ラグジュアリーメゾンが提案するダウンジャケットは、もはや単なる防寒着ではない。最上級の素材、卓越したクラフツマンシップ、そして独創的なデザインが融合し、冬の装いに新たな価値をもたらしている。機能性を犠牲にすることなく、エレガンスを追求する姿勢こそ一流の証。ここでは12の傑作を紹介する。
HERMÈS|Blouson BC FIT DEF
ガーネット色のカシミアクロス・テクニックを贅沢に使用した一着。撥水性を備えながら100%カシミアという稀有な素材が、メゾンの技術力の高さを物語っている。機能と上質さを見事に両立させた革新性に加え、職人の手仕事と最新技術の融合が、新たなラグジュアリーの形を提示している。
前身頃から袖、背中にかけて走る2色のトップステッチは、さりげなくスポーティなムードを演出。襟と裾のリブ仕立ても含め、すべてのディテールに意味があるのがエルメスらしさだろう。グルナカラーと呼ばれる深みのある色合いは、黒やネイビーに飽きた大人にこそ手に取ってほしい逸品だ。
Moncler + Jil Sander|RHAMNOSE
ファッション界の注目を集めるモンクレール + ジル サンダーのコラボレーション。その中でも際立つ存在感を放つのが、取り外し可能なダウンライナーを備えた「RHAMNOSE」と名付けられた3wayジャケットだ。ウォッシュド加工を施したダブルウール素材のコートは、ジル サンダーらしいミニマルな美学を体現している。
ジル サンダーが探求する「自然と人間の関係」というテーマが、モンクレールの山の思想と見事に融合。光沢のあるニッケルロゴがアクセントとなり、ルーズフィットのシルエットは現代的な余裕を感じさせてくれる。両ブランドの長所が一着に凝縮された、まさにコラボの醍醐味を味わえる傑作だ。
JIL SANDER+|WATER REPELLENT DOWN JACKET
メインラインとは異なる「都会から抜け出した暮らし」をコンセプトに掲げるJIL SANDER+は、山や田園といった自然との調和を追求する。環境に配慮した撥水性のあるリサイクルポリエステルを使用し、サステナブルな視点も忘れない。フロントの露出した2wayメタルジッパーがデザインのフックとなっている。
左下に配された「+」のエンボス加工レザーラベルが、このラインの特別感を静かに主張。パンパンに膨らまないリラックスフィットは、都市生活でもストレスフリーに着こなせるはず。サイドの隠しジッパーポケットなど、実用的なディテールも充実しており、アウトドアとアーバンの境界線を軽やかに超えていく。
DIOR|“Dior Oblique” Dawn Overshirt
メゾンのシグネチャーである「ディオール オブリーク」モチーフを、ブラックの同系色でさりげなく表現。1969年にマルク・ボアンが生み出した伝統的なパターンを、キム・ジョーンズが現代的に再解釈したデザイン。コットン混ジャカードの上品な質感と、グースダウン90%の贅沢な中綿が共存する。
“CD”スナップや“DIOR”ラバーパッチなど、ブランドのアイコンを随所に散りばめながらも過剰にならないバランス感覚が秀逸だ。軽量ダウンを使用したオーバーシャツという位置づけで、ジャケットの上からも羽織れる汎用性も魅力。総柄でありながら黒ベースに落とし込んだセンスが、大人のためのロゴプレイを可能に。
PRADA|Medium-weight corduroy down jacket
コーデュロイという意外性のある素材選びで差別化を図るプラダ。光沢ナイロンが主流のダウン市場で、温もりある素材を選んだ点に独自の美学が宿る。グースダウンの暖かさはそのままに、柔らかな質感がカジュアルな表情を生み、エナメルメタルのトライアングルロゴが胸元で控えめに光り、ブランドの存在感を静かに示す。
ファスナーで袖を外せばダウンベストに変わる2way仕様は、実用性とデザイン性を追求する姿勢そのもの。アメカジや古着とのミックスにも対応できる懐の深さがある。オーバーサイズフィットと収納式フードも含め、現代的な機能美を体現した一着。季節の変わり目にも活躍し、長く頼れるピースといえそうだ。
SAINT LAURENT|DOWN PUFFER JACKET IN WATER-REPELLENT CANVAS
ミニマルなデザインの中に漂う、サンローランならではの気品。撥水キャンバス素材のマットな質感と、深みのあるカーキ色が織りなすコントラストは、一見シンプルなダウンジャケットに陰影と奥行きを与えている。短丈のバランスが生むシャープな佇まいが着る人の輪郭を静かに際立たせ、高揚感をもたらしてくれるはずだ。
スタンドカラーやスナップボタン、リブニットの袖口といったベーシックな構成だからこそ、その美意識がより強く映える。フロントのウェルトポケットを含む控えめなディテールがマットな質感と呼応し、上品さの中にわずかなロックの気配を宿している。サンローランの"魔法"をさりげなくまとう、頼もしき一着となるだろう。
BALENCIAGA|3B Sports Icon Ski Puffer
2023年に発表されたブランド初のスキーウェアコレクションから、厚手の中綿仕様のテクニカルピースが到着。防風性と撥水性を備えた軽量マットナイロンを使用し、ゲレンデでもストリートでもシームレスに活躍する万能な一着だ。さらに、ハイスタンドカラーとダブルジッパーにより防寒性も万全。
