愛は細部に宿る
長谷川昭雄さんが監修した7月号「大人ってやつは。」特集は、さまざまなジャンルで活躍する「仕事人」たちのドキュメント。何かを突き詰めている人の話はやっぱり面白い。取材を通して、いろいろな方に出会うことができたけど、ZORN×UOMOのコラボTシャツのディレクションをしてくれた“し”さんは、大好きになってしまった先輩。「ALWAYTH」などを手掛ける謎多きグラフィックデザイナーなのだが、その閃きと細部への目配せがすごい(長谷川さんは“し”師匠と呼んでいる)。そんな、“し”さんがコラボTシャツをディレクションしてくれたときのやり取りを一部抜粋。
「同じ写真を使っていても、雑誌の誌面での再現性とTシャツにおける再現性って別物なんだよね」「今回のシルクスクリーンのプリントTは9版使っているんだけど、アメリカにはもっと版を使っているTシャツもあるんだよ」「白シャツの陰影だけで1版使ってしまった! 贅沢だよねえ」「見て見て、“白抜き”と“載せの白”の違い!」「こことここのサイズは、きっちり合わせたいんだ」「いかにいい生産背景を知っているかも経験なのです。だから、今回はこの工場さんにお願いしたんだ」などなど。
全くプリントについての知識がない自分にも目をキラキラさせて(電話で話すことも多かったので想像)、説明してくれる。そんな話から、「あのストリートブランドのプリントTってほんとヤバくてさ」と話がいい意味で脱線していく時間が楽しい。一緒に街中を歩いていると、何かのセンサーが働き、立ち止まって写真を撮り始める。「こんなところを見てるのか!」という視点が本当に面白い。そして、とにかく時間がないときも「意見交換は重要なデザイン要素なのです!」と、ピンチの瞬間すら楽しもうとする。話していると「あっ、この人は好きだ」というポイントがたくさんあった。世界の見方を更新してくれる先輩。
このバンダナは、そんな“し”さんからいただいたもの。下高井戸の床屋さん「BARBER SAKOTA」とのコラボアイテムなのだが、ここにもきっといろいろなギミックが詰まっているに違いない。床屋さんの「サインポール」(赤・白・青がぐるぐる回っている円柱の看板)を平面の表現として、ここまでクールにデザインしてしまうとは。あと「BARBER SAKOTAとALWAYTH」が「×」や「&」ではなく、「と」になっているのがめちゃくちゃ効いている。ささやかなパンチ力と愛、さすがです。
カルチャー・食担当。トレードマークは、ボリューミーなパーマ(入稿・校了時、1.5倍増)。一年中ほぼシャツ、冬だけニットもあり。年始に琺瑯鍋とフライパンを新調したので、きちんと自炊ができるようになりたい。
Movie&Photos:Mitsuo Kijima
Stylist:RUI