季節やコーディネートを選ばず履ける汎用性抜群の黒スニーカーは、何足持っていても損はないアイテム。東京スニーカー氏ことエディターの小澤匡行さんが激推しする一足なら、周りと大きく差をつけられる。
01:Maison Margiela|“SPRINTERS”
飾っておきたくなるアートピースのようなスニーカー
「60年代のまだ未発達な、進化を遂げる前のランニングシューズやスパイクのデザインを取り入れた、メゾン マルジェラの新作スニーカーです。当時はアッパーにナイロン素材を使うのが主流だったはずですが、それをコットンドリルにしているのがファッショナブルだし、当時のものにもないようなレトロな雰囲気を醸し出してます。メゾンのヴィンテージのドレスを見ているような感覚です。
素材の使い方だけでなく、さらりとユーズド加工を施していてスエードがケバ立っていたり・・・細部を見ていると靴の形をした洋服のような感じがしてくるんです。僕はスニーカーを飾りたいとか見ていたいといった感情は普段持たないんですが、これはショーケースに入れておきたい。そう思えるようなアートピースだと思います。
今の靴だけど、そうは見えない。飾って様になりそうな靴という点からも、感覚的にスニーカーじゃないんですよね。スポーツシューズへのオマージュのようでいてモードになっている。かなりモダンに見えるのではないでしょうか」(小澤)
02:VEJA|PANENKA
革の質感も好印象なフットボールデザイン
「フランス発のサステナブルなスニーカーブランドとして日本に上陸して以来、ヴェジャは注目されてきました。いろいろといいところがあるものの、最近は環境的な側面が強くなって、以前よりファッションとの距離が離れてしまったような気がしていましたが、立て続けにヨーロッパに行ってヴェジャの魅力を再確認できました。そういえばヴェジャがいいなと思ったのも、6年前のパリでした。
今回ヴェジャのショップへ行ったらすごくにぎわっていて、街でも履いている人が以前にもまして増えています。とはいえ大衆化しているわけではなく、しゃれた若者たちも履いているんです。それで今回は、ヴィテージのフットボールシューズのデザインやストリートの流れを汲んだ新作の『パネンカ』をピックアップしてみました。
ヴェジャ史上もっともやわらかい革と謳っている、ウルグアイのO.T.(オーガニック・トレース)レザーをアッパーに使用しています。フットボールシューズってピカピカしている革が多いんですが、このヴェジャの革はマットな感じがして好きです。すごく落ち着いて見えるからユースな印象もなく、大人っぽく履けていいのではないでしょうか」(小澤)
03:MERRELL|SPEED ARC MATIS GORE-TEX
プロポーションのいいハイテクシューズ
「ゴープコアのジャングル モックもありながら、こういうフューチャリスティックなモデルも手がけるメレルは、本当に器用なブランドになっているなと思います。最新のスピード アーク マティス ゴアテックスには、メレルのハイテクシューズへの意欲が見えます。メレルといえば素材を組み合わせる複雑なレイヤーが特徴でしたが、これは完全に圧着で、見事なハイテクシューズになっています。
アッパーには少しミリタリーなムードがありつつ、アッパーからはみ出すソールユニットが現代的です。足入れしてみると、今までにない不思議なクッショニングを感じました。そして、とても軽い。テクノロジーを駆使しているようで、意外にシンプルにまとまっているのも好印象。
ソールの張り出し方を見ると、マーティン・ローズがデザインしたスニーカーを思い出しますが、このシューズは独特の形状のソールを使いながら、プロポーションがすごくいい。きれいに見える理由はそこだと思います。本格的なアウトドアのスペックではありますが、ファッションユースによさそうです。ハズしとかではなく、素直に合わせたいと思います」(小澤)
04:MIZUNO FOR MARGARET HOWELL|MIZUNO HIKING SANDALS
スニーカー色強めの2WAYで履けるサンダル
「マーガレット・ハウエルとミズノの定例コラボから、今年の春夏に出た新作スニーカーサンダルです。ミズノのインラインにあるウエーブエボークスイッチという、ウォーキングシューズから派生したサンダルをハウエル流にアレンジしています。インラインもとてもよくできているんですが、よりソリッドに洗練されたこちらのほうがUOMO向きかと思ってピックアップしました。
このコラボのベースになっているウエーブエボークスイッチを、ミズノではサンダルと言わず“二刀流シューズ”と謳っています。いわゆるスニーカーサンダルの中でもスニーカー色強めのモデルと、サンダル色強めのモデルがあると思いますが、このハウエルのハイキングサンダルはもちろん前者。
履いてみるとすごく歩きやすくて、甲がオープン仕様ということもあって夏のウォーキングにもよさそうです。踵のストラップを外してミュールにしたときも、シューレースでフィット感が調整できるからホールドされていて踵が浮かず快適です」(小澤)
