2018.04.25

【教えて! 東京スニーカー氏 #18】ニューバランスは、やっぱりグレーなのでしょうか?

エディター・小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月いち連載【教えて! 東京スニーカー氏】。第18回はニューバランスのカラーについて。

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990番台では12代目にあたる「M990v4」はニューバランスの中でもいちばん好きな厚さ、軽さ、履き心地かも。白とグレーの中間色が絶妙。¥29,000/ニューバランス(ニューバランス ジャパンお客様相談室)



最近、またニューバランスが気分で、ワードローブから引っ張り出して履いているのですが、そのほぼ全部がグレーであることに気づきました。僕は基本的にスニーカーも服も色は地味派ですが、それでも各ブランドの特徴に準ずる派。自分の好きなスタイルに靴を合わせるより、履きたいスニーカーのベーシックカラーを優先し、それに合う着こなしを考えるタイプ。自分色に染めずに相手の個性を尊重すると書けば聞こえがいいでしょうか。だから何でもかんでも白や黒を選ぶことは控えています。ということでグレーばかりが揃ってしまったというわけです。



ニューバランスのグレーの歴史は1980年に発売された「620」からといわれています。陸上競技のトラックで速く走るためのランニングシューズの開発に勤しんでいた各メーカーは、オリンピックなどの大会で自分たちの靴が目立つことを何よりも重要視していました。だから’70年代は、赤や青や緑や黄色といった、まるで信号みたいなカラーばかりだったのです。ご多分に漏れず、ニューバランスも「320」という全米中で絶賛された’76年のランニングシューズは、鮮やかなブルーが定番でした。



しかし’80年代に入ると、ランニングブームの裾野が広がり、街をジョギングする市民ランナーに向けたシューズが増えました。より多くのパイ(着用者)を獲得したいメーカーは目立つことよりも、都会の街に調和するランニングシューズの必要性を感じ、’80年代からはカラーリングが控えめの傾向になりました。

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「M998」の発売はもう25年前。グレーでは気づかなかったのですが、白にすると当時のデザインの特徴が浮き彫りに。¥24,000/ニューバランス(ニューバランス ジャパンお客様相談室)



足の健康を第一に考えた矯正靴メーカーとしての出自をもつニューバランスが、より多くの市民ランナーの足のことを考えたかどうかは知りませんが、’82年に初代「990」、’ 85年に「1300」と現在に続く象徴的なモデルが次々とグレーで発売されます。山道や悪路、つまりオフロード向けに開発された500番台はネイビーなど汚れが目立たないカラーが中心でしたが。日本はアメカジというフィルターを通してニューバランスの「1300」が話題になり、ファッションのアイコンとなりました。ナイキやアディダスとはまた違った都会的で洗練された高級シューズのイメージが、このグレーにはあったのです。



他のブランドでは見かける定番のはずの白が、ニューバランスには多くありません。そのブランドの個性に準ずると前置きしておきながら、「990v4」の白に近いフェードグレーを見て、そのミニマムなルックスにひと目惚れしました。これだけ多くの切り替えやミッドソールにボリュームを与えながら、白一色にまとめるとそれぞれのバランスのよさというか、機能ありきの美しさが際立ちます。それ以来、この複雑な様相を隠さない、白いニューバランスに興味が沸々と。



「998」も同様の意味で注目のカラーです。バレンシアガのTriple Sに端を発したダッドシューズが何かと話題の今、このブランドがダッドか否かは議論の対象になりますが、僕の答えはNO。だって、ちっとも野暮ったく見えないですから。ダッドの定義については今勉強中ですので、その話はまた別の機会に書きたいと思います。

小澤匡行プロフィール画像
小澤匡行
「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。スニーカー好きが高じて『東京スニーカー史』(立東舎)を上梓。靴のサイズは28.5㎝。

ニューバランス ジャパンお客様相談室 TEL: 0120-85-099

Illustration:Yoshifumi Takeda
Photos:Yuichi Sugita
Text:Masayuki Ozawa
(2018年6月号掲載)

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