愛犬と暮らす人物に焦点を当てる連載。UOMO世代のみならず、世間の憧れを集める男の日々の創作や生活に寄り添う、小さな家族との時間を語ってもらう。
第二回|七尾旅人と妹犬&子犬

犬の曲を書くときだけは
自分の心は少年に返ってる
七尾旅人さんのSNSは、妹犬(左・14歳)と子犬(右・4歳)との幸せな時間であふれている。実際、個性的な2匹に魅了されっぱなしだと笑う。
「犬は、人間社会と自然界の仲介者。10年前、まず妹犬から教わったのは、やすやすと懐かないよっていう厳しさ(笑)。3年目で初めてお手してくれたときには男泣きしました。こいつら普段あまり言うことをきかないのに、ギャランティが出るときだけ従順になる。僕がおやつを握りしめながら、『Rollin’ Rollin’』を歌うと、くるくる回ってくれるんです。すごくないですか? リリックの内容をちゃんと把握したうえで、ギャラが確保できるまで反抗してるんですよ? これって一種の労働運動ですよね。一方で子犬のほうは、こだわりも強くて。散歩中、さっさとトイレしてくれたら帰れるのに、山を越え森に分け入って、誰も足を踏み入れない静謐な泉のほとりまで来て、ようやく脱糞。おまえは『ロード・オブ・ザ・リング』かよって(笑)。でも、この子たちのおかげでたくさんの景色に出会えました」
そんな犬への愛が、20年続く音楽活動にも大きな影響を与えている。
「もしかすると犬のために作った歌がいちばん純粋かもね。『迷子犬を探して』や『Dogs & Bread』とか。犬の曲を書くときだけは、中年男であることを忘れて、少年に返ってますよ」
シンガーソングライター。高知県生まれ。1998年のデビュー以来、『911fantasia』『リトルメロディ』『兵士A』『Long Voyage』などの作品をリリース。創作活動を通して社会的事象と向き合い続けている。