胸元の3B sports iconは控えめながら、リフレクト素材で光を受けた時に存在感を主張する。スキーパス用隠しポケットや裾のドローストリングなど、スノースポーツ仕様も完備。クリエイティブディレクターのデムナが追求する「技術と美学の融合」を体感できる、バレンシアガのデザイン言語を失わないバランス感覚に脱帽だ。
LOEWE|PADDED OVERSHIRT
ブランドロゴを模したL字型のキルティングパターンが、さりげなく洗練された個性を主張。軽量テクニカルシェルに施された独創的なデザインは、ロエベらしい遊び心と技巧を同時に感じさせる仕上がりだ。コーデュロイ調のエンボス加工を施したスエードカラーとの異素材ミックスも絶妙で、全体に奥行きを与えている。
クラフツマンシップへのこだわりが随所に光り、内側のアナグラムレザーパッチポケットなど見えない部分にも贅沢を忍ばせる姿勢が好ましい。レギュラーフィットで着回しやすく、スプリットサイドのスナップボタンも実用性を高める要素として機能する。動きやすさとスタイルを両立させ、スタイリングの幅を広げてくれる一着。
Bottega Veneta|Tech Cotton Puffer Jacket
マットなテクニカルコットンに、ツヤ感のあるレザーパーツをドッキングした存在感ある一着。軽量ながら密度のある生地が生む上質な佇まいに、ブランド特有のモダンな造形美が重なる。左胸の大きなポケットが印象を形作り、両肘に配されたイントレチャートパッチが隠れたこだわりとして機能している。
フードの下に潜む雪山モチーフの特別なラベルは、脱いだ時のサプライズとして機能。ウエスト内側のドローコードで調整可能なフィット感、袖口のリブ仕様、裾のドローコードなど、防寒性を高める工夫が満載だ。取り外し可能なスナップ式フードでスタンドカラーにも変身でき、多面的な表情を楽しめるマスターピース。
MARNI|PADDED JACKET
メンズファッションの基調色であるブルーとブラックを巧みに融合し、前後で切り替えた配色が一着の中に奥行きを生む。リップストップナイロン特有の光沢とシャリ感に、軽さと強度、さらに撥水・防風性が備わることで、モダンな表情と実用性が共存している。アウトドアから街中まで対応できる懐の深さも魅力だろう。
ダックダウン90%を封入した確かな保温性に加え、背面下部には控えめなMARNIロゴ刺繍が施され、特別感を高めている。取り外し可能なフード、止水ジップ仕様のウェルトポケット、裾のドローストリングといった細部も抜かりない。機能美とデザイン性が共鳴する、遊び心あふれる大人のダウンジャケットだ。
MM6 Maison Margiela|Multi-wear padded jacket
「拡大と縮小」という相反するアクションを造形的に落とし込んだ一着。バックパネルの追加によってシルエットが拡張し、前後の表情が大きく変化する構造だ。ジップで取り外し可能なスリーブを備え、天候や気分に応じた柔軟な着こなしを実現。量感を巧みに操るアプローチが、日常のスタイルに新たな視点を与えてくれる。
立体的なジレとしても機能するマルチウェイ仕様は、毎日のコーディネートに変化をもたらし、ファッションの新しい楽しみ方を提示する。メゾンのシンボルとして静かに存在感を放つのは、背面に走る1本の白いステッチだ。エムエム6らしい実験的精神と実用性が響き合う、他にはない仕上がりだ。
BURBERRY|Reversible Check Snowdon Puffer Jacket
シグネチャーのサンドカラーチェックとブラック、両面を楽しめるリバーシブル仕様。控えめな光沢のマットナイロンに、ブランドらしい端正なステッチワークが映え、羽織るだけで英国的な品格が漂う。たっぷりと封入されたグースダウンとフェザーの中綿が、冷え込む季節でも安心感のある暖かさを提供してくれる。
ブラックの面には「馬上の騎士」デザインも施され、ブランドのヘリテージを現代的に解釈。パッカブルフードは変わりやすい天候への備えとして実用的だ。日常使いのブラック面と、冬のモノトーンスタイルを華やかに変えるチェック面。一着で二度おいしいという言葉がぴったりな、コストパフォーマンスにも優れた選択肢といえる。
エルメスジャポン TEL:03-3569-3300
クリスチャン ディオール TEL:0120-02-1947
サンローラン クライアントサービス TEL:0120-95-2746
ジルサンダージャパン TEL:0120-998-519
バーバリー・ジャパン TEL:0066-33-812819
バレンシアガ クライアントサービス TEL:0120-992-136
プラダ クライアントサービス TEL:0120-45-1913
ボッテガ・ヴェネタ ジャパン TEL:0120-60-1966
マルジェラ ジャパン クライアントサービス TEL:0120-934-779
マルニ ジャパン クライアントサービス TEL:0120-374-708
モンクレール ジャパン TEL:0120-938-795
ロエベ ジャパン クライアントサービス TEL:03-6215-6116
Photo: Yoshio Kato
Stylist: Takumi Urisaka
Text: Yuji Kuramochi
Composition: Ai Hogami