NEATデザイナー西野さん、スタイリスト西又さん。同世代の二人がガチで気になったアイテムを手にしつつ、長考してはしゃべり倒す。事前情報なし、ヤラセなし(笑)の濃密な試着トーク開幕。今記事では、縫製、パターン、デザインソースとプロならではの視点で細部にフォーカス。
01:NICENESS
1950〜’60年代のUSダック⽣地のような表情の生地に、先染めとシワ加工を施したのも特徴。
02:YOKE
高密度のコットンウェザークロスを使用した滑らかな生地と美しい仕立てによってクラシックな印象。
03:NEEDLES
柿渋染のコットンにシワ加工、アタリ加工、ダーティ加工を施したヴィンテージのような一着。
04:VEILANCE
メリノウールとナイロン繊維を使用。耐久性の高いニット。
05:CASHADA.
今季ローンチしたばかりのカシミヤ専門ブランド。ハイゲージでカシミヤを編み立てた優しいムードが魅力。
06:MEPHISTO
1965年にフランスで創業したメフィスト。型崩れしにくく丈夫なシボ革を使用。
ここがスゴい! ZOOM IN
編集 なんとなく雰囲気がいい、ではなくディテールにもクローズアップしたいです。繊細な視点で聞かせてください。
西又 「ナイスネス」のトラッカージャケット、素晴らしいです。昔から凝った作りのブランドで、派手にはせずディテールや素材でひねってくる。これもフロントのデザインはリーバイスの1stをソースにしながら、着物のような一直線の袖のパターン設計が斬新。ダーツの入れ方も秀逸で、平面で構成されているのに着ると丸みが出る。
西野 わかります。僕も「ナイスネス」のデザイナーさんは天才だと思っています。
西又 デザインソースの嗅覚がしゃれていますよね。生地は帆布を柔らかく織って先染めしているそうで、見たことのない仕上がりのグレンチェック風の柄。スゴいです。
編集 元ネタをそのまま引っ張ってくるのではなく、トラッカージャケットとして新しい逸品を生み出していますね。
西野 発想という点では「ヨーク」のジャケットにうなりました。オーセンティックで上質な仕立てなのに、ボタンを横並びに増やして二つ並べたデザイン。
編集 普通のジャケットはボタン位置の高さや留める数と、基本縦での変化でしたもんね。
西野 まさに。ボタンが横にいくんだ!?という驚きです。内側のボタンを留めると浴衣のように抜け感のある羽織に、外側のボタンで留めるとウエストが適度に絞られたジャケットにフォルムが微妙に変形する。これは意外性がありすぎました。
編集 「ニードルズ」のジャケットはどうですか?
西野 これも表地と裏地のギャップにうれしくなってしまった。インスピレーションは’50s以前の古いカバーオールに見えるし、ダーティ加工が施されているので、まるでヴィンテージ。その裏地がヴィヴィッドなパープルのキルティング、かつ化繊という点が刺さりました。ワークなのにどこかモダンという不思議なバランスが生まれ、その違和感が気に入った。
西又 逆に、プレーンな服にも驚きはありました。例えば「ヴェイランス」のニット。ただのシンプルなクルーネックニットのようで、肌への当たりを軽減したつなぎ合わせや立体的なパターン構造など、機能性の追求がデザインとしても匂ってくる。普通なのに新しい。これぞヴェイランス得意の手法だと思います。
西野 スポーツブランドのニットはスポーティかオーバーサイズかどちらかに振りがちな中、かなりシュッとして見えます。
編集 テックなパンツに合うのはもちろん、今日のお二人のようなデニムスタイルに合わせてもスタイリッシュですね。
西又 ニットでもう一枚。「カシャーダ.」の長めの袖リブや広めの襟リブの編み、これをカシミヤでやっているのが珍しい。ホームページによるとカシミヤ専業で5アイテムのみの展開。そしてカラバリ数が豊富。
西野 このブランド、めっちゃいい! 好きが高じた人がやってそうな気配がします。
編集 カラバリを見るとトーン違いで黄色が2色あったりと、選ぶ楽しみがある。知る人ぞ知るカシミヤブランドですね。
西野 われわれはニッチなブランドに惹かれがちですよね。新しい「カシャーダ.」に対して、僕は歴史あるニッチブランド「メフィスト」のトレッキングシューズを推したい。
編集 ドイツのビルケンシュトック、フランスのメフィスト、といわれますね。
西野 自分のお店で古着を仕入れたときには、すぐに売り切れました。トレッキングブーツでこの上品さは、なかなかない。平たいアッパーも、厚いゴムソールも、全部が好き。そして現行で買えるということをここにやって来て初めて知りました(笑)。