サイドの切り替え部分にシュラウドを搭載。レーザーカットの通気孔とリフレクティブ(再帰反射)なパーツがどこか韓国らしい近未来的なアクセント。フォトンダストとダークスモークグレーの配色は、伝統を受け継ぎながらも過去にとらわれないソウルの人気エリア、聖水洞の建築に使用されている工業用材料をイメージしたもの。/私物
エア マックス95はなぜ売れる?
ここで何度か書いてきたとは思いますが、3月26日は「エア マックス」の誕生日。2010年代に入ってから、毎年のようにさまざまな体験型イベントが開催され、その年の目玉となる新しいエア マックスを盛り上げてきました。今年も新作が控える中、ひと足先にエア マックス 95のOG(オリジナル)カラー、そうイエローグラデが復刻され、話題を呼んでいます。2月には熱狂的なファンに向けた公式アプリSNKRS内のLIVEイベントに出演し、あらためて若い世代にこのシューズの魅力を伝える機会をいただきました。MCを務めたモデルのSAKURAさんがあまりに明るく、お話し上手だったゆえに、僕との掛け合いがシュールだったと方々から感想が届きましたがなんとか無事!?に終了。そして自分がOG世代代表である扱いを受け、時の流れの早さを感じました。
このイエローグラデの前に発売されたのが4モデルからなる「City Pack Collection」。ソンス(韓国)、香港、ボルチモア(米)、パリの4都市をフィーチャーし、各地のものづくりや精神性を表現したものです。それぞれの街や文化の特徴をとらえたわかりやすいデザインでした。正直なところ初見は「売れるの?」と思いましたが、初回リリース分は即完売。僕のようなOG世代は、靴に新しいストーリーを詰め込みすぎるデザインを敬遠しがちですが、世間の反響の多さに驚きました。
エア マックス95は日本の複雑なトレンドや社会背景が組み合わさった稀有なブームだと思っていました。でも、今回の資料を読むと、日本でバズを起こしているときにソウルでは韓国製のサンプルを探し回っていたスニーカー好きがいたり、今回ラインナップされていませんが、リヴァプールでは当時の定価「110(ポンド)」がニックネームだったりしたとか。当時のランニングシューズにしては圧倒的に高値だったため、履いている人にリスペクトの意を込めた呼び名だったそう。情報が収集しやすくなった現代らしいエピソードを知れたことで、このシューズに対する自分の認知が少し偏っていたように思います。そして世界中のストーリーを、もっと知りたい欲が強まりました。これは今後の僕のライフワークになればいいなと思います。
エア マックス95は、NIKEを象徴するシューズながらスウッシュが添え物であることが斬新でした。それは人間の身体構造を表現するためのサイドの流線形の切り替えを生かしたかったから。おかげで素材や配色の自由度が高まり、いろいろなバリエーションが作れるようになった。ストーリーを表現しやすいデザインであるのも人気の理由です。
僕がSNKRS LIVEで着用したのは「ソンス」モデル。工業都市らしく、工事現場のカバーを連想させるテキスタイルがアッパーを覆っていて、それが意外と合わせやすかった。ヤクのニットパンツをかぶせるようにはいて、足元のボリュームを抑えてみると、青春のアイコンも随分大人っぽく見えてくるものです。
「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。近著に『1995年のエア マックス』(中央公論新書)。スニーカーサイズは28.5㎝。