2023.04.03

GLM|京都のEVエンジニアが未来を変える!【文化系男子は電気自動車の夢を見るか?Vol.16】

カーボンニュートラルな環境意識の高まりとともに続々と誕生しているEV。もはや次にクルマを買うならEVしかない? 今回は京都発のEVベンチャー「GLM」について。

GLM|京都のEVエンジニアが未来を変えの画像_1

Vol.16

京都のEVエンジニアが 未来を変える!

GLM

GLM_京都のEVエンジニア
 驚かれるかもしれないですが、今、世界で日本のEVはけっしてフロントランナーであるとは言えません。EV覇権争いはテスラを筆頭に、各国のスタートアップ勢と中国勢、そして急速にEV化を進める欧州の既存メーカーが中心。日本が後れをとった原因のひとつには、よくも悪くも驚異的な燃費を誇るハイブリッドカー(HV)が普及してしまったことでEVシフトが遅れたことが挙げられます。もしも家電のようなガラパゴス化に陥れば、自動車産業は日本経済を支える基幹産業とあって一大事です。

 そんな中、日本でいち早くEVの可能性を見いだした企業が京都にあります。今から10年以上も前にEVのベンチャーとして産声を上げた「GLM」は、HVで日本が世界を席巻していた頃にEVのスポーツカーを開発。しかも量産して発売した実績をもつ類いまれな存在です。国内の大手自動車メーカー出身の志の高いエンジニアが集結したからこそなし得たといえるでしょう。


GLM_トミーカイラ ZZ_国産スポーツカー

初代プラットフォームを 基に造った初の量産モデル

GLM初のEVは、伝説の国産スポーツカー「トミーカイラ ZZ」。ベンチャーの規模でゼロから開発。量産に成功し話題をさらった。軽量な車体と相まって、抜群の加速性能を味わえる。※現在は生産終了


 そんな勇気と努力の甲斐あり、その後も社会から重宝され、今や国内外の多くの企業のEV開発に携わっています。エンジニアの皆さんが囲んでいるEVプラットフォーム(上写真)は、第一世代として、これまで数々の試験車両やコンセプトカーのベースになってきたもの(現在、第二世代を開発中)。多岐にわたる開発の最新例の中には、EVの車両そのものの開発だけではなく、電動化時代を見据えた自動運転に関する技術開発まであります。


 自動運転は、電動化と並んで最重要な課題のひとつ。驚異的な加速性能をもつEVが普及する時代を見据えると、いっそう制御技術の進化が求められます。運転が上手な人ほどブレーキのタッチやハンドル操作がソフトでしなやかであるように、自動運転となれば、そういった細やかな動作をクルマが自動で行う必要が出てきます。そこでGLMは、自動運転のアルゴリズムを開発する企業に向けて、遠隔でラジコンのように操縦できる試験車両を開発。車両の挙動や運動性能を計測し、自動運転がぎこちなくならないよう、人間の感覚に沿った細やかなチューニングを可能にしています。実際にテスト走行を見せてもらいましたが、無人のスポーツカーが、車庫入れから急発進、ドリフトといった豪快な走りまでを実現する姿を目の当たりにし、とても驚かされました。


 このほかにも数々の開発が進行中。彼らがこれからも日本の電気自動車の未来を牽引してくれることを切に願っています。


GLM_AKXY_アクシー_コンセプトカー
旭化成がもつ最新のセンシング技術やマテリアルを採用したコンセプトカー「AKXY(アクシー)」。スポーツカーであるトミーカイラ ZZのEVプラットフォームを活用し、SUVとして再設計。現在、世界中のEVメーカーが行っている手法を先取りして形にした一例だ。

GLM_アポロ・G2J_アポロ フューチャー モビリティ
GLMの実績は国内にとどまらない。グループ会社であるアポロ フューチャー モビリティが開発を進める「アポロ・G2J」には、プラットフォームの段階からGLMの技術が提供されている。アポロは、スーパーカーの性能をしのぐ「ハイパーカー」を生み出すブランドとして期待が高まる。

GLM_シニアカー_エレクトリック モビリティ スクーター
EVで培った技術はあらゆるモビリティに役立つ。GLMは、高齢化社会へのソリューションとして、シニアカーをデザイン目線で再定義。こちらの「エレクトリック モビリティ スクーター」は、市販化を目指し開発中。既存のシニアカーのイメージを覆す一台に注目したい!

神保匠吾
1982年福岡県生まれ。オンラインモーターマガジン「DRIVETHRU」ディレクター。学生時代に乗っていたBMW初代3シリーズ(E21)を電動化し、EVライフを実践中。詳しくはhttps://drivethru.jpへ。



Illustration: Tabito Sugiyama
Text: Shogo Jimbo

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