時計、クルマの次はアートだ
大國さん宅のコレクション

1978年生まれ。IT系企業に在籍。現代アート作家の作品などを多数所有。最近は器や壺など、陶芸を中心にコレクションを広げている。

大國さん宅のコレクションの一部。テーブル上にはカナリヤの剝製を無数のビーズで覆った、彫刻家・名和晃平の作品。右は傾けたキャンバスにインクを流しかけて描く、同作家の平面作品。ベルベットに革手袋が描かれた奥の絵画は、ロンドン拠点のミュージシャンでアーティストのイッシー・ウッド作。所有する中で最も高額だった。

Chim↑Pomによる大きな平面作品が目をひく。2014年にバングラデシュのアート・ビエンナーレで発表されたもので、自走式ロボットクリーナーを動かして描かせた作品。

左は脇山さとみの陶芸作品で、右2点は吉田直嗣作。「器や陶芸は手を出しやすいものも多く、おすすめです」。
小松さん宅のコレクション

1986年生まれ。三村小松法律事務所代表。弁護士としての専門分野はアートとファッション。写真、書、骨董などを系統立ててコレクション。

小松さん宅に飾られたコレクションの数々。森山大道を代表する「タイツ」シリーズは、小松さんの蒐集の軸を形成する重要な作品であり、世界に一枚限りのシルクスクリーン。「20代の頃に緊張しながらオークションで落札しました」。左は森山大道の師匠である細江英公の写真。手前の白い陶器は黒田泰蔵作。

右2点はアメリカの写真家ロバート・フランク。全日本プロレスのポスターを撮影した上の写真は、作家本人からプロレス好きの小松さんに贈られた。隣は操上和美がロバート・フランクを撮った作品。左は今坂庸二朗の写真。

小松さんの地元、長野県山形村から出土した縄文土器。骨董品も多数蒐集する。
アートを愛しすぎる男たちの蒐集談

アート作品は、自らの聖域を彩るのにとてもいい。しかし、ギャラリーの扉をくぐるところからすでにハードルが高い印象も。ともに100点以上を所有するコレクターであり、プロレス好きとしても親交を深める二人は、どのようにして沼にハマったのだろうか。
小松 僕はファッション雑誌から写真に興味をもって、森山大道や細江英公、トーマス・ルフなどの作品を買うようになりました。大國さんは?
大國 ファッションがきっかけなのは僕も同じで、Tシャツのグラフィックからグラフィティに興味をもちました。当時はバンクシーが欲しくて、でも高くて買えなくて…代わりにノルウェーのドルクの作品をオンラインで買ったのが最初。それからギャラリーに行くまでに、5〜6年はかかったかな。
小松 僕も初期の頃はネット通販をよく利用していました。入り口としては気軽でいいですよね。きちんとギャラリー経由で買ったのは、森山さんの作品から。初めて買うなら、初心者もウェルカムなアートフェアに行くのもいいですね。たくさんの出展ギャラリーの作品を一度に見られて、購入しやすい。
大國 フェアで見て帰ってアーティストのことをじっくり調べてから、ギャラリーで買う流れもオススメ。ギャラリーの利点は、作家と会って作品について直接話す機会をもてること。
小松 同時代の作家に会えるのが現代美術最大のメリットですよね。アートってプロレスと同じように、師弟関係などの文脈や、作品のコンセプトを知ることでより面白くなる。そもそも高そうとか、管理が大変で無理だと考えている人も多いと思うけど、最近は作品を買う人も増えて、昔よりはカジュアルで身近なものになってきている。
大國 若手作家の作品や陶芸など、手を伸ばしやすいものもあるし、金額的には時計やクルマと比べたら、手頃なものも多い。管理もそこまでナーバスになる必要はないですよね。美術系の倉庫は月に数千円程度で借りられるし、僕はウォークインクロゼットにも気にせずそのまま突っ込んでる。
小松 うちも同じ(笑)。アートを買い始めて15年は経つけど、いまだに失敗もあって、衝動的に買ったもののデカすぎて家に入らないことや、飾る場所がないとかありますけどね(笑)。
大國 この間も2メートルくらいのサイズの巨大なしめ縄を買ってたね。
小松 部屋のインテリアには合わないけど好きだから買っておいて、どうしようかな、って作品もありますし…。
大國 あるある(笑)。最近は国内でも海外でも、アートを旅の目的にすることが楽しくて。それまで海外ってほぼ興味なかったんだけど、アートフェアのためにジャカルタまで行くとか。
小松 楽しいですよね。僕もアートフェアがなかったら一生日本から出ないと思う。アートを買うようになって友達が増えたのも大きいな。大國さんみたいなプロレス好きにも出会えて。
大國 本当に。コレクターでなかったらこんなにカツカツの生活になってなくて、ある意味幸せだったってパターンもあるのかもしれないけど(笑)。
はじめの一作目に出逢える場所
LURF GALLERY


コーヒーを飲みながら、お気に入りを探す
平面作品を主に扱う、代官山の「ルーフギャラリー」。1階のカフェでは食事とともに気軽に鑑賞を楽しみ、2階のギャラリーではじっくり作品と向き合うことができる。「飾る場所を思い浮かべながら、好きと思える作品を選んでみてください」とスタッフの滝澤さん。天井が高く広々とした空間のため、2mを優に超える迫力のある絵画も扱っている。一人暮らしでも取り入れやすい小さな作品などは、20万円ほどから購入できるものも。
LURF GALLERY
東京都渋谷区猿楽町28-13 Roob1 1・2階
TEL:なし(Instagram:@lurfgallery)
営業時間:11時〜19時 不定休
水犀


服を選ぶように、陶磁器を選んでみる
陶磁器を軸に、アートと工芸の間に存在するような作品を多く扱っている「水犀」。オーナーの光本さん曰く「韓国の陶芸家、李秀鍾さんの壺は300万円。でも小さなオブジェなら2万5000円から購入できます。服を一着買うような感覚でまずは一つ手に入れてみると、アートがより身近な存在になって、次を見つけるのもきっと楽しくなりますよ」。
水犀
東京都台東区三筋1-6-2 小林ビル3階
TEL:なし(Instagram:@mizusai_)
営業時間:12時〜19時 不定休
PARCEL


新しい才能に、いち早く出会える
かつて立体駐車場だった名残で、半地下の空間を有する「パーセル」。巨大な作品であっても上下から眺めて楽しめる。平面から彫刻、映像まで幅広く扱い、作品によっては数万円で購入可能。2025年1月12日まで開催のグループ展「Competitive Meditation」など、近年は中国や韓国といったアジアで活躍するアーティストの発信の場にもなっている。
PARCEL
東京都中央区日本橋馬喰町2-2-1 DDD HOTEL1階
TEL:なし(Instagram:@parceltokyo)
営業時間:11時〜19時
定休日:月・火曜、祝日