杉山すぴ豊 Sugiyama Supi Yutaka
「アメキャラ系ライター」の肩書でアメコミ映画やドラマの情報発信をさまざまなメディアで展開。東京コミコンのスーパーバイザー、「DC展」のガイドも担当。


杉山すぴ豊が語る受け継がれるサーガ

「MCU」はなぜこんなに愛されているのか?

マルチバースによって、MCUは壮大なサーガをつくりあげている

『アベンジャーズ』 ディズニープラスで配信中 © 2021 Marvel

「MCU」とは、マーベル・シネマティック・ユニバースの略称で、スーパーヒーローたちが活躍するアメコミ「マーベル・コミックス」を原作とした一連の実写映画をいう。2008年の『アイアンマン』からスタートし、現在はフェーズ4と呼ばれる段階に入り、すでにアメリカ本国では’23年までの公開スケジュールが発表され、さらにネット配信されるドラマ作品を含めるとラインナップは優に30作品を超える。

© 2021 Marvel

『アベンジャーズ』
ディズニープラスで配信中
S.H.I.E.L.D.の長官ニック・フューリーは、世界の危機を救うため、ヒーローチーム「アベンジャーズ」を結成する。メンバーは、アイアンマン、ハルク、ソー、キャプテン・アメリカ、ブラック・ウィドウ、ホークアイ。強大なチタウリの軍を率いるアスガルドの神ロキとの戦いが始まる。


 では、MCUがなぜこれほどの壮大なサーガを形成することができたのか。その理由をアメコミ系ライターの杉山すぴ豊さんはこう語る。

「まずは原作コミックのキャラクターが魅力的であること、さらにMCUの全作品にかかわるケヴィン・ファイギという優れたプロデューサーがいること、そして“マルチバース”という便利な設定があることだと思います」

 マルチバースとは、多元宇宙論と訳され、要するにこの世には別の宇宙がたくさんあり、パラレルワールドが存在するという考え方のこと。アメコミはこのマルチバースという設定を積極的に取り入れている。

「というのも、マーベル・コミックスであれば80年を超える歴史があり、新しい読者を取り込むために、その時々の価値観や流行に合わせて世界観をリセットしたり、また新たな視点でヒーローの物語をつくり直して新シリーズを始めないとファンの裾野が広がっていきません。例えば、初期に登場したキャラクターはどうしても白人で男性のヒーローが多いのですが、時代に合わせて『ブラックパンサー』では黒人のヒーローを、『キャプテン・マーベル』では女性のヒーローを登場させました。また、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』では黒人のキャプテン・アメリカを描きましたし、今後は女性のキャプテン・アメリカが出てくることも十分に考えられます」

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『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』
ディズニープラスで配信中
偉大なヒーローであるキャプテン・アメリカが去った世界で、その象徴ともいえる盾を託されたファルコン。責任の重さから自分にはキャプテン・アメリカの代わりは務まらないと悩むファルコンだが、やがてウィンター・ソルジャーとともに世界を揺るがす壮大な戦いに巻き込まれていく。


 マルチバースだと、「あなたの好きな作品はこの世界の話でした」「今描いているのはこの世界の話です」という解釈がムリなく成立するため、同じヒーローでも、違う人種やジェンダーで語ることができるのだ。 「今後、新しいアイアンマンが登場する映画が公開されたとして、『アイアンマンはやっぱりロバート・ダウニー・Jr.がよかった』と思う人は間違いなくいます。マルチバースの概念だと、『今回のアイアンマンは別のバースなので、ロバート・ダウニー・Jr.の世界とは違います』となり、前のシリーズがなくなったことにはならないのです」

 すべてが共存していることになるから、さまざまなファンの思いに応えることができるし、時代と並走しながら新たな物語をつくっていくことができる。MCUがサーガ化していくのは当然の流れだと言える。一方で、これだけたくさんの作品があるので、いったいどれから手をつけていいのかわからないという人は多い。

「理想を言えば2008年公開の『アイアンマン』から公開された順に観ていくことをおすすめしますが、手っ取り早くMCUを理解したいという人はまず『アベンジャーズ』と『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を観るといいでしょう。この2作品を観ておけば、「こういうヒーローがいるんだな」とわかります。そのうえで、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』と『アベンジャーズ/エンドゲーム』を観れば、MCUの大体の流れはつかめるんじゃないかなと思います」

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『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』
ディズニープラスで配信中
悪党ロナンが狙っているオーブを盗んだことで懸賞金を懸けられてしまうピーター・クイル。アライグマのロケット、樹木型ヒューマノイドのグルート、ミステリアスな暗殺者ガモーラ、そして復讐に燃えるドラックス・ザ・デストロイヤーとチームを組んだクイルは、銀河を守るために奮闘する。


 今後もMCUは続いていくが、これから公開される作品で杉山さんが楽しみにしているのは、『ブラック・ウィドウ』(’21年7月8日公開予定)と『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(’21年公開予定)だという。 「『ブラック・ウィドウ』の主人公は、『エンドゲーム』で死んじゃっているんですけど、なぜ死んでしまったキャラクターを現在のフェーズ4の最初のほうにもってきたのか。ケヴィン・ファイギという人は間違いなくそこを考えていると思うので、その狙いが気になります。なお、ヴェノムやスパイダーマンの映画化権は、実はソニー・ピクチャーズがもっています。スパイダーマンはその状態でMCUに参加していますが、ソニーはヴェノムをはじめ独自のマーベル映画を展開。『ノー・ウェイ・ホーム』で描かれるマルチバースでMCUとソニーの映画世界がつながる可能性も。一方、マーベルと双璧のバットマン、ワンダーウーマン系のDCも勢いがある。アメコミ・ヒーロー映画の楽しみ方は広がるばかりです」

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『ロキ』
ディズニープラスで独占配信中
『アベンジャーズ/エンドゲーム』の中で、アイアンマンたちが訪れた過去の世界で時空の瞬間移動を可能にする四次元キューブを手に消え去ったロキは、謎の組織に拘束される。自分が改変した現実を元に戻し、世界の時間を修復しなければならない。配信されたばかりのシリーズ新作。



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Photos:Yuya Iwaki(Mr.Sugiyama) 
Interview&Text:Masayuki Sawada