2019.11.24

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.61 オテル・リッツのバスローブ|2019年4月号掲載

雪景色は美しいが、雪の中を歩くのは苦手。そんな雪降るパリの街を、コートを着て歩いた。オテル・リッツを目指してズンズンと。今回パリで買ったのは、リッツのバスローブ、そしてハンロの海島綿のアンダーウェア。それからおばさんが一人で切り盛りしていた上品な洋裁店のワゴンに置かれたマフラー。自分への誕生祝いには、ライカSLを選んだ。

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1月のパリのメンズコレクションでは最終日のセリーヌのショーを見て、その3日後にメゾン マルジェラのオートクチュールを見た。間の2日は雪が降ったりやんだりだったので、ホテルに引きこもってパソコンとにらめっこ。YouTubeアワーとなった。



僕がYouTubeで見るのは、お笑いとマフィア映画、故人や引退した人の記録(その人を追ったテレビ番組や映画)。最初にチェックしたのは、12月にルミネthe よしもとで見たプラス・マイナスの漫才。その後、ナイツを一瞬見て、恒例の「やすきよ」へと切り替えた。



洗面所へ行って顔を洗ったり、風呂に入ったり、お茶を入れたりしながらも、BGMのように二人のトークを聞いていた。やすしのボケっぷりと強気の口調が大好きなのだ。今ならパワハラと訴えられそうな暴言や、放送できない内容の数々を、満場の客の前でまくし立てている。今から30年以上前の映像なのに笑ってしまう。



立て続けにやすきよ漫才を見た後は、映画『日本一の男の中の男』。見ている途中、画面横におすすめ動画として高倉健の『幸福の黄色いハンカチ』が出てきたのでそれをクリック。健さんが出所直後、町の食堂でコップに注がれたビールを飲む名シーンだ。今までも数十回見ているが、懲りずにガン見。やっぱり男には我慢が大切なんだと再確認した。



パソコンの横には、家から持ってきた『サカナとヤクザ』(鈴木智彦著)。次はそれを読み始める。YouTubeはそのままにしておいて、時折チラ見。すると『スクール・ウォーズ』や元ラグビー日本代表監督の故・平尾誠二のドキュメンタリー番組や映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』のワンシーンが流れていた。



第一章を読み終える頃には、映画『ブラック・レイン』を取り上げたテレビ番組で、マイケル・ダグラスやアンディ・ガルシアが故・松田優作について話していた。再び本を読む。第二章の途中で読み疲れてパソコンに目をやる。今度はある女優が松田優作について語っていた。「人は変化することが大切。それが成長することなんだ」。だよな〜、変化だ。と思い、引きこもり中止。とりあえずラウンジへ食事に行く。



かぼちゃのスープを食べながらインスタグラムをチェックしていると、友人のジュエリーデザイナーがオテル・リッツの写真を上げていた。即、「パリにいるの?」とLINEを送ると、リッツのラウンジフロアにある店でジュエリーを扱ってもらえるようになったとのこと。食事を終えると、僕は雪にも負けず、果敢にリッツへと歩みを進めた。



確かに友人のジュエリーはリッツの1階で売られていた。リッツのラウンジにあるガラスのショーケースに入ったそれは、ひときわキラキラと目立っていた。プチ感動。



その後は、リッツのオリジナル商品を売っている店へ。廊下から見えたネイビーのトランクに惹かれて入ったのだが、結局買ったのはココア色のバスローブ。胸に入ったリッツのロゴマークを見て、オテル・リッツはリッツ・カールトンとは別物だということに生まれて初めて気がついた。知らなかった。そんな間抜けな話を、店にいた日本人スタッフにしたら、彼は驚きつつも丁寧に説明してくれた。オテル・リッツは唯一無二、パリのヴァンドーム広場にしかない! そのことを今さらながら学んだ54歳一歩手前でありました。知らないことってまだまだたくさんあるのであります。



(左)オテル・リッツのスーベニアショップで買ったバスローブ。ほかに黒やブルーなどもあり。素材違いも2種類あり、もう一枚欲しかったが荷物が大きくなりすぎるので我慢。(中)銀座のライカショップで見て、以前から狙っていたSL。これにアダプタをつけ、ノクチルクスを合体させて撮りたいのであります。M6で撮影するよりも、絞り1でのピンぼけがかなり軽減されそう。(右)海島綿ははき心地よかです。この箱も好き。
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Text:Tomoki Sukezane
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa

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