初回は『映画大好きポンポさん』。あ、タイトルでスルーした人、フトコロ狭っ! アンテナ低っ! これ、超骨太な映画です。アニメ的な絵のタッチの奥にあるオトナの鑑賞に応える骨太なテーマ、見抜いてほしいですね…!

6月の公開当初、上映劇場は59。コロナ禍の席数制限で、実質的な公開数は半分以下。アニメにしても小規模公開でしたが、作品の力で経済規模以上のムーブメントを引き起こしました。

タイトルにある「ポンポさん」とは、いかにもアニメ然とした女子キャラクターですが、中身は超敏腕映画プロデューサー。彼女が顔色の悪い映画オタク青年「ジーンくん」に、15秒CMの制作を通じて監督としての才能を見いだし、実写映画のメガホンを託します。伝説の俳優の復帰作が生まれたり、ヒロインに抜擢された新人女優がジーンくんと一緒に成長したり、映画づくりにおける資金繰りの様子が描かれたり、と見どころはたくさんあるのですが、『映画大好きポンポさん』という作品自体のテーマは「クリエイティブとは?」という問いかけ。プロデューサーの覚悟を感じながら「クリエイティブとは?」と自問自答したくなるシーンをアニメで描いています。

ネタバレになるので多くは語れないのですが、本作は設定上「絶対にある時間内に収めなければいけない作品」です。その点について監督の平尾さんに話を聞くと、映画が完成した当初はその“ある時間”より50秒もオーバーしていたそうです。アニメ制作において完成した映像から50秒を短縮するのは至難のワザなのですが、編集担当の今井剛さん(日本アカデミー賞最優秀編集賞受賞)が、監督すら気づかないレベルで見事に短縮。編集が終わった瞬間、今井さんが口にしたのが「あ、2フレーム足りない」という言葉だったそう。つまり、今井さんはご自身でも監督も気づかないうちに50秒どころかさらに2フレーム分余計に短縮してしまう神業を披露してしまいました。この逸話にもクリエイティブを感じませんか?

本作のキャッチコピーは「幸福は創造の敵」。このコピーがポップなキャラクターの絵とともに書かれていたら、オトナなら当然、挑戦的な作品だってことに気づきますよね?


『映画大好きポンポさん』
原作/杉谷庄吾 監督・脚本/平尾隆之 キャラクターデザイン/足立慎吾 声/清水尋也、小原好美

もともとはネットで公開された杉谷庄吾【人間プラモ】作のマンガ。ある映画プロデューサーが、「アニメは疾走するからうらやましい」と言っていましたが、『映画大好きポンポさん』は、アニメ業界に数年に一度やってくる“疾風”。2021年6月の公開から最大瞬間風速で吹き続け、あっという間に上映館数が拡大。小規模なアニメ映画としては、異例のロングラン上映を実現しています。

©2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/ 映画大好きポンポさん製作委員会


吉田尚記
ニッポン放送アナウンサー。アニメやアイドルに造詣が深く、「マンガ大賞」の発起人でもある。VTuberとしての顔ももち、アナウンサーの枠を超えて活躍中。



Text:Yoshito Tanaka