彼は本当に死ぬのか? 劇中の無責任に再生ボタンを押す閲覧者と同じように、われわれ視聴者も興味をひかれずにいられない出だしである。 

動画の男ニックは、家族をもつ普通の男。彼の妹ピアや妻のソフィーは、動画は何かの冗談と思ったがニックが職場からも失踪していることを知り警察に通報。再生数はどんどん上がり、やがて新しいボードを抱えたニックの姿が。そこには「私は女を殺した」と書かれていた…。

冒頭を見るだけだと、被害者の救出を山場としたよくある誘拐もののサスペンスかな?と誰もが思うだろうが、ストーリーは早い段階で意外な急展開を見せ、想像もしなかった方向に転がっていく。事件の裏側は前述の妹と妻をはじめ、息子たち、刑事、記者、同僚、そして愛人など複数の人物を通して語られる。重要な要素となるのは、SNS、動画サイト、出会い系、位置情報アプリ、チャットなどなど、現在の社会ではもはや日常に深く入り込んだツールばかり。事件を追う人々は手がかりをこうした「デジタルの足跡」に求め、実際にそれらは真相に近づく役にも立つが、同時に登場人物たちは何倍も恐ろしい「ネットの闇」にのみ込まれていく。よき夫、よき父親であるはずのニックは、実際は複数の愛人をもつ女性の敵だったのか?

その答えはぜひ自身の目で確かめてほしいが、ついに明らかとなる真実は非常にグロテスクな、しかしネット社会においては十分にあり得るだけにゾッとさせられるものである。有名俳優こそ出ていないものの、本作は物語の面白さ、そして結末の驚愕度で勝負した本格派のミステリーだ。ネットの向こう側にいる人は本当は誰なのか? 現代ならではの恐怖を、ここまで正面から描いた映像作品はあまり見たことがない。


「クリックベイト」
製作総指揮・脚本/トニー・エアーズ 監督/ブラッド・アンダーソンほか 出演/ゾーイ・カザン、エイドリアン・グレニアー

アメリカ&オーストラリア合作のサスペンス・ミステリー。誘拐され殺害を予告された男をめぐる事件の真相に迫る。監督は『FRINGE/フリンジ』のブラッド・アンダーソン。Netflix「クリックベイト」全8話配信中。



宇都宮秀幸
編集者・ライター。ネット配信作品のレビューサイト「ShortCuts」などで海外ドラマの紹介記事を執筆中。TBSラジオ「アフター6 ジャンクション」出演。