2019.11.10

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.52 グッチ DIYのボウブラウスとアメ横|2018年7月号掲載

グッチ青山で、ボウブラウスをDIYした。一昨年にもミラノでボウブラウスをDIYした。今回は大胆にグッチ ティアンの柄を選んだ。前回のボウは細めのグログランだったが、今回はシャツと共生地の大ぶりのものである。すごい! 完成品を見て、僕は深く感動した。が、3カ月間、そいつはクロゼットで待機中。ん〜、一体どこでいつ着ればいいのやら。

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仕事で使うド派手なジャケットを探しにアメ横へ出かけた。一体どこで探せばいいのか途方に暮れ、ネットを見ていたところ、アメ横にはそういうものを扱っている店があるとわかった。最初は商品を送ってもらうつもりで電話。サイズのことなどを細かく確認していたのだが、「店に来てください」と強く言い切られた。まっとうな意見である。



オンラインで服を買うなんて、少し前まではあり得ないと思っていた。が、最近はサイズ違いや色違いを数点送らせて、買いたい物以外は返品するのが当たり前だと聞く。でもやっぱり自分の目で確かめて買うのがいちばんであることに変わりはないはずだ。



ということで、数年ぶりにアメ横へ。思えば20代の頃は頻繁にアメ横へ来ていた。雑誌のネタを探したり、掘り出し物を探したり…。ミリタリーアイテムやスニーカー、化粧品などを探して、朝から夕方までウロウロしていたものだ。



今回は、まず御徒町駅の改札を出てすぐ正面にあるミルクスタンドでフルーツ牛乳を飲んだ。あまりにも多くのミルクが用意されていて、牛乳好きとしては素通りできなかった。フルーツ牛乳は明治と雪印の2種類があり、お店の人に「どう違うの?」と聞くと、「明治はフルーツ多め、雪印はミルク多めです」とのことなので「明治!」にした。



別にフルーツがミルクより好きというわけではないが、せっかくフルーツ牛乳を頼むなら、フルーツ多めでしょう。「フルーツ牛乳」であって「牛乳フルーツ」じゃないしねえ。が、三口で飲める小サイズ。飲み終えて即「雪印もください」となった。最初はフルーツ多めで次がミルク多め。この順番は正解だった。



で、いざ、アメ横の雑踏へ。人々の活気が渋谷や青山、原宿、銀座、恵比寿、中目黒など、日頃うろついている場所とは全然違う。なんだろう。香港や台湾で感じる、ハングリーで危険な雰囲気と大らかで緩いムードが混在した感じ。



最近、40代後半にさしかかった友達が「フーテンの寅さん」にハマっているとLINEしてきた。僕は『男はつらいよ』全作品を収めたDVDボックスを持っている。友人はそんなこと知らないが、突然そういうLINEが来た。



僕は「宇野重吉と太地喜和子が出ている、『寅次郎夕焼け小焼け』が最高だよ」と返した。友人は「それそれ、あの寺尾聰さんのお父さんが出ているやつ。最初にそれを見ちゃって…今日で4本目」。友人はバーのオーナーだ。その後、彼の店で一緒に飲んでいたら「昔は正月になると、親父に寅さんの映画に連れて行かれるのが嫌だったのに、今は沁みるんだよねー」。



僕も確か10年前くらいから沁みてきた。全作持ってはいるが、2〜3本見ていないのがあるから見てみよう。40歳男子の一部には、寅さんは沁みる作品だ。おすすめします。アメ横のメイン通りで魚屋さんがダミ声をフルボリュームにして頑張っている姿を見たら、寅さんを思い出した。



結局、派手なジャケットを見に来たのは正解だった。サイズがなかったので取り寄せてもらうことになった。グッチで作ったボウブラウスとは真逆の空間・アメ横。でもこの空間に、グッチのボウブラウスは妙にマッチする気がしたんだな。まったく違和感ないと思う。



そんなことを思いながら、僕はまたミルクスタンドで明治の「おいしい牛乳」を飲んで電車に乗って帰った。次はボウブラウスで来ようと思いながら。



(左)グッチのボウブラウス。なんだか’70年代前半にタイムスリップしたみたいな服だ。さてこれを今風に着るにはどうすればいいのだろう?(中)モノグラムシューズ。ヒール部分がクッキーのごときツートーンになっているところもクレイジーで好き。(右)スイスが誇るハンロのパンツ。友人に「いいよ」と教えられて、パリのボンマルシェで購入。やわらかいフィット感が素晴らしい。タイトパンツとの相性もよし。
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Text:Tomoki Sukezane
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa

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