時計には大切な人から譲り受け、次の世代に託す楽しみがある。祖父、父、恩師から思い出の一本を受け継いだ6人に、そのエピソードを教えてもらった。また、彼らが未来へ引き継ぎたいと思っている特別な一本とは。
ヨシオクボ、ジョン スメドレーなどのブランドPRを手がける。ソットサスがデザインしたセイコーの腕時計もお気に入り。休日釣りに行くときはタイドグラフ搭載の時計を使用。
(受け継いだ時計)GRAND SEIKO / ’70年代の56GS
受け継いですぐ、オリジナルのメタルバンドを自分のスタイルに合う黒の革ベルトに替えて愛用。修理やメンテナンスは地元の時計店だが、革ベルトの交換は銀座・和光で行っている。ゴローズの革ブレスレットとセットでつけることが多いそう。自動巻き。SS。ケース径36㎜。/私物
(引き継ぐ時計)GRAND SEIKO / SBGW291
「44GSの現代デザインモデル」コレクションの中でも36.5㎜といちばん小径なのがこちら。’60年代モデルを踏襲した薄型のデザインが好印象で、真摯なものづくりの姿勢にも共感している。手巻き。SS。ケース径36.5㎜。¥726,000/グランドセイコー(セイコーウオッチお客様相談室)
日本人の熱量が感じられる国産時計に魅せられて
普段からよくつけているグランドセイコーの「56GS」は、祖父の形見分けです。二世帯住宅で育ったので、勤勉で真面目な祖父が、定年退職の記念品としてこの時計を贈られ、日常的につけていたのを覚えています。いつもリビングの日当たりのいいサイドボードの上に置いていたため、もともとクリーム色だった文字盤が焼けてこのオレンジ色になりました。20歳ぐらいでようやくこの時計のよさに気づいて、それからは祖父に「欲しい」とことあるごとに伝え、「いつかあげるよ」と言われていたので、他界した10年前に僕が受け継いだんです。日本がクオーツ時計で世界を席巻した’70年代に、国産機械式腕時計の最高級モデルとして「56GS」が登場した背景を知り、当時の日本人の熱量と祖父の勤勉さが通じている気がして愛着が湧きました。
もともとはデザインウォッチが好きだった僕も年を重ねて、次に時計を買うならやはりグランドセイコーがいいなと、今は’60年代の「44GS」をヘリテージとする、「SBGW291」を狙っています。小径でシンプルという点はもちろん、現実的に手が届く価格というのも大きい。また国産時計なら、時計技師のいる町の時計店でもメンテナンスができたりして、気軽に引き継いでもらえる気がします。実際、祖父の時計は、地元である大田区糀谷の麻生時計店で見てもらっています。僕のようにいつか孫が気に入ってくれたら最高ですね。