05:SAS|MISSION 1 STABILITY
デイリーに履きたいアメリカ軍のトレーナー
「ミスタークリーンのクリ(栗原道彦)さんが、デッドストックや中古の米軍トレーニングシューズをたくさん買い付けたというのでお店で見せてもらい、マイサイズがあったので一足購入しました。アメリカ軍用に開発されたもので、これはSAS(サンアントニオシューメーカーズ)製。パタゴニア マーズやアークテリクス リーフなどもそうですが、スニーカーに限らずミリタリー用につくられたものにはどこかロマンがあって、UOMO読者にも好きな人が多いだろうと思い今回紹介します。
軍用トレーナーとしてはニューバランスの950が有名ですが、だいたいオールブラックでつくられています。このSASのシューズはミッション 1 スタビリティというモデル。2010年代からアメリカ軍に納入されているそうです。日本では無名のSASは、アメリカではMade in USAのシューズメーカーとしてコンフォートシューズに定評があるらしく、モノとしてもしっかりしています。
メッシュアッパーにサロモン風のTPU補強があしらわれ、厚めのソールはヴィブラム製で軽量です。軍モノってしっかり予算をかけて開発しているから、きちんとつくられているんですよね。ブラックにシルバーの配色も今っぽいし、以前から履いてみたいと思っていたのでナイスタイミングでした」(小澤)
06:PUMA|DEVIATE NITRO ELITE TRAIL HELIOT EMIL
モードなアプローチが光る気鋭のデザイナーコラボ
「コペンハーゲン発のモノクロームでソリッドな、それでいてスポーティなニュアンスも携えるモード系のブランド、エリオット・エミルとプーマとのコラボレーションです。ディヴィエイト ニトロ エリート トレイルというプーマのハイテクランニングシューズがベースになっていますが、アッパー全体をテキスタイルでカバーして、ブラックワントーンにしているので、ベースモデルがまったくわからなくなっています。
世代的に僕は、プーマと言えばフラットでローテクなバッシュのイメージが強く、ハイテクなランニングシューズはノーチェックで、今までプーマのランニングシューズを履いたことがありませんでした。でも今年は箱根駅伝でも25人の選手がプーマを履いていたそうで、僕が推している立教大学の選手もプーマを履いている人が多かった。最近はランニング市場でもリアルなアスリートに落ちてきている気がして、プーマ、頑張っているなと。
テクノロジーも備えたランニングシューズがこれだけファッション感度の高いものになっているということは、僕が出張スニーカーとして挙げる『走れて日常生活にもマッチする』という条件をクリアしています。プーマは90年代にいち早くジルサンダーとコラボするなど、先鋭的なアプローチに僕もずっと注目してきました。このエリオット・エミルとのコラボはデザインとしても面白いので、ぜひ履いてみたいと思っています」(小澤)
07:New Balance|NB minimus Trail
ニューバランスの復刻薄底モデルの新作
「2011年に登場した『ミニマス(MINIMUS)』というラインが、去年からひそかに(?)復活していて、コアなファンの間でちょっとした話題になっています。ミニマスはベアフットの理論を踏襲するミニマルなデザインをコンセプトにしたシリーズで、当時好きで履いていました。2012年からトレイル用のミニマス ML71が発売されて人気を博し、996や1300の配色を落とし込んだ限定モデルが出たことも覚えています。
このようにミニマスはロードとトレイル用の2タイプがありましたが、今回はトレランモデルが復刻されました。この3月に発売された新作は2000年代っぽいデザインの感覚があって、何よりもこのソールの薄さが今のトレンドにマッチします。
990シリーズを愛用している人にはモダンなニューバランスに見えると思います。昨年復刻されたモデルとアッパーの素材は同じですが、前回のブラックはネオンイエローとの配色でした。今回はブラック×グレーのモノトーン。ファッションとして合わせやすく、いつもの着こなしをフレッシュに見せてくれます」(小澤)

「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。近著に『1995年のエア マックス』(中央公論新書)。スニーカーサイズは28.5㎝。
マルジェラ ジャパン クライアントサービス TEL:0120-934-779
シードコーポレーション TEL:054-282-2112
丸紅コンシューマーブランズ TEL:03-6838-9677
マーガレット・ハウエル TEL:03-5785-6445
ミスタークリーン TEL:090-2206-1755
プーマ お客様サービス TEL:0120-125-150
ニューバランスジャパンお客様相談室 TEL:0120-85-7120