2024.05.13

幡ヶ谷・喫茶 壁と卵のポークビンダルー。【「あの人」の定番メシを訪ねる。行きつけで、いつもの。|第27回 】

写真家・平野太呂が、気になる人の行きつけにお邪魔。決まって頼むというメニューを食べて、本音をつづる。今回は麻生要一郎さんが「カレーならここ」と決めているお店。

第27回 幡ヶ谷|喫茶 壁と卵のポークビンダルー。

壁と卵のポークビンダルー。
程よく酸味がきいたポークビンダルーは澄んだ味で、あとを引くうまさなんです
今月のあの人|料理家
麻生要一郎さん

優しい味を詰め込んだお弁当ケータリングが人気の料理家。その傍ら文筆家として、料理エッセイも執筆。「僕はカレーが食べたくなると、この店に出かけていきます」。

時間の流れを変える店

 この連載、取材NGのお店にあたることも多く、いつも推薦者の皆さんには何軒かお気に入りの食事処を提案してもらっている。今回は麻生要一郎さんから4軒ほどご提案いただき、あとは僕の直感で、ということであった。コンクリート打ちっぱなしの四角い建物に取り付けられた古い木枠のドアを開けると、僕の直感は正しかった! うれしい気持ちになった(もちろんほかのお店も素晴らしいのだろうが!)。分厚いテーブルと本、レコードと絵。目がキョロキョロして、カレーをいただく前から早くも満足感が湧いてくる。
 これまでにも幾多の飲食のお仕事をしてきた友部香代子さんは、シェフの雄基さんと3年前に「壁と卵」を始めた。もともとカレー好きだった雄基さんと、香代子さんが担当するお菓子の二本柱だ。村上春樹が好きなら店名を聞いてピンとくるのではないだろうか。そう、エルサレム賞を受賞した折にイスラエルで行ったスピーチからつけた店名である。なるほど、あちこちに安西水丸さんの絵が飾られているのもうなずける。
 肝心のカレーは本格的なスパイスカレーでありながら、爽やかな酸味とともに、インド米に少しだけ日本米がブレンドされていて、とても食べやすい。次は好きな本を片手にのんびり来たい店である。

喫茶 壁と卵

住宅街の中にひっそりと佇むお店。今回紹介した「ポークビンダルー」¥1,300以外にも、数種類のカレーや、お菓子が楽しめる。
東京都渋谷区幡ヶ谷2-11-7
プエブロM 1階
営業時間はInstagramで確認
@kabetotamago

撮影・文・食
平野太呂

カルチャー誌やファッション誌などで活躍。主な著書に『POOL』(リトルモア)、『ボクと先輩』(晶文社)など。

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